44-40.多勢に無勢
試合が始まった。概ね計画通りだ。たった一つを除いて。
「ちょっと! なんでわざわざ人数減らしてるのよ!」
「わらわも同化を試してみたくてな♪」
「ヒサメは私のよ! 返しなさい!!」
「ならば勝って奪い返してみせよ! わらわが勝てばこのまま頂いてしまうがなぁ!! ふぁっはっはっはっは!!」
「させるわけないでしょ!! ハルちゃん! イロハ! ツクヨミ! ナナミ! やってしまいなさい!!」
「「「「がってん!!」」」」
「待て待て! それはズルだろ!?」
「うるさい! 問答無用!!」
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「やってるねぇ~」
「私達の相手居なくなっちゃったわね」
「おチョウさんとカティ姉はこのまま私についてきて」
「ノアさんとヤチヨさんはいいの?」
「大丈夫。心配要らないよ」
「わかったわ」
『三人とも油断しないでね! 後はジャンヌとラーラだけとはいえ何を企んでいるかわからないわ!』
「うん。アイリスもサポートよろしく!」
『がってん♪』
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「やっぱり私の相手はノアだよね♪」
「ええ♪ 今回も負けませんよ♪」
「ふっふ~ん♪ それはどうかな♪」
「どうやら自信があるようですね」
「まあね♪」
「ふふ♪ 今回も楽しめそうです♪」
「そんな余裕は今のうちだけだよ♪」
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「なるほど。これがマグナの力ですか。本当に何でもありですね」
『よく今の跳弾避けられたわね』
「音は聞こえましたから」
『言うだけの事はあるようね。けど用心して。向こうにもシイナが付いているわ。次は音も消してくるかも』
「心配は要りません。私には当たりませんよ」
『そこは私がいるから大丈夫だって言ってほしかったわ』
「私達初対面ですよね?」
『私的にはそんな感じしないのよね。「ILis」が持つデータは私の記憶そのものだし』
「それは頼りになりそうですね」
『任せなさい♪ と言いたい所だけど、今回私要らないんじゃないかしら?』
「ええ。これでチェックです」
『残念。普通ならそうなのだけど』
「……ハズれた? いえ、今のは違いますね。なるほど。これがチートですか」
『ええ。弾が消滅したわ。当たる直前に。本人は気付いてすらいないわよ』
「これは銃口を押し当てて撃っても有効判定にならなそうですね」
『押し付けた時点で勝ちにしてあげるわ』
「ルールを書き換えるのですか?」
『書き足すのよ♪』
「いえ。やめておきましょう。他にも勝つ方法ならありますから」
『ふふ♪ お手並み拝見ね♪』
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「来たわね♪ パトラぁ♪」
うっわ。
「ちょっと。なによその顔は? 折角お膳立てしてあげたのに気に入らないってのかしら?」
「うん。ジャン姉にはがっかりだよ」
「がっかり? これが?」
「全部だよ。なにその格好。似合ってないよ」
「なんでよ。パトラの好きなメイド服じゃない」
「そんなのメイド服じゃないもん! 迷彩柄のメイド服なんて聞いたこと無いよ!?」
「それはパトラが知らなかっただけよ。普通にリストから見つけたやつだもの」
「うっそぉ!?」
「案外アルカの故郷では珍しくもないんじゃない?」
「そんな筈ないでしょ!? コスプレ用でしょ!?」
「まあどっちでもいいじゃない。それより私達も始めましょう。でないと皆の決着がついてしまうわ」
「勝てるつもりなの? 数も質もこっちが有利だよ?」
「わかっているでしょう? 私が無策で待ち構えていたわけじゃないって」
「強がってるだけでしょ? フロル姉の行動は想定外だったんだよね?」
「さてどうかしら?」
「いいよ。試してみよう」
「ふふ♪ そうね♪ それが手っ取り早いわよね♪」
構えた? この距離で?
「このまま始めるつもり? 隠れなくていいの? 少しくらいなら待っていてあげるよ?」
「お気遣いありがとう。けど油断しすぎよ」
「!?」
『『カティ! おチョウ! アウト!!』』
え!? なんで!?
『パトラ!』
アイリスの声に慌ててその場を離れると、先程まで私が立っていた場所を一発の弾丸が通り過ぎていった。
「まさかラーラ姉!? いったいどこから!?」
『違うわ! とにかく逃げなさい! 囲まれているわ!!』
囲まれてる!? 二人しかいない筈じゃ!?
『NPCよ! ジャンヌは自分のNPCを隠していたの!』
はぁ!? そんなのあり!?
『無しよ! 本来ならね! けどヒサメがフロルに同化したでしょ! あれで参加人数を調整していたのよ!! しかもアルカが人数増やしちゃったんだもの! 今囲っているのは六人のジャンヌとラーラ一人の計七人よ!』
ずっっっるっ!!!




