44-39.チーム分け
「まったく仕方がありませんね♪ 小春先輩は♪」
「おひさ~」
「は~い♪ 二人ともいらっしゃ~い♪」
「いつの間に呼び出したの? 私達外出てないわよ?」
「一時的に時間差を無くして連絡入れたの」
「そういう事も出来るのね。意外と融通が利くのね」
そこに疑問を抱くとは。相変わらずジャンヌの理解力は凄いわね。少し両極端過ぎる気もするけど。頭の硬さと柔らかさが同居しているのはどういう事なのだろう。感情的になると固定されるのかしら。だとすると明確な弱点よね。いずれ直してあげないと危険かも。本人はエデルガルト卿との直接対決も望んでいるみたいだし。
「さてこれでメンバーは揃ったわね」
ヤチヨにヒサメ、ノアちゃんとハルカ、カティとラーラ、フロルとおチョウさん、ジャンヌにパトラ、それからマグナと私。側近ズとシーちゃんとアイリス。
どうやってメンバー分けようかしら? 取り敢えず二つに分けてシーちゃんとアイリスにはそれぞれのサポーターを務めてもらう? 審判役はわざわざ用意しなくてもゲームシステムが担ってくれるものね。
「チーム分けを発表するわ」
もうこっちで決めちゃいましょう。異議がありそうなら変えてもいいし。
「Aチーム。ヤチヨ、ノアちゃん、カティ、フロル、マグナ、そして大将がパトラ。サポーターはアイリス」
少し過剰かな?
「Bチーム。ヒサメ、ハルカ、ラーラ、おチョウさん、私、そして大将がジャンヌ。サポーターはシーちゃん」
いや、ちょっと雑に選びすぎたかも。
「わらわはおチョウさんと代わろう。一応経験者だからな。ヤチヨとは分けた方がよかろう」
「ありがとう、フロル」
「皇帝陛下を顎で使うなんて恐れ多いわ」
「遠慮するでない♪ 存分に駒として使うがいい♪」
よしよし。これでバランス取れたかしら。
「ねえ、アルカ。もしかして私を勝たせようとしてる?」
「いえ、適当に選んだだけよ他意は無いわ」
「ヤチヨとマグ姉が一緒だと強すぎると思うんだけど」
それもそうね。まだバランス悪かったかしら。
「あら? パトラったら私に気を遣っているのかしら? 随分と余裕なのね♪」
「私だって経験者だもん。けど公平だから勝負に乗ったの。そこが崩れるならやる意味無いでしょ」
パトラはなんだかんだブレないわね。
「じゃあ私とマグナも交代ね」
バランス的にはそんなもんかしら? マグナはチートだけど経験は無いものね。プロとチーターどっちが強いのかは私的にも興味がある。実際この手の勝負ならかなり影響がある筈だ。
「残念ね。アルカを好きに出来るチャンスだったのに」
なんでフロルと扱いが違うのかな?
「ごほん。それじゃあチームに別れて作戦会議よ。試合開始は三十分後。それまでに準備を済ませて頂戴。解散!」
私はAチームだったわね。他のメンバーはヤチヨ、ノアちゃん、カティ、おチョウさん、パトラ、アイリスか。
「司令塔はパトラで良いのですか?」
「えっとね。私前で戦うよ。それで自分の手でジャン姉を打ち取りたいの。作戦も考えてみたんだ。協力してくれる?」
「もちろん構わないわ。皆もそれで良いわよね?」
「ええ。協力します」
「キャリーは任せてください。必ずターゲットの下へ送り届けて差し上げます」
「力になるわ! 当然じゃない! だって私はパトラのお姉ちゃんだもの!」
「勝負事ってんなら負けられないねぇ♪ その話聞かせてもらおうじゃないか♪」
「私も全力でサポートするわ! ここらでシイナと私どっちが上なのか白黒付けてやろうじゃない♪」
皆やる気満々だ。
「ありがとう、皆。作戦を説明するね」
パトラの立てた作戦は単純明快だった。これは何も無策というわけじゃない。ジャンヌの性格を知り尽くした上での作戦だ。やはりパトラも気付いていたらしい。ジャンヌの致命的とさえ言える弱点に。
「本当に上手くいくのですか?」
事情を知らないノアちゃんを筆頭に、皆は半信半疑で首を傾げている。
「大丈夫よ。ジャンヌは必ず乗ってくるわ」
「アルカもそう考えているのですね。なら心配は要らないでしょうか」
「むしろ問題はフロルがどう動くかよ。自分に課された役割はこなすでしょうけど、それ以外にも必ず何か仕掛けてくるわ」
あの完全無欠な皇帝陛下にも弱点はある。あの子はユーモアを忘れない。自信家で目立たがり屋でもある。意外と弱点多いわね。
「他は大丈夫でしょうか」
「そういう意味ではハルカも心配だけど、ノアちゃんが抑えてくれれば問題はないわ」
「お任せください。必ず討ち取ってみせます」
「深追いはダメよ。けどマークは外さないで。負けるのはもっとダメよ。どこか一箇所でも落ちれば一気に瓦解するわ」
「ふふ♪ 心配は要りません♪ ハルカは私に任せてください♪」
本当に大丈夫かしら? フラグじゃないわよね?
「ヤチヨも出来る限り早めにマグナを落としてね。難しいとは思うけどヤチヨだけが頼りよ」
「まさか私の腕をお疑いですか?」
「マグナのチートを甘く見ないで。あの子は『Ilis』内に限っては最強とも呼べる存在よ」
「それはアイリスやシイナよりも?」
「いいえ。流石にそこまでではないわ。二人はシステムの外側だもの。あくまでマグナの力はシステム内での話よ」
そのうち覆るかもだけど。少なくとも今の所は二人に遠く及ばない。けど弾道操作や理不尽な玉詰まりくらいは覚悟すべきだ。
「ならば問題はありません」
「信じるわ」
最凶には最強をぶつけましょう。
「ヒサメは私が。フロルはカティとおチョウさんの担当ね。パトラは真っ直ぐ突き進んで。きっとあなたの想像通りジャンヌはラーラだけを側に置いている筈よ」
「うん。仮に違ったとしても一人ずつ当てていけば同じ流れになると思うよ。ジャン姉は絶対私の考えを読んでくる。裏をかいてきたりはしない筈だから」
そうね。他の九十九戦もそうだったものね。ジャンヌの目的はパトラに真正面から見てもらう事だ。だから隠れてコソコソ動くなんて絶対にしない。自分の勝利を堂々と見せつけてくる筈だ。最強の駒に無双させて自分は奥でふんぞり返っているだけなんてあり得ない。パトラの読みは必ずあたるだろう。
「それでも相手は二人がかりだと思うけど勝てそう?」
ラーラだけは側に置くだろう。流石に一人でパトラに勝てると考える程甘いわけでもない。そして何より引き立て役も必要だ。パトラの気持ちを揺さぶるにはラーラが適任だ。そしてこれこそが勝利の鍵でもある筈だ。
「勝つ! 絶対!」
その意気よ♪ ファイト♪ パトラ♪




