44-38.理想の未来
「私皇帝陛下のファンになっちゃった」
「むっ。またジャン姉が浮気してる」
そういう話かしら?
「フロルさん良いわよね。かっこ良くて。綺麗で。可愛らしくもある。何よりあの賢さに痺れるわ」
「ガチなやつじゃん! 本気で惚れてるじゃん!」
本当にファンになっただけじゃない?
「おまけに度量まで広いなんて。本当に非の打ち所が無いわよね♪」
まあフロルは最強無敵の皇帝陛下だからね。なんのかんのと強烈な人生経験も積んでるし。私の家族の中でも大人側の人物ではある。しかもそれだけでなく、年相応の少女らしさも決して忘れはしないのだ。ふふ♪ そんな所もまた可愛いのよね♪
「あ~! アルカまでデレデレしてる~!!」
「私は良いでしょ。フロルは私の伴侶なんだもの」
「良くないの! 私の前でデレデレ禁止!」
「んな無茶な」
これでも一応パトラはすっかり改心したようだ。私の言葉じゃびくともしなかったのに。フロルが言い聞かせたら一発で納得してしまったらしい。むむ。なんだか面白くない。
「ジャンヌもフロルに失望されないよう手段は選んでね」
「私は何も言われてないわ」
おい。
「冗談よ。暫くは大人しくしているわ」
「暫くって何よ」
「フロルさんの信用を得ることが先決って話よ」
ダメだこの子。全然反省してない。
まあ、そんな子でも大人しくしていようと思う程度には抑えられているんだからやっぱりフロルは凄いんだけども。
「アルカ。ジャン姉が浮気しないようしっかり見張ってて」
「自分で頑張りなさい。フロルも言ってたでしょ。先ずはしっかりその身体を育てて魅力を磨かなきゃ」
「そっか。そういう意味でもあるんだね」
まあ、うん。たぶんそう。部分的にそう。
「今日はシミュレーションしてみようよ! 理想の大人になるにはどんな生活を送る必要があるのか調べてみたいな!」
「それは普通に面白そうね」
今更私には関係ないけど。でも折角だから私の色んな可能性とかも見てみたいかも。「Ilis」を使えばその手のシミュレーションもちょちょいのちょいだ。
「ふっふっふ! これも強ニューの一環だよね♪」
強くてニューゲーム? その割にはフロルにボロ負けしてたけど? 実力も頭脳も度量も何もかも。
「むぅ。アルカが何か酷い事考えてる顔してる」
私限定の観察眼に関してはフロルにも引けを取らないのかもしれない。好きこそものの上手なれってやつね♪
「今度は嬉しそう? へんなの」
ふふふ♪
三人でいつもの思考が実体化する真っ白空間に移動し、シミュレーションを開始した。設定をマニュアルからオートに変更して、条件毎の成長具合を観察していった。
「ふふ♪ パトラもこんな美人さんに成長するのね♪」
「ふっふ~ん♪」
「これは難しいんじゃないかしら? 相当頑張らないと実現しないみたいよ?」
「やるもん! 出来るもん! こうなるんだもん!」
「そう。頑張りなさい。応援しているわ」
「応援だけじゃなくて手伝うの! ジャン姉が理想の私を育てるの!」
「良いわね、それ」
真剣に考え込むジャンヌ。それから更に細かく設定をいじり始めた。
「集中しちゃってるみたい。こうなると長いんだよね、ジャン姉って」
パトラは私だけでなくジャンヌにも詳しいようだ。
「パトラはいいの? 理想のジャンヌを考えてみたら?」
「必要ないよ♪ ジャン姉は私の理想だもん♪ もちろんアルカもね♪」
「ふふ♪ ありがと♪」
抱きしめちゃろ♪
「あ、でもやっぱりお胸はもう少しほしいかも」
こらこら。
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「そろそろ戻りましょうか」
「え~!」
「まだ何かやりたい事があるの?」
「まだジャン姉にリベンジしてないもん」
リベンジ? ああ。あの伝説の九十九連敗か。
「そうね。どうせならもう一度負かしておいた方がキリも良いものね」
「負けないもん! 絶対勝つもん!」
流石に無謀だと思うけど。
「じゃあそれで最後ね。何で勝負する?」
「組手でいいわよ?」
「他のやるの!」
他のねぇ~。
「頭脳だとジャンヌが有利だし、かと言って身体を動かす競技ならまだまだパトラが上だし……」
ほんとよくジャンヌは勝てたものよね。マキナの入れ知恵があったからって。パトラが単純過ぎるのも問題よねぇ。
「チーム戦なんてどうかしら?」
「どんな?」
「内容は……そうねぇ。サバゲーなんてどう? ジャンヌは司令塔として、パトラはアタッカーとして活躍したら良いと思うの♪」
「面白そうね。私はそれで構わないわ」
「望む所だよ!」
よしよし♪ そうと決まったらヤチヨとヒサメも呼んであげましょう♪ 二人もきっと喜んでくれるわよね♪




