表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

140/1353

10-1.新天地

私達は未開拓地にやってきた。



当然周囲に人里などあるわけがない。

暫くは自然に囲まれた野宿生活だ。


幸い、魔法も道具も潤沢なので

生活に困る事はない。

いっそ家に寝に帰っても良いくらいだ。


私達ならこの魔物ひしめく未開拓地で二人とも寝ていても問題ない。

ノアちゃんは気配に敏感だし、

私も結界魔法は習得済みだ。


昔、一人旅に必要で私のイメージした魔法を生み出す能力で作ったものだ。


長らく原理はわかっていなかったが、

「力を視る」事で自覚して使いこなせる様になった。

セレネの結界も参考にして改良中だ。

この機会にいろいろ試してみよう。





ルネルから教わった「力を視る」事について、

良い加減名前をつける事にした。

ルネルは特に名称は無いと言っていた。

彼女にはこの感覚が当たり前すぎてそんな発想は無かったらしい。


私はこれを「覚視」と名付けた


「気が付かなかった事に気付く」の覚知と「視る」で「覚視」だ。



覚視は厳密には目で見ているわけではないのだけど、

一番視覚に感覚が近いので、視ると表現している。


覚視は、魔力や神力に限らず様々なものを知覚する事ができる。

集中すれば、相手がどこに意識を向けているのかまでわかる。

相手から線が伸びていくように感じるのだ。


他にもいろいろなものが視えるのだけど、

それにはこちらから視ようとしない限りは認識できない。

鍛錬を続ければもっと視えるものが増えるはずだ。


そもそもあれはルネルが私達の教育のために、

わざと認識しやすいようにしていたのもある。


逆にノアちゃんのように、

相手の覚視を阻害できる程に気配を断つ事も可能なようだ。

実はこれはどうやっているのか未だにわからない。

ノアちゃん本人もなんかやったら上手く出来たくらいにしか思っていない。


流石、覚視が使えるようになる前から

気配の隠し方でルネルすら驚かせただけはある。



ルネルもその方法は教えてくれなかった。


他の事なら大概の事は教えてくれるのに、

戦いに関する事を言葉にしたがらない。


これにはもしかしたらスパルタ以外の理由もあるのかもしれない。

何か矜持というか本人なりのルールがあるのでは無いだろうか。




ちなみにエルフが全員、覚視を使えるわけでは無いそうだ。

魔力だけを視ている者もいるし、

何も視えないのに感覚だけで魔法を使っている者もいるらしい。


というかルネル程に使いこなしている者は当然誰一人いないそうだ。

私とノアちゃんレベルですら現代には存在していないと言う。



なら、いくらルネルのスパルタ教育とはいえ、

たった一年でどうして私達が使える様になったのか不思議だ。


ルネルにそう聞いたらコツがあると誤魔化されてしまった。

これくらいならいけるかなって思ったけど、

やっぱり言葉にはしてくれないのだろうか。


それともルネルは無闇に力を広める事を好まないので、

私達が誰かに教えるのを嫌がったのだろうか。


まあ、知った所で上手くいくとも思えないのだけど。




覚視は視力と違い、

使う事を意識していないと完全にOFFになってしまう。


今後は目で見るのと同じくらい、

常時使っているのが当たり前にしたいところだ。




まあ、ともかく新生活のスタートだ。

ドラゴンの卵が孵って最低限の躾をするまでの期限付きだけど、

これはこれで少しだけ楽しみだ。


ノルマも人付き合いも無い

ある意味引き籠もりみたいなものだもの。


ドワーフの遺産を引き継いだ組織の暗躍も気になるが、

また少しだけ放置せざるを得ない。


今度は忘れずに定期的な連絡をとって、

すぐに動けるようにしておこう。




ノアちゃんとセレネにパスが繋がった影響で、

セレネに何かあればすぐに察知できる様になったのは

嬉しい誤算かもしれない。


今回の逃避行の原因となった、

このパス問題はどうしよう。


やっぱり未開拓地まで来てみても

二人は繋がったままのようだ。


当の本人達は問題無いと言っているが、

ルネルがいろいろ怖い予測を立てていたので、

私も気が気ではない。

杞憂に終わると良いのだけど。



私が思い悩んでいると、

ノアちゃんが突然ピンポイントな事を言いだした。



「セレネが話したいようですよ」


既にそんな事までわかるの!?


驚きつつ、顔に出さないようにして了解し、

セレネに転移門を繋ぐ。


どうやらノアちゃんを介して伝えられるかどうか試してみたようだ。

これで、今後は私からだけでなく、

セレネからも連絡を取れるようになった。


セレネは聖女として、

教会のトップとして忙しい日々を送っている。


空いた時間に向こうから連絡を取れるのは確かに便利だ。

これで毎日少しは話す時間が取れる事だろう。


なにせこっちは悠々自適な森暮らしだ。


私達にゃ会社も仕事もなんにもない。

おばけじゃないやい!


これ今の子に通じるの?



冗談はともかく、

せっかくなら良いことに目を向けていこう。

離れ離れなセレネが身近になったのだと喜ぼう。


暫くここで生活していれば

いろいろと気付く事もあるかもしれない。


なにせ考える時間はいっぱいあるのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ