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43-41.次から次へと

『侵入者です!!』


 お祭り二日目の朝はシーちゃんのそんな大声で叩き起こされた。朝と言っても既にセレネは出勤してるみたいだけど。昨晩一緒のベットに入ったのに今寝ているのは私だけだ。


『セレネだけずるいわ。私とは用事が済んだらさっさと帰っちゃうんだもの』


 よく言うよ。アイリスだって散々引き止めてきたじゃん。それにだってちゃんと付き合ったじゃん。セレネに内緒で深層に潜ってあげたんだからもっと感謝してほしいくらいだ。


『セレネと私どっちが良かった?』


 セレネ。


『もう。イケズね。即答する事ないじゃない』


 生後間もないくせに何を色ボケてるんだか。



『アルカ。そんな事より』


 そうだった。今はアイリスよりシーちゃんね。


『悲しいわ』


『あなたセレネとキャラ被りしてるのよ。どうせアルカに好かれたくて参考にしたんでしょうけど』


『なら次はノアを真似てみようかしら?』


『やめておきなさい。勝てるわけないわ』


 まあいいや。アイリスの事はイロハに任せよう。


『というかここいないでマグナの所に行ってあげなさいよ。用事が済んだから放り出したのはアイリスも一緒じゃない』


『今行こうと思っていたの♪』


 調子の良いこって。



 それで侵入者ってまたなの? 穴は塞いだんでしょ?


『破られました!』


 あらら。そんな障子みたいに。


 仕方ない。さっさと片付けてしまいましょう。他にも色々と済ませなきゃいけない用事もあるし、今日もノンビリはしていられないわね。




----------------------




「それで? この子が侵入者?」


「はい。目当てはハルだったようです」


 見知らぬ少女がハルちゃんを抱きかかえて猫っ可愛がりしている。どうやらこの子もフィリアスっぽい。けど馬鹿みたいに強い力を感じる。たぶん今のハルちゃんと比べても遜色ない。しかもこれで私と契約していないのだ。だから厳密にはまだ吸血鬼だ。どうやってこんな所に現れたのかしら?



「遂に私世界にダンジョンでも出来たの?」


「いいえ。この者は世界の外から直接飛来したのです」


 そうだった。壁破られちゃったんだもんね。また直しとかないと。



「つまり別の世界で生まれたフィリアスがハルちゃんを求めてその世界を飛び出してきたの?」


「今朝は冴えていますね。マスター」


「ありがとう」


 さてどうしたものかしら。正直想像した事が無いわけじゃない。フィリアスとはイロハのように世界一つを支配出来る力を持った存在だ。世界を抜け出して自らの欲望の赴くままに生きるフィリアスがいたっておかしい事はない。


 けれどフィリアス達は基本的に内向的だ。どこかに閉じこもってひたすら自己研鑽に努める者が多い種族でもある。そして同時に寂しがりやだ。その欲求が最も強ければこうして同族を探しに旅に出る子だっていないとも限らない。実際いたわけだけども。一応まあまあ珍しい子ではあるのだろう。そもそもそこまでの力を持つに至るのは相当稀な筈だし。と言うか普通に考えたらあり得ない事だけども。たぶん生まれついての力だけじゃない筈だ。この世界に来るまでに色々な経験を積んできたのだろう。



「きっとハルこそがオリジナルだと本能的に悟ったのでしょう」


 凄いわね。本能。



「取り敢えず契約しちゃおっか」


 名前何にしよう?



「名前なら既にあるそうですよ」


 あらそうなの?



----------------------




「ナナミ!? 何故ナナミがここに!?」


 あれ? マグナちゃんの知り合いなの?



「ダレ?」


 ななみんの方は知らない様子だ。でもマグナちゃんが知ってるって事は、ナナミって名付けたのメグルちゃんだよね?



「もう忘れたの!? つい最近会ったばかりじゃないか!」


「……」

「ワスレタ」


 そっかぁ~。忘れちゃったかぁ~。



「メグルちゃんなら覚えてる?」


「メグル」

「……」

「オボエテル」


「ナナミ」

「クレタ」


 そっか。名前を貰った事はちゃんと覚えているのね。



「ズット」

「ムカシ」


 ありゃ?



『経路が違うんでしょ。寄った世界に応じて体感時間なんて変わってくるもの』


 そっか。それでマグナちゃんの事は忘れちゃったのね。



「ナナミは相変わらずだね……」


「相変わらずって?」


「この子は興味の有無の差が激しいんだ」


 マグナちゃんには単に興味が無かったって事? けど別におかしな話しでもないわね。むしろその辺はフィリアスらしいわ。実際今の所私とハルちゃんとしか喋ってないし。



「ナナミとはどういう知り合いなの?」


「メグルが挑んでボロ負けした相手かな」


 そりゃ挑んだら負けるでしょうね。力の差は歴然だし。いや、二人と出会った頃がどの程度だったかは知らんけど。



「メグルちゃんって怖いもの知らずなのね」


「まあ、うん。そういう所はあるかも。刺激が好きなんだ」


 だから旅に出たのかしら?



「普段はクールぶってるんだけどね」


「そうなの? なんだか面白そうな子ね。私も会ってみたいわ」


「きっと気が合うよ♪」


「それは楽しみね♪」


「ムゥ」


 ありゃ? ナナミんがご機嫌ナナメ?



「ナナミにも随分気に入られたみたいだね。流石アルカ♪」


 そういうマグナちゃんもだ。ナナミが握ったのと反対の手を握ってきた。今日も朝から両手に花ね♪



「マグナ。警告です。マスターから離れなさい」


「まあまあ」


「マスターもマスターです。まったく。次から次へと」


 あら。シーちゃんもご機嫌ナナメね? 今日はシーちゃんともデートしましょうね~♪

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