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43-39.無謀な挑戦

「最新型のメタモルステッキにはプロトを元にした自立思考ユニットが搭載されていました。アイリスはその疑似魂魄を自らの核としたのでしょう。後はアルル達と同じです。ニクス因子を用いて真の魂へと昇華したのです」


 まさかアイリスが自らの意思で擬人化するなんて。これもマグナちゃんの力よね……。あれ? というかまさか?



「マグナの力も再現出来る筈です。あの子の力はブラックボックスですが、そのブラックボックスごと取り込む事は可能なのです」


 だよね。だからマグナちゃんはアイリスの中でも力を行使出来ていたんだもんね。


『加えて私やシイナ自身の知識もあるわ。今のシイナにどうにか出来る相手じゃないわね』


 うわぁぉ……。



「すみません、マスター」


「ううん。気にしないで。心配しなくてもアイリスは敵対するつもりなんて無いだろうし」


 姿を消した理由はわからないけど。アイリス自身はマグナちゃんの望みを叶えるって言っていたし、修行の続きをするつもりではあるのだろう。けれどそれならノアちゃんをログアウトさせて自身も私達の前から姿を消す必要は無かったように思えるけど。何か他の目的もあるのだろうか。



「マグナの力を完全に我が物とするつもりなのでしょう。そうして現実世界に進出する手筈を整えるつもりです。今のアイリスが私の考えている通りの存在であるなら、何よりマスターの側に居る事を優先するでしょうから」


「それには絶対にマグナちゃんの力が必要なの? 力が大きすぎるったって、その一部を現実の肉体に移すだけなら問題ないんじゃない?」


「違うのです。マスター。アイリスが原初神の力を持つと起こる影響とはそれだけではないのです」


『この世界そのものが変質してしまうのね』


「はい。既に変化は起こり始めています」


「えっとつまり? ここも一つの世界として生まれ変わっちゃったってこと?」


「今はその最中です。このまま放っておけばいずれNPC達までもが命を得ることでしょう」


「え!? マズイじゃない! そんなの!」


「はい。ですから止めねばなりません。そしてアイリス自身もまた自らの力を抑制するつもりでいるのです。つまりマグナの力を使ってイオスの力を掌握しようとしているのです。混沌を奇跡によって、秩序へと作り変えるつもりなのです」


『まるで神話の再現ね。イザナギとイザナミが天沼矛を使って混沌から大地を創造したように』


 なんだか壮大な話になってきたわね……。



「上手くいくと思う?」


「無謀です。所詮マグナは作り物。導とするには強度が足りません」


『イオスの力もマグナ以上のブラックボックスなの。と言うより彼女の場合はあくまで記録ログが残っているというだけであって、ニクス因子と違って再現されたものが存在していたわけじゃないの』


「アイリスはそれすらも再現してしまったようです」


「なら案外上手くいくんじゃない? イオスの力って完全に再現できたってわけでもないんでしょ?」


 そういう意味ではマグナちゃんの力とも大差は無い筈だ。あくまでアイリスが模倣した偽物に過ぎないわけだし。



「わかりません。ですが実際に世界は変容しつつあります」


 そうだった。模倣したはいいが制御しきれていないのは間違いない。随分と無茶をしたものね。本人的には当てがあったのだろうけど。



「ならとにかく二人を見つけ出さないとよね。協力して問題を解決しましょう」


「いいえ。我々は外に出てアイリスのハード自体を物理的に抹消するべきです。下手をすればマスター世界やニクス世界にも影響を及ぼしかねません」


『ダメよ。今出るのはマズイわ。ここと外じゃ時間の流れに差があるもの。本体を破壊する前に事が成ってしまうわ』


「それにそんな事したらマグナちゃんまで巻き込まれちゃうじゃん」


「強制ログアウトを試みます」


『それこそ無茶よ。この状況でアイリスから権限を奪い返せるわけがないじゃない』


「落ち着いてシーちゃん。乱暴な事をしなくてもアイリスはきっとわかってくれるわ。合流して一緒に解決策を考えましょう。今からでもイオスの力だけ切り離すとか出来るかもしれないし」


 とにかくシーちゃんに冷静になってもらわなくちゃだ。今の説明もシーちゃんらしくない冗長っぷりだった。何時もわかりやすく重要な事を順番に語ってくれるのに、今回は順番がしっちゃかめっちゃかだ。アイリスが外に出ようとしているとか今はどうでもいい。とにかくイオスの力をどうにかしなくちゃいけない。ならお姉ちゃんを呼び戻すのが得策だろう。あ、そっか。アイリスはお姉ちゃんの所に行ったんだ。



「シーちゃん。ハルちゃん達の所へ」


「っ! イエス! マスター!」


 ハルちゃんとお姉ちゃんの下へ移動すると、想像通りアイリスとマグナちゃんもそこに来ていた。アイリスはお姉ちゃんの身体を解析しているようだ。お姉ちゃんは一度イオスをその身に取り込んでいる。きっとお姉ちゃんを参考にすれば力を漏らさず抱え込む事も出来る筈だ。制御はそれからでも遅くはない。先ずは封じる為の器を作るべきだ。アイリスはそう考えたのだろう。ハルちゃんも既に協力してくれているようだ。



「ふふ♪ 気付いたのはグラマスの方だったわね♪ お母様ったら肝心な所で慌てちゃって♪ 可愛いわね♪」


「私達も協力するから今度は黙って居なくならないでね」


「もちろん♪ 当てにしてるわ♪ グラマス♪」


「私達は何をすればいいの?」


「こちらにいらっしゃい。ミユキの隣に腰掛けて♪」


 私からも何か欲しいのかしら。



「ええ。グラマスも参考にさせてもらうわ。実はイオスの力ってまだ完全には取り込みきれていないのよ。だから先ずは真の融合を果たしましょう。器はミユキを参考に。そして中身はグラマスを参考に。それぞれの良いとこ取りよ♪ 私は私を生み出した。けどまだそれは途中なの。完全な誕生はもう少し。お母様も手伝って♪ もう一人のミユキもね♪」


 マグナちゃんにお姉ちゃんを見せるのはマズイ気がするけど、今はそうも言ってられないようだ。そもそもマグナちゃんはお姉ちゃんの事情なんて知らないし大丈夫だよね。



「二人ともお願い」


「イエス! マスター!」


「はいはい。手伝ってあげるわよ」


 アイリス、シーちゃん、未来お姉ちゃん、それからハルちゃんの四人がかりで私とお姉ちゃんとマグナちゃんの力を混ぜ合わせ、模倣したイオスの力をアイリスの中に押し込んでいく。


 正直物騒なものは消してしまうべきだとも思ったけど、何故だか一人として止める者はいなかった。先程まであんなに慌てていたシーちゃんすらもだ。もしかしたらこれもマグナちゃんの力と何か関係があるのかもしれない。無謀な事とは思いつつも挑戦せずにはいられない。きっと上手くいく筈だと無意識に信じ込んでしまっているのだろう。そうやって前に進み続ける姿勢こそが奇跡を掴むのに何より大切なのだとも思う。だからマグナちゃんに影響された者達は挑戦するのかもしれない。例え無謀な事であっても必ず成し遂げられると信じて行動させる力があるのだろう。いつかアイリスにも聞いてみよう。きっとアイリスはいずれマグナちゃんの力も解き明かしてみせるのだろうから。

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