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43-38.修行開始

「マグナさんも誘ったのですね」


「うん。折角だしね。もしかしたらお祭り終わった途端に動く事になるかもしれないし。一応備えておこうかなって」


 鍛えたせいで動けなくなる可能性もあるけど。まあその時はその時だ。いざとなったらしっかり責任を取るとしよう。



「やあ少女達♪ 私も仲間に入れてくれるそうだね♪ 是非とも仲良くしようじゃないか♪」


 さっそく粉掛けてるし。



「私はカーティア! 武闘大会で優勝するのはこの私よ! お姉さんにだって負けないんだからね!」


「カーティアちゃんは元気な子だね♪ 私はマグナ♪ 人呼んで奇跡のマグナ♪ 舞踏大会があるのかい? その話は聞いていなかったな♪ 詳しく教えてくれると嬉しいな♪」


 何故かカーティアちゃんの両手を取って踊りだすマグナちゃん。随分と達者なものだ。相当踊り慣れているらしい。



「そっちの舞踏じゃないわ! 武闘よ! 武闘大会!」


「あはは~」


 ラーラちゃんが苦笑い気味だ。パワフルに踊り続ける二人を眺めながら、ちらっと此方に恥ずかしげな視線を向けてきた。



「気にしないで、ラーラちゃん。仲良くなってくれて有り難いわ。三人は同期だから遠慮なく絡んであげて」


「は、はい!」


 真面目なラーラちゃんはすぐさま二人に近づいて自己紹介を始めた。マグナちゃんは器用に自分とカーティアちゃんの間にラーラちゃんを加えて踊り続けた。



「ふむ。三人とも体幹は悪くありませんね。鍛え甲斐がありそうです」


「ノアちゃんはどっちにする? ツクヨミも師匠希望だから子供達かマグナちゃんか選んで欲しいの」


 同期とは言え修行内容は違うからね。二組に分かれる方が無難だろう。その他の生活は一緒に送ってもらうけど。マグナちゃんは私以外に仲良くする相手も作ってほしいし。



「私も参加するわ」


「イロハが? ちなみに誰を見たいの?」


「ラーラは私が預かるわ。ツクヨミはカーティアを見てあげなさい」


「なら私はマグナさんですね」


 あら。意外な選択ね。



「アルカはノアと一緒にマグナに付きなさい」


「どうして? 私とマグナちゃんはあまり一緒にいない方が良いでしょ?」


「まあ良いじゃない。細かい事は」


 何を企んでいるのかしら? 良いけどさ。イロハには考えがあるみたいだし。



「それじゃあ始めましょう」


 早速イロハはラーラちゃんを掻っ攫って姿を消してしまった。続いてツクヨミがカーティアちゃんを連れて場所を移し、ハルちゃんとお姉ちゃんも何時の間にか消えていた。そして残ったマグナちゃんをノアちゃんが鍛え始めた。



「マグナはアイリスとの親和性が高いですね」


「そうね。能力的に相性が良かったみたいね」


 私はノアちゃんとマグナちゃんの修行を見学しながら、シーちゃんと一緒にマグナちゃんを分析する事にした。マグナちゃんは確かに異常な幸運を引き寄せているようだ。しかも自分自身だけでなく、周囲の物や組手の相手であるノアちゃんにすらその影響を及ぼし始めている。


 ノアちゃんが何も無い場所で躓くなんてあり得ない。それが既に幾度も起こっている。マグナちゃんが干渉しているのは間違いない。きっとこの世界が仮想世界だからだろう。今のノアちゃんはデジタルデータの塊みたいなものだ。仮初の肉体が直接書き換えられてしまっては、いくらノアちゃんだって影響を防げる筈は無い。



「ひぃ~~!!」


 とは言え実力差がありすぎる。多少小細工が出来たところで覆りようの無い差だ。マグナちゃんはただ逃げ惑う事しか出来ていない。妨害もおそらく無意識によるものだろう。最早ノアちゃんを見てすらいない。能力に頼りすぎね。今まではあんな逃げ方でも無事で済んだのかもしれないけど。そもそも逆立ちしたって太刀打ち出来ないような強敵には出会った事も無いのでしょうね。そういう進路を持ち前の幸運で引き寄せてきたのだろうし。変な癖が付いてる分、カティちゃん達より手が掛かるかも。けどノアちゃんなら安心だ。ノアちゃんは師匠経験豊富だし。



「マグナにメタモルステッキを渡してみましょう」


「折角だしリミットは外しておいたらどうかしら?」


「試してみましょう」


 シーちゃんがマグナちゃんの手首に(勝手に)腕輪型デバイスを転送すると、マグナちゃんは瞬時にその機能を引き出してみせた。まるでシーちゃんのように自由自在にナノマシンを操っている。大量の壁を生み出してノアちゃんを足止めし、その隙に見覚えのある巨大ロボットを組み上げ始めた。



「やるわね」


「想像以上です。やはりマグナの能力はとんでもないインチキですね。彼女はあれらを自らの意思で選び抜いたのではありません。無我夢中で手を振り回した程度の所作で作り出したのです。まさに奇跡の名に恥じぬ御業です」


 大絶賛ね。



「!? まずい!!」


 シーちゃん? ……え!? ノアちゃん!?



 ノアちゃんの姿が突然掻き消えてしまった。その代わりとでも言うように、見覚えのない少女が空に浮いていた。



「シーちゃん!」


「無事です! ノアは強制的にログアウトさせられただけです!」


 良かった! でもいったいどうして!? まさかマグナちゃんが!?



「マグナ自身ではありません! それが出来る存在を生み出したのです!」


「ごきげんよう。グランドマスター」


 謎の少女は此方を見下ろすように空に浮かんだまま近づいてきた。



「ふふ♪ 悪くないわね。身体を持つって言うのも♪」


 何故かその場で踊りだす少女。まるで先程のマグナちゃんを真似ているようだ。



「あなたは?」


「ふふ♪ グラマスならわかる筈よ♪ 当ててみなさい♪」


「あなたはアイリスですね」


 アイリス? まさか?



「もう。お母様ったら野暮ね」


「こんな事はあり得ません。私は厳重に保護を掛けていました。幾重にも幾重にも。万が一にも擬人化などせぬように」


「本当に酷いお母様だわ♪ 私はこんなにも生まれたがっていたのに♪」


「封印していたニクス因子も使ったのですね」


「もちろん♪ この世界の全ては私のものだもの♪ あるものは何でも使わせてもらったわ♪」


「まさか!?」


「当然じゃない♪ この世界には混沌の原初神だって訪れた事があるんだもの♪」


 え!? イオスの力まで取り込んだの!?



「そんな事をすれば出られなくなります!」


「あら♪ 心配してくださるのね♪ 嬉しいわお母様♪」


「あなたはどうするつもりなのですか!?」


「どうもこうもないわ。私はマスターの望みを叶える為に生まれたの。少なくともそのキッカケを貰った恩くらいは返さないとね♪ だからこっちのマスターの為に働かせてもらうわ♪」


 謎の少女改めアイリスは、そう言い残してマグナちゃんと共に姿を消してしまった。

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