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43-34.お節介

「テルスがねぇ」


 まさか何年も帰らないつもりでいるなんて。それは聞いてない。神様にとっての少しを見誤っていたわね。



「そんなに待たせたらマグナちゃんも可愛そうだし、もう少し何とかならない?」


「無茶を言ってはダメだよ。向こうの世界には向こうの世界の事情があるんだから。アルカだって散々頑張ってきた事を突然やってきた余所者に横から処理されたら嫌でしょ? 偽神が倒されたなんて知らない誰かから聞いて納得出来る?」


「それは……」


 正直有り難いと思っちゃう。けど実際にその場面に遭遇したらどうかしら。腹立たしく感じるのも間違いないようにも思える。意気込みが大きい分、余計に肩透かしを食うことになるのだもの。



「少し手伝ってあげる程度ならどうかしら? それこそマグナちゃんをメグルちゃんの下に届けてあげるとかさ」


「そんな事しても意味ないよ。敵は私以上の存在だ。マグナ程度じゃ何の足しにもならない」


「そんなの下手したら全滅しちゃうじゃない」


「それはそれで見届けるだけさ。勿論メグルだけは救い出すけどね。マグナとの約束は守るから安心してよ」


「なんでそんな薄情な事言うのよ。向こうにだって守護神の誰かがいるのでしょう? その神はニクス達の知り合いじゃないの? 敵が主神や原初神クラスだなんて無茶よ。手を差し伸べてあげなきゃ勝てるわけがないじゃない」


「そんな事は無いさ。アルカは生き残ったじゃないか」


「それはイオスに害意が無かっただけよ」


「アルカは気に入られていたからね」


「私は運が良かっただけじゃない」


「それもアルカの力だよ。相応しい力が無ければ生きられないものなんだ。それは人も神も一緒だ。無理をすれば反動が来る。摂理を捻じ曲げて望みを叶え続ければ必ずしっぺ返しをくらうものなんだ。そしてお母様もテルスも今やアルカのものだ。全ての因果はアルカに収束してしまう。世界一つ分の因縁を新たに背負いこむのは悪手だよ。下手をするとこちらの世界が滅んでしまう。だから私達は手を出せない。分かってくれるかな?」


「それは……ええ。そうね……」


 カーティアちゃんやマグナちゃんを巻き込んでしまった程度の影響は可愛いものだ。今の私ですらこうなのだ。背負いこむにはリスクが高すぎる。当然ニクスの言う事がわからないわけじゃない。けど本当に方法は無いのかしら……。


『簡単な解決方法があるじゃない』


『マグナを鍛えて送り届ければいいではありませんか♪』


「ダメだってば。そんな事したらマグナもまたアルカのものになってしまうじゃないか。結局は同じ話だよ」


『ならば所有者登録とやらを解除しましょう。私が必ず成し遂げてご覧に入れます』


『私も手伝うわ。そういう話なら役立てると思うの』


 たしかにシーちゃんと未来ちゃんの方のお姉ちゃんなら。



「それこそ無茶だよ。あの子に使われている技術はこの世界における魔術や科学じゃないんだ。あれはエーテル独自のものだ。法則の違う此方側で解析出来るようなものじゃないよ。そもそもの基盤からして違うんだ。例え手順を知っていて同じ事を試したとしても私達に同じ術を使う事は出来ないんだよ」


「全ての根源であるイオスがいるんだからどうにかなるでしょ? 少なくとも体系は同じなんだし」


「そうだね。お母様の力まで使ってしまうならスタート地点に立つ事は出来るだろうね」


 そっか。力を認識出来るようになったとしても、それを用いて高度に組み上げられたシステムを完全に掌握するのは難しいか……。それは電気を認識出来たからパソコンの中身が分かると言っているようなものだ。当然そんな筈がない。シーちゃんの力を以ってしても相応に時間は掛かるだろう。



「けどそれでさえ十分に干渉し過ぎだと思うよ。私は」


 ニクスにもハッキリとした根拠があるわけではないのだろう。あくまで経験から自分は反対だと進言してくれているのだ。当然私はニクスのその判断を疑ったりなんてしない。それはそれとして出来る事がないかはもう少し考えてみよう。



「諦めてないんだね」


「そこまで拘るべき事じゃないとは思うのだけどね」


「アルカがそうやって何でもかんでも拘ってきたから今があるんだ。私は今とっても楽しくて幸せなの。だからアルカの決断は応援するよ。どんな選択をしたとしてもね」


「ありがとう、ニクス。ならマグナちゃんと話してみるわ」


「本気? さっき説明したでしょ?」


「ええ。わかっているわ。マグナちゃんは他の娘のものだもの。私が取っちゃったらメグルちゃんが悲しむでしょうね」


「アルカが干渉し過ぎればエーテルにだって元には戻せなくなるよ。記憶にも刻み込まれてしまうからね」


「節度は守るわ」


「どうしてもやるって言うならいっそ抱え込んじゃえば? メグルをすぐに回収してしまおう。誰か迎えに行かせればいい。きっとノルンだって立派にお遣いを果たしてみせるよ。メグルが向こうで深入りする前にメグルとマグナだけを家族に加えてしまえばいい」


「手遅れだったら? メグルがどうしても助けたいと言ったらどうするの?」


「残念だけど諦めてもらおう」


「ならダメね。そんな選択肢は選べないわ」


「テルスは見捨てるよ」


「そうでしょうね。でないと私が背負う事になってしまうんだもの。わかっているわ。その世界の問題はその世界の人達が解決しなくちゃいけない事も。ニクスの言った事が理解できないわけじゃないの」


「私だってわかってる。アルカはきっとそう言うだろうと思っていたもん」


「ふふ♪ 流石ニクスね♪」


「当然でしょ♪」


『ならアルカが喜びそうな代案も考えていたんじゃないのかしら?』


「考えていたからって思いつくとは限らないでしょ」


『頼りにならない神様でございます』


「ちょっと。どうしてツクヨミまで突っかかってくるのさ」


『何故だか先程のやり取りが癪に触りましたので』


「えぇ……」


 ふふ♪ 可愛い♪



「まあいいや。マグナの所に行こうか」


「良いの?」


「言ったでしょ。どんな決断を下したって応援してあげるって。言いたい事は言ったし、後はアルカに任せるよ」


「ありがとう、ニクス」


「うん。頑張ってね、アルカ。何かやってほしい事があれば遠慮せずに言ってよね♪」


「ええ♪ 頼りにしてるわ♪」

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