9-8.発見
私とノアちゃんは何匹かの魔物を倒した。
結局ドラゴンは見つかっていない。
まあ、そうそう都合良くは行かない。
どこかにドラゴンの巣とかないかしら。
谷とか行けばいるのかな。
ドラゴン達の棲家を見つければ
狩り放題なんて思ったけど流石にこの思考はいけない。
別に虐殺がしたいわけじゃない。
向こうから襲ってきたわけでもなく、
人類が近くまで開拓しているわけでもない。
必要としていない分まで狩ってはいけない。
そもそも油断しすぎだ。
数百のドラゴンに襲われたら何があるかなんてわからない。
こんな事を考えるなんて調子に乗りすぎている。
あまり変なことばかりしていると、
あっという間に悪人になってしまう。
人として最低限超えちゃいけないものはあるのだから。
「いました!今度は期待できます!」
ノアちゃんがハイテンションで向きを変える。
どうやら他より強い力を見つけたようだ。
私よりノアちゃんの方が少し視える範囲が広い。
今回も私より先に気づいた。
悔しい。
絶対に追いついて見せる!
ノアちゃんに先導されるようにして、
遂に一匹のドラゴンを見つける。
緑色の鱗のよく見るやつだ。
ブレス以外の遠距離攻撃もしてこないはずだ。
私はドラゴンに向かって、
斬り掛かっていく。
ノアちゃんは死角に回り込む。
そうしてあっさりドラゴンも倒し、
ようやく今日の目的を果たした。
ドラゴンが息絶えると、
ノアちゃんは他にも力を発しているものを見つけたようだ。
少し考えてからその方向に移動する。
相変わらず私には全然感じ取れない。
ぐぬぬ・・・
私はドラゴンを収納に収めて付いていく。
ドラゴンのいた所から少し離れた場所で立ち止まった。
ノアちゃんの後ろ姿から驚きが伝わってくる。
なんだろう?
感じる力が弱すぎる。
なんでわざわざノアちゃんは気にしたのだろう。
わたしはノアちゃんに近づいていく。
私に振り向いたノアちゃんは涙を浮かべていた。
「アルカ・・・」
「ノアちゃん!?どうしたのなにがあったの!!」
ノアちゃんは何も言わずに一箇所を指し示す。
ノアちゃんが指した方向に微弱な力を発しているものがあった。
それは卵だった。
力の質から先程のドラゴンのものを感じる。
あのドラゴンの卵だったのだろう。
ああ。
子持ちだったのか。
確かにこれはダメだ。
ノアちゃんが泣いている理由も納得した。
未開拓地の奥に攻め込んで
大人しく暮らしていたドラゴンの親を殺してしまったのか。
素材欲しさに魔物を狩る事なんて珍しくもない。
当然今までにも子供が居た魔物達もいたはずだ。
けれど、こうして取り残された卵を見てしまえば違ってくる。
自分勝手だけれどそう思う。
今まで視る力が無かったから気付くことも無かった。
視えすぎてしまえばこうなる事もあるのか。
ノアちゃんは卵を抱えて泣いている。
ドラゴンを食べてみるなんて理由で狩りにきてなにを今更なんて思わない。
魔物を狩って利用する事に慣れた私とは違うのだから。
暫く経っても、ノアちゃんは卵を抱えたままだった。
もう狩りを続けるつもりにはならない。
もちろん親ドラゴンを食べる気にもならない。
ノアちゃんの希望で親ドラゴンを収納から出して
卵の近くに埋葬する。
こんな事に意味は無い。
そう思っても、
少しでもノアちゃんの気が済むならと行動する。