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43-31.挑戦

「待たせてごめんね。イレーニアさん」


「あら。もう良いのかい?」


「ええ。大丈夫よ。えっと、どこまで話したかしら?」


「悪いね。うちの娘達が迷惑をかけたみたいで」


「ううん。全然そんな事ないわ♪ 二人共とっても良い子だったもの♪」


「アルカは随分と変わったんだねぇ」


「家族がいっぱい出来たの♪」


「ふふ。そうかい。嬉しいねえ。またこうして会えた上に、あのアルカがこんなに話てくれるなんてねぇ……」


「ちょっと泣かないで。そんな事で」


 まだ涙脆くなるような歳でもないでしょうに。



「昔のアルカときたら」


「無し無し! そういう話は無しよ! 今日の主役は子供達でしょ?」


「ふふ。ニルダも連れてきてやればよかったよ」


「また今度余裕のある時にでも招待させてもらうわね」


 今はお祭りで忙しいからね♪ お互いに♪



「アルカこそ何時でも来ておくれ。アルカ達にならいくらでもごちそうさせてもらうよ。家族も全員一緒にね♪」


「あら? そんな事言って良いのかしら? うちは百人越えてるわよ?」


「え?」


「ふふ♪ 何人かでお邪魔させてもらうわね♪」


 全員で行ったらお店潰れちゃうし♪



「はぇ~。あのアルカがねぇ。人って変われば変わるもんなんだねぇ~」


 まあそんな反応になるよね。十年前の私は……やめとこ。



「だからまあ気にしないでね。カーティアちゃんとラーラちゃんが修行したいって言うなら預かるのは問題無いの。ただうちは居心地良いから♪ 一度住み始めたら帰りたくなくなっちゃうかも♪」


「ふふ。そうかい」


 どうやらまだ考えが定まっていたわけではないようだ。穏やかだけど少しだけ曖昧な笑みを浮かべている。やっぱり十歳やそこらの娘を独り立ちさせるのは寂しいよね。



「ねえ! 良いでしょ! お母さん! 約束したじゃん!」


「ダメだってば! カーちゃん! 今は叔母さん達が話してるの! 少し静かにしてて!」


「ふふ。ありがとうね。ラーラ」


 イレーニアさんは二人を愛おしげに見つめている。この子達が可愛くて堪らないのだろう。本当はずっと側に置いておきたいのだろう。



「急かすつもりはないわ。三人でお祭りでも回りながらゆっくり考えてみてね。話をしたいならこの部屋を使ってくれてもいいし。カーティアちゃんも焦らないでお母さんの言葉に耳を傾けてあげてね」


「はい……」


「あらあら。この子がこんなにしおらしいなんてねぇ。アルカはどんな魔法を使ったんだい?」


「イレーニアさんのお陰よ。ずっと私の味方でいてくれたって聞いてとっても嬉しかったわ」


「ふふ。そうかい。そうだねぇ。私が唆したようなものだったねぇ」


 英才教育の賜物ね♪


『他にもまだまだいそうよね。同じような事してる人達』


 私の記憶の中に心当たりが?


『この話はやめておきましょう。自分で言っておいてなんだけど』


 そうだね。聞いちゃったらフラグが立ちそうだし。



「さて♪ それじゃあ一度お祭りに戻りましょうか♪」


 イレーニアさんとももう少し話したいところではあるけど、そういうのはまた別の機会に取っておきましょう。何もこれっきりってわけでもないんだし。今度は私の方からイレーニアさんのお店にお邪魔させてもらいましょう。きっとその時にはニルダさんもカルロさんもラウロさんも顔を出してくれるだろう♪ 昔話はあまり気が進まない所もあるけど、少しくらいなら酒の肴にするのも良いわよね♪




----------------------




「アルカさん!」


「はいは~い♪」


「アルカさん♪」


「は~い♪」


 可愛い少女達に手を引かれてお祭りを練り歩く。イレーニアさんとノアちゃんとお姉ちゃんは後方で私の昔話に花を咲かせている。子供達の話にも結論は出ていないけど、どうせなら皆で回ろうと提案されたのだ。



「勝負よ! お母さん!」


 突然離れたカーティアちゃんがイレーニアさんの手を引いて駆け戻ってきた。カーティアちゃんのお目当ては近くにあった射的の屋台だったらしい。射的と言っても弓のだけど。ここで勝ってあの件をごり押すつもりかしら?



「ふふ♪ 良いねぇ♪ その挑戦受けて立とうじゃない♪」


 楽しそう♪ とっても仲の良い母娘ね♪



「ラーラ! 貴方の欲しい物を選びなさい! 私が取ってあげるわ!」


「えへへ♪ 頑張ってね♪ カーちゃん♪」


 こっちもこっちで仲良しだ♪



「あれ? でもイレーニアさんって冒険者の頃も弓使ってたよね?」


 勝ち目あるの?



「そうですね♪ ふふ♪ カーちゃんはそういう挑戦が好きなんです♪」


『素晴らしい! アルカ様! 是非私の弟子に!』


 内なるツクヨミが昂ぶっていらっしゃる。



「実は料理も得意だったり?」


 お店を継ぐのは嫌と言いつつ、何だかんだ頑張ってたりとか?



「いえ。料理はカルロ叔父さんの担当です」


『イレーニアは昔から料理が苦手だったみたいよ』


 そうだっけ? そうだったかも。カルロさんの料理は確かに美味しかったかも。流石にうろ覚えだけど。



「けどだからってお店を継ぐのが本当に嫌なわけじゃないんです。カーちゃんはただ挑戦したいだけなんです。何時だって」


 お料理の道だって色々挑戦する事はあると思うのだけど。その辺はまあ子供だからね。色々と視野が狭くなる時期もあるよね。いっそエリスみたいに通いにしてみる? それで武術や魔術だけじゃなくて料理も私が教えてあげようかしら? 私のはお店で出す程じゃないけど、興味を持つキッカケくらいにはなるかもだし。


『良い考えね。味見役は任せなさい』


 色々条件は考えなくちゃだから先に少し計画を練ってみましょう。持ちかけるかどうかは二人次第って事で♪


『お任せください。マスター』


 やっぱりシーちゃんは頼りになるね♪


『ちょっと。私は?』


 ふふ♪ イロハも一緒にお菓子作りしてみましょうか♪


『仕方ないわね。たまには腕をふるってあげるわ』


 え? イロハって自分で作れるの?


『当然じゃない。私が挑戦していないわけがないでしょ』


 まあそう言われてみるとそうかもだけど。


 でも期待出来そう♪ きっとイロハの作るお菓子は美味しい筈よね♪ なんたってイロハだし♪


『ふふん♪ ほっぺた落っことしても知らないわよ♪』


 楽しみ♪

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