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43-29.因果の導き

『イレーニア……いたわね。アルカは例のごとく名前も覚えていなかったけれど』


 わるかったってば。



『夫はカルロ。それがカーティアの父の名よ。ラーラはラウロとニルダの娘ね。全員アルカが助けた冒険者よ。彼らはイレーニアとニルダの妊娠を期にムスペルからヴァガルに移住したの。押しの強いイレーニアに捕まってアルカも珍しく旅に同行したわ。けどヴァガルに入る直前に別れたみたいよ』


 そっか。それで私がヴァガルの近くまで……。


『ええ。ジゼルの命を救えたのもある意味イレーニアのお陰と言えるわね』


 そしてルネルと出会った事も。


『アルカが彼らの下を離れたのはあの事件を察したからよ。結局アルカは彼らの下に戻らなかったわ。事件が起こるのは自分のせいだなんて考えていたの。だから彼らがこれから暮らすヴァガルに嫌な印象を持ってほしくなかった』


『まあ、うん。少しだけ思い出したよ。今回ばかりは』


 似たような事は確かに何度もあったけれど、あそこまで強引な人は少なかったから。そっか。カーティアちゃんはあの人達の娘なんだ。どうりで元気いっぱいなわけだ。



『感慨深いものね。あの頃はまだお腹だって膨らんでいなかったのに』


 ふふ。まるでイロハも見てきたかのように言うわね。


『アルカの記憶は私の記憶よ。おかしな事は無いでしょ』


 そうだね。ありがとう。イロハ。


『怖がる必要はないわ。きっと喜んでくれるわよ』


 叱られないかな?


『勝手に居なくなった事は責められるでしょうね』


 気が重いなぁ。


『けど少しは楽しみなのでしょう?』


 どうかな。ちょっとよくわからないわ。


『どんな顔で会えば良いのかなんて考える必要は無いわ。胸を張っていなさい。あなたは恥ずべき事なんかしてないわ』


 イロハは甘いなぁ。ほっぽって行っちゃったのは……。


『気にするなと言っているでしょう。それより内緒話はここまでよ。私のお菓子が無くなってしまうわ』


 ありがとう、イロハ。助かったわ。


 私の中に戻っていたイロハが再び現れた。



「カティちゃんとラーラちゃんって従姉妹なの?」


「そうです! もしかして!?」


「うん。少し思い出したよ。イレーニアさん、ニルダさん、カルロさん、ラウロさん。四人でパーティーを組んでいた冒険者よね。少しだけ一緒に旅をした事があるの」


「「感激です!」」


 大げさだなぁ。



「そっかぁ。二人はあの時の。これも運命なのかしら」


 私の因果が強すぎるせいね。こうして二人の人生にまで。やっぱり私は出歩かない方が良いのかしら。



「……もしかしてご迷惑でしたか?」


 ありゃ。ラーラちゃんの前では油断出来ないわね。



「ううん。懐かしんでいただけよ。それから少し申し訳なくて。碌なお別れもせずに離れちゃったから」


「心配は要りません! 母はまた他の誰かを救いに行ったんだって言ってましたから!」


 見抜かれてたのか。そんなに長い付き合いじゃなかったんだけどなぁ。まあ、あの人達との旅でも色々とあったけど。



「ふふ。ありがとう。ラーラちゃん」


「い、いえ! はい!!」


「アルカさん!」


「なに? カティちゃん」


「私達を弟子にしてください!」


「その話はご両親も揃ってからね」


「先に約束してください! お願いします!」


「カーちゃん! 失礼だよ!」


 なんでカティちゃんはそんなに焦ってるのかしら?



「先に事情を聞かせてくれる? 手短にで構わないから」


「お母さんが!」


 カティちゃんが言いかけたのを手で制して、ラーラちゃんが話を始めた。



「イレーニア叔母さんは反対してるんです。今は四人とも冒険者をやっていなくて。正確には元冒険者なんです。イレーニア叔母さんはカティちゃんにお店を継いでほしいんです。けど約束もしてて。もしアルカさんの弟子になれたら冒険者になっても良いって。ただ二人とも殆ど勢いで言い合った結果というか……」


「でも約束したわ! お母さん良いって言ったもん!」


 あり得ない筈の約束が目の前にぶら下げられてしまったのか。そりゃ食いつきも良いわけだ。けどイレーニアさん的には困ったことになってしまうわよね。


 きっと普段から私の事を良く言ってくれていたのだろう。あの世界放送がキッカケなのかそれ以前から話題に上がっていたのかはわからない。ただ少なくとも実在の人物である事は娘達も理解していた筈だ。そんな中で冒険者になるならない論争でもしていたのだろう。もしかしたらこっちも日常的に。母がそれだけ褒める人の下でなら冒険者に……あれ?



「私も冒険者は引退しちゃってるの。それに私達と暮らしても冒険者にはさせてあげられないと思う。薄々感づいているかもだけど私達の力は一冒険者に収まるようなものじゃないから。弟子入りするって事はある意味自由が無くなっちゃうって事でもあるの」


「「……」」


 少し難しく言い過ぎたかしら?



「ごめんね。私はギルドと仲が悪いの」


「なら私が変えてみせるわ! 私が冒険者になってギルドに言ってあげる! アルカさんは立派な人だって!」


 ふふ♪ カティちゃんは可愛いなぁ♪



「ありがとう。気持ちだけ受け取っておくわ」


「なんでよ!?」


「無理に決まってるでしょ! 出来るならアルカさん達がもうやってるよ! ノアさんだっているんだし!」


 流石ラーラちゃん。賢いね♪



「カティちゃんはどうして冒険者になりたいの?」


「楽しそうだから!」


「お店の手伝いが嫌なだけなんです」


「ラーラ! 余計な事言わないで!」


 ふふ♪



「どんなお店をやってるの?」


「カーちゃんの家は食堂です。私の家は宿屋です」


 あら。一緒に経営してるわけじゃないのね。それとも提携でもしてるのかしら?



「ラーラちゃんはどう考えているの?」


「私は……カーちゃんと一緒に居たいです」


 なるほど。それも大切な夢だよね♪



「ふふん♪ ラーラったら仕方ないわね♪」


 とっても嬉しそう♪



『アルカ』


『見つかった?』


『はい。イレーニアさんが見つかりました。お一人でいらしていたようです』


 それもそっか。お店を空けておけないもんね。帝都でのお祭りともなれば隣町も繁盛していることだろう。帝都に行くまでの道中で寄る人達も多いだろうし。



『家に連れてきて』


『がってんです』


 カーティアちゃんには悪いけれど、やっぱり親御イレーニアさんの意見も聞いてみないとね。

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