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43-28.帰ってきた迷子

「だから言ったじゃない!!」


 なんでまたカーティアちゃんが? それから何の話?



「すみません。既に迷子センターのお世話になったばかりだったそうでして」


 ああ。そこで事情の説明は終わってたんだ。一度は解放されたって事はそういう事だよね?



「他に連れの子は?」


「ラーラという名の少女がいるそうです」


「同士よ!」


「幼馴染だそうです。無理やり連れてこられた」


 かわいそうに。



「その子は今どこに?」


「わかりません。カーティアが撒いてしまったそうです」


 なんてことを。



「まったくあの子ったら仕方ないわね! また迷子になってしまうなんて!」


「つまりカティちゃんの世話を押し付けられたの?」


「はい。向こうもてんやわんやでして。言外に面倒を見てやってくれないかと」


 まあこの短期間で私達も二人も見つけちゃったくらいだし。元々お祭りと迷子は切っても切り離せないものだもんね。だからって見た目年齢変わらないノアちゃんに頼むのはどうかと思うけど。よっぽどしっかりして見えたのかもしれない。一応実年齢は成人してるし。深層とかの時間も換算しちゃえばそれこそ二十代……。いえ、やめておきましょう。ノアちゃんは永遠の十二歳なんだから。うん。



「ラーラちゃんを見つけ出してきてくれる?」


「迷子センターで待ち合わせ場所を言付けておきました。アルカはカーティアを連れてそちらに向かってください」


 流石ノアちゃん。手慣れてるわね。



「私も探しに行きましょうか?」


「いいえ。お姉ちゃんもアルカ達と居てください。アルカから完全に目を離すのも不安ですから」


「がってん♪」


 あれ? 私もカーティアちゃんと同じ扱いなの?




----------------------




「ご迷惑をおかけしてすみません……」


 ノアちゃんに指示された場所で待っていると直ぐにラーラちゃんも見つけてきてくれた。もうノアちゃんは暫く迷子センターでお手伝いしてきた方がいいかもしれない。



「ラーラ! やっと来たのね!」


「カーちゃんも謝ってぇ……」


 泣きそうな顔でカーティアの腕を引くラーラちゃん。と言うかもう泣いてる。心労を思えば泣きたくもなるよね。かわいそうに。



「カーちゃんはやめなさい! いつも言ってるでしょ!」


 なんかお母さんみたいだもんね。



「ラーラちゃん。よかったら話を聞かせてくれる? 一人じゃ大変でしょ? 私達が力になるよ?」


「そっ! そんな!! これ以上ご迷惑をおかけするわけには!」


「まあまあ♪ 折角のお祭りなんだから♪」


 ラーラちゃんに視線の高さを合わせて優しく手を握りしめて微笑みかけてみた。



「うっうわぁぁぁぁあん!!」


 陥落早かったなぁ。一瞬だったなぁ。もうちょっと粘るかと思ったけどそれだけ不安でいっぱいだったのだろう。そりゃそうだよね。幼馴染と一緒とはいえ、見ず知らずの土地にいきなり連れて来られて、そこで離れ離れになっちゃって。挙げ句今まで見た事もない程人がいっぱいで。心細くて堪らなかったよね。よしよし♪ 後はお姉ちゃんに任せなさい♪


 暫くラーラちゃんを抱きしめて慰めてから、改めて話を聞いてみた。



「そっか。本当に二人で出てきたんだね」


 隣町から。



「はい……」


「だから言ったじゃない! もう少し信じなさいよ!」


「カーちゃんは黙ってて!!」


「っ!?」


「あ!? えっと!? 違っ!?」


「悪かったわ。大人しくしてるわよ。いつも悪いわね」


 ありゃ。カーティアちゃんがラーラちゃんの一言で撃沈しちゃった。明らかに落ち込んでいる。一応本人も色々と自覚はあるようだ。



「カティちゃんもおいで♪ 一緒にお話しましょう♪」


 取り敢えず二人を連れて自宅に転移した。あの場じゃ落ち着いて話をするのは難しいし。



「「!?」」


「ふふ♪ 驚いたよね♪ 私はとっても凄い魔女なのよ♪」


「「食べられる!?」」


 なしてさ。



「少し休憩しましょう。お茶でも飲んでお話しましょう。それからめいっぱいお祭りを楽しみましょう。最後にはお家に送り届けてあげる。だから安心してね。二人とも」


 二人を椅子に座らせ、お茶とお菓子を並べて向かい合う。



「こちらもどうぞ」


 ノアちゃんがお祭りでいくつか買ってきてくれたようだ。ありがたく頂くとしよう♪



「私今日何もしてないわ。折角強くなって帰ってきたのに」


 お姉ちゃんだってサリタちゃんのお母さん探ししてくれたじゃない。



「これ美味しいわ。もっと買ってきて頂戴」


「「!?」」


「イロハ、一人で全部食べちゃダメよ」


 突然現れたイロハに二人の少女がまた驚いている。



「そうだ♪ 自己紹介がまだだったね♪ 私はアルカ♪ こっちはノアちゃん、それからミユキお姉ちゃんに、イロハ、あら? 皆も出てきちゃったの? ハルちゃん、ツクヨミ、シーちゃんよ♪ 皆良い子達だから仲良くしてあげてね♪」


「「……」」


 驚きすぎて固まってしまったようだ。



「ママ」

「ひざ」


 ハルちゃんはマイペースに項垂れたお姉ちゃんの顔を上げさせて膝の上に潜り込んだ。



「二人は強くなりたいのですか?」


 ツクヨミは色々ぶった切って問いかけた。



「「え?」」


「望むならば私が修行をつけて差し上げましょう」


「ダメですよ、ツクヨミ。マスターの許可も無しに」


「そうだね。修行つけちゃったらお家に帰せなくなっちゃうから」


「構わないわ! いえ! それで構わないです! 是非弟子にしてください!! お願いします!!」


 どったのカティちゃん?



「まあとにかく話をしましょう。二人は、と言うかカティちゃんはどうして武闘大会に参加しようと思ったの?」


「家を出る為です! 名を挙げて一人でもやっていけるって証明したかったの!」


 うわぁ。思っていたより更にローカル。村の皆に証明するとかでもないんだね。あくまで家族に対して示すだけとは。



「ラーラちゃんはそれに無理やり付き合わされたの?」


「いえ、えっと……その前にお話するべき事がありまして……」


「聞きましょう♪」


「私達の親は……全員……その……冒険者……でして……」


「うんうん」


「アルカさんって……あのアルカさん……ですよね?」


「うん♪ きっとそのアルカさんで間違いないわ♪」


 ふふふ♪ こんな小さな子にまで知られているなんて♪ 私も捨てたものじゃないわね♪


『バカ。例の件をもう忘れたの?』


 あ、そっか。あの事件。それでか。既にニクス世界でも半年以上前の事だもんね。殆ど活動しなかったヴァガルでも知られているなんて例の件以外になかったわね。



「もしかして私が怖い? 今直ぐ帰してあげようか?」


「いっいえ! 違うんです! そうじゃなくて!」


「ごめんね。無神経だったよね。あんな事しでかしておいて堂々と名乗るなんて」


「ちっ違うんです! そうじゃないんです!!」


 ありゃ?



「わたっ! 私達の両親は昔アルカさんにお世話になった事があるんです! だから悪いとは思ってなくて! むしろ感謝してて! アルカさんがやった事なら理由があるんだろうって! それずっと聞かされてて! だからその! きっと両親達も喜ぶと思うんです! 一度会ってみて頂けませんか!?」


 あらそうなの? もしかして私ってこの子達に会ったことあるの?



「うん。良いよ。ご両親はご在宅? それとも実は二人に付いてきてるのかしら?」


「たぶん……そうだと思います……私の両親もカーちゃんの両親も……。だから見逃してくれたんだと……思います」


 なるほど。二人だけで飛び出しはしたけど、それも全てご両親の手の平の上だったのね。そしてそれをラーラちゃんは理解していたと。


 けど二人は冒険者として育てられた様子がない。もしかしたら多少鍛えられてはいるのかもしれないけど、少なくとも旅慣れている様子はない。それ自体は生まれてからずっと同じ場所で暮らしていたなら不思議も無いけど。今回のお祭りは良い機会だと思ったのかしら?


 それに多分カーティアちゃんの両親はカーティアちゃんが冒険者になる事には反対しているのよね? だから家出なんて言い出したんだろうし。それともまだ実力が足りていないから? ダメね。これは考えてもわからないやつだわ。とにかくラーラちゃんから話を聞いてみましょう。それで足りない分はご両親からも。会ってみれば色々わかるでしょ。


 でもご両親も今頃心配しているかも。どこからか娘達を見守っていたのだろうし。ラーラちゃんが先に話したいと言ったのはそういう意味でもあるのだろう。それなら帝都にも戻らなくちゃね。



「ノアちゃん。また人探しお願い出来る?」


「がってんです!」


 話し合いの会場はどこにしようかしら? 家にご両親達まで呼ぶのはちょっと気が引けるけど。でも大丈夫かな? 私の知り合いみたいだし。一応前例もあるし。この部屋くらいなら。向こうで落ち着いて話すのは難しそうだもんね。その辺はノアちゃんに判断してもらおう。良い人達だったら連れてきてもらうって事で。そんな感じにいきましょう。

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