43-25.次の目標
「案外あっさり成功したわね」
『かんぺき』
『じゅんびした』
『ばんぜんに』
さっすがハルちゃん♪
「結局未解決の課題って?」
『シイナの』
『ハル!』
『いえない』
そっかぁ~♪ ふふふ♪
『マスター』
なぁに? シーちゃん?
『とても不思議な感覚です。この万能感はとても危険です』
今後はシーちゃんが好きに使っていい力よ♪
『今こそマスターの力を完全に解明すべき時です』
つまり早速試してみたいと。ふふ♪ 燃えてるわね♪ シーちゃん♪ いいわ♪ とことん付き合ってあげる♪
『ハルもやる』
『勿論私も付き合うわ』
『素晴らしい試みかと♪ 共に力の深淵を覗くと致しましょう♪』
皆ノリノリね♪ 最初は何から始めましょうか♪
『以前ルネルの使っていた術を解析しましょう』
ルネルの? どれのこと?
『対象の時間を巻き戻す術です。マスターのスキルを使ってあれを再現してみてください。私達が解析してみせます』
え? いきなり? 危険だって言いながらより危険なものに手を出すの?
『ダメ』
『あれはなし』
『そうよ。そもそも対偽神を考慮するなら大して役には立たないわ。ルネルは使わせる為に見せたわけではない筈よ』
『そうでしょうか? 戦闘においても有効活用出来るものかと。そもそも選り好みしている場合ではありません。出来る事は全て試すべきです。そしてあのルネルが披露した以上は何か読み取ってもらいたいものがあるのも事実では?』
意見が分かれたわね。正直私も警告の為なんじゃって思うの。あの時はヘスティの為かとも思ったけど。
『それは直後に偽神が現れた事による思い込みでは? 偽神の出現はルネルにだって予測できなかった事です。状況は大きく変わっています』
『それこそ関係が無いわ。偽神に対抗する為には魔力や神力なんかよりもっと下の階層の力を利用する必要があるだけ。ルネルのあれはその領域の力というだけの話よ。私達が求めるべきは過去を変える方法ではなく、それを実現し得る領域に到達する事よ。目的を間違えないで』
『だんかい』
『ふむべき』
『あれ』
『きけん』
『お二人の言う通りですね。わかりました。私もハルとイロハに同意します』
ということでシーちゃん。
『他の方法を試しましょう。時間干渉は無しで』
だね。取り敢えず抱き寄せ魔法でいいんじゃない? あれもそっち側に踏み込んでるって話だし。
『イエス、マスター』
あ、でも。折角なら論文が書けそうな魔法を研究した方がいいかな? 万が一にも抱き寄せ魔法が実用化されたら色々問題があると思うの。セレネもそういう意味で念押ししていたんだと思うし。どうせ今やるならセレネの課題もこなせるやつがいいわよね。
『それはそれよ。私達はグリアに倣って術式として定義出来なかったものを魔法と呼んでいるけれど、それこそまさに解明すべき領域なの。当然内容はどれもが危険なものよ。論文なんか出していいわけないでしょ』
まあ解明したとしても一般人に再現出来るとは思えないけど。たぶん最低でも神の領域には立たないとさ。
『無難にもっとくだらないものにしておきなさい』
は~い。
『とにかく抱き寄せ魔法の研究を始めましょう。論文を書くという行為についても練習が必要かと。マスターは経験がありませんから』
しゃあないじゃん。私中卒なんだから。ニクスのせいで異世界に来ちゃったんだから。
『殆ど引きこもっていたのに卒業したと言えるのかしら?』
うぐっ……。そんな昔の話を持ち出しおって。
『最初に言い出したのはアルカじゃない』
イロハの意地悪。
『いじわる』
『イロハ』
『意地悪です』
『イロハは意地が悪いです』
『ちょっと! 元はと言えばシイナが!』
はいはい。喧嘩しない。イロハは優しい。
『だいすき』
『あいしてる』
『イロハ』
『私もです♪ イロハ♪』
『今や私もイロハの一部です。嫌いになんかなりません』
『やめなさい!』
照れてる照れてる♪
『どっちが意地悪よ!!』
『『『『ふふふ♪』』』』
『ねえ。何時も思うんだけど皆私の事忘れてない?』
『『『『『……』』』』』
ごめん。シーちゃん。抱き寄せ魔法の研究の前にやらなきゃいけない事があったの。
『きぐう』
『ハルも』
『仕方ないわね。付き合ってあげるわよ』
『良き試みかと♪』
『そうですね。確かに私達は忘れていたのかもしれません』
『冗談でしょ? まさか私も融合させるつもり?』
『『『『『もちろん』』』』』
『無茶言わないで。私は"ミユキ"の一部よ。私を混ぜたら"私"と小春はどうなるのよ?』
わかんないけど先ずは実験あるのみだよ。
『アイリス』
『シミュレーション』
『する』
『データは十分に揃っているわ』
『努力すれば必ず実現できます♪ 我々に不可能はありません♪』
『私もやったんですから。ミユキも逃がしませんよ』
『私関係無いじゃない……』
自分で言い出したんじゃん。
『そういう意味じゃないわ。小っ恥ずかしくなる三文芝居を見せつけるなって言ってるのよ』
このお姉ちゃん中々変わらないのよね。どれだけ躾けてもネガティブが抜けきらないのだ。一時的に無理やりポジティブに振り切れさせてもすぐ元に戻っちゃう。気付くと何も言わずに引き籠もりっぱなしだし。やっぱり融合は必要なのかもしれない。
『やぶ蛇だったわね……』
やっぱりお姉ちゃんはどのお姉ちゃんでも変わらないんだね。
『ママとおなじ』
『空気の読めない失言のせいで立場を悪くするのは生まれつきなのね』
『魂は同じですから。染み付いているのでしょう』
『どうせ居ない扱いなのです。しくじってもこのミユキだけ消せば解決します。我々で好きに使うとしましょう』
『なんで!? なんで急に流れぶった切ったの!?』
シーちゃんはほら。前にしてやられた事を根に持ってるから。
『嘘でしょ!? 何時の話してるのよ!? と言うか今日までなんだかんだ仲良くやってきたじゃない!?』
『もちろん冗談です。調子が出てきましたね。ミユキ』
『なによ……驚かさないでよ……』
まあ冗談はともかく融合は本当に研究するって事で。
『『『『がってん!』』』』
『貴方達はいったい何を目指しているのよ……』