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43-24.準備

「ノアったら何泣いてんのよ?」


「ずびっ……なんでもありません……」


「まあいいわ。話を進めましょう」


 セレネにも専門学校の件を話したら珍しく私の部屋まで飛んできた。忙しいだろうによっぽど興味を惹かれたらしい。


 或いはノアちゃんの状況を知っていて、見に来る為の口実にした可能性も無くはない。ノアちゃんの泣き顔ってたまに見たくなるよね。気持ちはよくわかる。うんうん。げへへ♪



「ちょっと。ノアに気を取られてないで話しなさい。気持ちはわかるけど」


 ふふふ♪ セレネも好きね~♪



「話すも何も今の所はさっき言った事くらいよ?」


 単なる思いつきだし。



「あっそ」


 呆れられちゃった。ごめん。忙しいのに。



「言っておくけど教本を作るなんて簡単な話じゃないわよ。学習過程も想定して組み立てなきゃいけないんだから」


「ごめん。全然考えてなかった」


「まあいいわ。気にしないで。後日詳細な計画を伝えるわ」


 流石のセレネでもこの場でちゃちゃっととはいかなかったのね。


「一先ず思いついた内容を書き出しておきなさい。動画もじゃんじゃん作っておいて。出来上がったものは随時マインに送っておきなさい」


「がってん」


 あ、でも。



「クレアがもうすぐヴァガルでお仕事だからそっち優先でも大丈夫?」


「ええ。当然よ。優先順位は間違えないで。けどこっちも二ヶ月で準備なさい。春から動かすわよ」


「流石にもう建物は作れないでしょ?」


「そこまで大掛かりにはやらないわ。元々ある教育課程に組み込むだけよ。教会騎士と近衛騎士が習熟したら先ずはその部下や兵達に広めるの。民間向けの学校は最後よ。再来年度の開校を目指して教員達を育てましょう」


 なるへそ。最初はエリートさん達向けに試していくのね。私達の知識はそもそも普通の人達が習得できるかもわからないし、伝えるべきかどうかもしっかり確認してかないとだもんね。下手な知識を広めて世界が混乱しちゃっても困るし。



「魔術に関してはグリアさんが作ってくれたものもあるから先に目を通しておいて。基本的なものは全て揃っているから必要ないわ。なんならアルカは案出しだけでもいいわ。ちょっと変わった感じの、いっそくだらない魔術をピックアップしておいて。特異性が強くて実用性の無い魔術よ。それを纏めて論文でも書いて頂戴。後で撒き餌にするわ」


 なんぞ。その注文。


「教師役を国外からも呼び寄せましょう。クリスタお祖母様にも声を掛けに行きましょうか。メルクーリ家はリオシアじゃ暮らし辛いものね。もしかしたらこっちに流れてくれるかもしれないわ。こうしちゃいられないわね。リリカにも伝えておきなさい。あの子なら上手く根回ししてくれる筈よ」


 セレネは段々と早口になっていき、最後は捲し立てるように告げてから転移で去っていった。どうやら居ても立っても居られなくなったようだ。クリスタお義母様を引き抜くために本気で動くつもりらしい。もう逃げられないゾ♪


『なにがよ』


 ううん。なんでもない。



「取り敢えずクレアはノアちゃんと遊んできてくれる?」


「おう! 私に任せろ!」


 よかった。ちゃんと意図を察してくれた。取り敢えず先に元気を出してもらわないとね。思いっきり身体を動かせば諸々忘れられるだろう。



「アルルも!」


「アルルは私と遊んでようね~♪」


「うん!」


 エリスもありがとう♪



 さて。私はシーちゃんと一緒にお勉強だ。グリアが書いた本とやらはシーちゃんがデータ化してくれている筈だ。先にアイリスに行って読書でもしてくるとしよう。




----------------------




「まだあるの……」


「はい、マスター。まだまだあります。最後までお付き合い致します」


「……先に融合しちゃわない?」


「ズルはダメですよ」


 なんでかシーちゃんって教育モードになるとスパルタなのよね。



「気分転換に融合の練習しない?」


「それなら構いません。少しだけ休憩を入れましょう」


 なんだかんだと甘くもあるのかも。



「でも実際融合はもうしちゃっても良いんじゃないの? いくらなんでも勿体ぶりすぎじゃない?」


「危険です。マスター。まだクリアできていない項目があるのです」


「きっとすぐって言ってからもう半年以上経ってるよ?」


「ニクス世界での半年がなんだと言うのです? 深層やアイリスを使用した時間も含めれば年単位で研究を続けているのですよ? そもそもマスターとハルの融合にはもっと長い時間を掛けていたではありませんか。それこそ何十年と」


「なんでかニクス世界での時間ってとっても長くゆっくりに感じるのよね」


「ニクス世界での生活には記憶補正が掛かりませんから」


 まあそうだね。深層とかで長く過ごしすぎて皆との主観時間がズレすぎないように、時間の速さに差がある場所から戻ったら入る直前の事を強く意識出来るように補正がかかるからね。随分と前にそんな術式を組み込んだのだ。それが今度は逆のベクトルに違和感を生じさせているわけだ。



「補正があるからと潜りすぎたのです。そもそも利用を控えるのも得策かと」


「それもわかるんだけどね。やっぱり便利だからさ」


「私との融合も考え直すべきかもしれません。マスターは人から外れ過ぎてしまったのです。これ以上は危険かと」


「もう。シーちゃんはすぐそうやってネガティブになっちゃうんだから。撤回はしないの。融合はするの。シーちゃんの覚悟が決まらないって言うならいくらでも待つから」


「……はい。マスター」


 まあいいや。本当に何時までだって待ってあげちゃうぜ♪




----------------------




「終わったぁ~~~!!」


「お疲れ様です。マスター」


「シーちゃん! ご褒美頂戴!」


「はい。なんなりと」


 取り敢えず抱きしめる。やわやわ♪



「もう一生分勉強しちゃった。教本なんて二度と見たくないよ」


「今からそれを書くのです。マスター」


「む~~! シーちゃん任せた!」


「イエス。マスター」


「いや、ダメでしょ。私何の為に頑張ったのさ」


「ならばどうぞご自分で。私も精一杯サポート致します」


「融合してくれる?」


「……待ってくれると言ったではありませんか」


「ご褒美!」


「……イエス、マスター」


「よし決定! すぐ始めましょう!」


「……酷いです。マスター」


「シーちゃんの全ては私のものよ! 安心して全てを委ねなさい!」


「イエス。マスター」


 大丈夫かな? 強引過ぎたかな? クリアできていない項目ってなんだろう? まあ本当にダメならハルちゃん達が止めるだろう。なんだかんだシーちゃんも満更でもなさそうだしきっと大丈夫だよね?

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