43-20.祭りの続き
「終わっちゃったわね」
祭りの後は何時だって寂しいものだ。
「まだ終わっちゃいないわよ」
「そうです。皆で騒ぐのもいいですが、私達だけの時間はこれからです♪」
え? そういう事? 結局ノアちゃんも恋しくなっちゃったの?
「深層に行くのは勿論構わないけれど、忘れる前にテルスとの話を済ませておきたいの」
「良いわよ。私達も付き合うわ」
という事で。
「お時間頂きありがとうございます。アルカさん」
「そんな他人行儀な言い方しないで。テルスももう私達の家族なんだから」
「はい♪」
よかった。本人も望んでくれているのね。用事が済んだから帰りたいなんて言い出すパターンではないようだ。
「先にテルスの話したい事からどうぞ」
「はい。実は暫くお暇を頂きたく」
「え゛?」
「どうか誤解なきよう。問題が片付いたらすぐに戻ってまいりますので」
ああ。そういう意味か。
「どこに行くの?」
「お恥ずかしながら娘が少々やんちゃしているようでして」
娘さんいたんだ。まあ神様だからね。勿論人間みたいな方法で産んだわけでは無いんだろうけども。
「なんならその娘さんも連れてきちゃって良いわよ。イオスの側ならそうそう悪さも出来ないでしょ」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」
もしかして心配もあったのかな? 邪神の件もあったし。
「私からの話はまた帰ってきてからで構わないわ。その時は娘さんも一緒にね」
「はい♪」
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あのお祭り騒ぎから早数日。何時ものモントニャハト運営会議のついでに一つ提案してみる事にした。
「今度カノンのお母様を招待しようと思うのだけど」
「どうせなら皆の両親も呼びましょう。今は一人でも多くの味方が必要よ。だから最初は教会に集めましょう。アルカディアの現状を見て頂きましょう」
うちはお姫様多いもんね。各国のご両親をお呼びすれば、未だかつてこの世界では開かれた事が無い程の規模で国際会議が開けちゃうね。
『それは過言よ。姫は多いけど被りも多いじゃない』
まあ、同じ家から平均三人は取ってきちゃってるもんね。その分繋がりが強いとも言えるかしら。
「そんな大事にする余裕があるの?」
セレネ達だって忙しいでしょうに。
「必要な事よ。なんとかするわ」
「今回はシイナの力を使ってもいいよ。どうせ秘密裏のやつでしょ。正式に国交を結ぶわけでもないんだから大目に見るよ」
あら。ニクスったら寛大ね。
「悩みどころね。いえ、やっぱりやめておくわ。それより家族の力を借りましょう。皆にも協力してもらうわ」
あくまで大規模なホームパーティーにしておくのね。
「なら家で催してもいいんじゃない? 教会を空けるのだって手間でしょ? モントニャハトの視察はお城が出来てからでもいいんだし。なんなら希望者をそっちに連れて行ってもいいかもね」
「……そうね。そういう感じでいきましょうか」
うちはうちであまり見せられないけどね。それでもカノンのお母様とは約束しちゃったから多少は見ていただくつもりではいるけど。とは言えうちはニクス世界の一般的な生活よりずっと高度な家具家電が揃っているのだ。それにお父様方とは言え、男性諸君に我が家を練り歩いてもらうのも抵抗がある。そっちは自宅を見せられない代わりにモントニャハトの方を見せてお茶を濁すとしよう。女性チームは我が家の見学で、男性チームはモントニャハトの視察って事で。
「すぐ計画を立てるわ。カノン達も呼んで深層に行くわよ」
セレネの音頭でホームパーティー計画はトントン拍子に進行していった。それから私達は以前より更に忙しい日々を過ごしながら、計画の準備を進めていった。
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「ご無沙汰しております。お義母様」
「とんでもありません。こんなに早く約束を果たして頂けるとは驚きました。ありがとうございます。アルカさん」
よかった。喜んでもらえて。
それから他のご家族にも挨拶をして回った。今回は本当に大勢の方達が参加してくれた。
カノンの実家からもご両親の他に現国王のお祖父様だけでなく、宰相さんまで来てくれている。それにカノンやアリア達の従姉妹にあたる少女も一人同行している。名前はシャンテちゃんというそうだ。何故面識も無い子がついてきたのかはぶっちゃけ謎だ。ナンデカナァ。
『あの国王の企みよ。きっと』
私もそう思う。カノンすら聞いていなかったみたいだし。
幸いな事に? 面識が無いのはその子一人だけだった。他に巧み事を仕込んできた人はいなさそうだ。たぶん。
ムスペルからはツムギと両親である王様と王妃様、マノンの父であるジュスタン第二王子、アニエスの母である第一王女のアレクシアさん。そしてエリスの母であり、クレアの姉でもあるマリアお義姉ちゃんが来てくれた。
そして人魚の国からも、レーネのご両親と妹のセーレが来てくれた。セシルが一時的に人化の魔法を使ったようだ。正直わざわざそこまでして? と思わなくもない。折角なら裏の目的とか無い楽しいだけの地上旅行をプレゼントしたかったところだ。こちらのお父様とお母様にも随分とお世話になったもの。幸いご本人達は特に気にせずとても喜んでくれているので何よりだ。
最後にもう一人、エルフの国からセルマさんが顔を出してくれた。エルフの国として正式にモントニャハトと国交を結んでくださるそうだ。実はこれが話のキッカケとなるように仕組まれていたりもする。
エルフは今まで人間のどの国とも国交を結ぶ事はしてこなかった。それはニクス世界の国の指導者達にとっては半ば常識として知られていた事だ。エルフ達は度々人里を訪れては多大な成果を残してきた。私達程ではないだろうけれど、エルフ達もまた大きな力を持つ者達として注目されていたのだ。
まあつまりは仕掛け人側としての参加なのだ。エルフ達との繋がりはそれそのものが呼び水となってくれる筈だ。
セルマさんはまだまだ国内も慌ただしいだろうに、二つ返事で承諾してくれたそうだ。しかも正式に国内で話を通した上でこの場に臨んでくれているとの事だ。話を聞いた時には本当に驚いた。セルマさんの行動やエルフ達の決断だけでなく、ルネルがそれを承認した事が何よりの驚きだったかもしれない。
本当はリオシア王国からも呼ぼうとしていたのだけど、諸々の事情を鑑みて今回は見送る事になった。モントニャハトの事を考えるなら仲良くしておくに越したことはないのだけど、そもそも私自身は会った事も無いのだ。
それにあの国は私個人に対して友好的なわけでもない。テオちゃんの両親だけでなく、ルイザのお父さんであるストラトス侯爵も我が家にお呼びするのは少々憚られる。
グリアのお母様くらいならと思ったけれど、あまり面倒な事に巻き込んでしまうのも気が引ける。クリスタお義母様には何か別の機会に遊びに来てもらう事にしよう。
そんなこんなで開催されたホームパーティ件、国際会議は恙無く進行していった。