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43-18.未練たらたら

「ノアちゃんがまさかこんな事言い出すなんて」


「そんなに意外でしたか?」


「意外と言うか、想定外と言うか。そもそも選択肢に上がりもしなかったよ」


 ノアちゃんが希望したのはショッピングだ。わざわざ現代日本の店舗風に再現したアパレルショップで買い物デートをしたいと言い出したのだ。


 どうやらオシャレに目覚めたらしい。よく見たら昔プレゼントした髪飾りも付けていた。私とした事が全然気が付かなかった。



「最近になって嵌りだしたのよね。無理やりメイド服を着させられた影響かしら」


「言ってもこの半年は別に何もしてなかったじゃん」


 何時も通りの動きやすい格好だったじゃん。



「アルカの前ではね。私と二人きりの時は色々見せびらかしてきてたわよ」


「ちょっと。なんで除け者にするのよ」


 二人きりでそんな楽しい事してたなんて。普通にショックだ。



「覚悟が足りなかったのです。許してください」


 しかたないなぁ。もう。



「代わりに今日はいっぱい付き合ってもらうからね」


「望むところです♪」



 ノアちゃんは私とセレネが選んだ服を片っ端から着てくれた。以前は絶対着てくれなかったような可愛い系もだ。最初は僅かに照れも隠しきれていなかったが、次第にそれも無くなっていった。途中から始まったセレネの悪ふざけにもノリノリで付き合っていたくらいだ。



「にゃぁ~ん♪」


「「ぐぼぁっ!!」」


 くっ! なんてダメージなの!? ノアちゃんそれはダメよ! 強すぎるわ! 白スク猫手袋なんて! しかも自前の耳と尻尾に合ってるし! 流石シーちゃんのアイリス! なんでもありね!



「やりすぎたわね……」


「今更大げさすぎませんか? ぶっちゃけ似たような格好だけなら何度もさせられた事ありますよね?」


「ノアちゃんがノリノリで着てくれる事に意味があるの! 夜の営みの中で恥ずかしがって着てくれるのも勿論最高だけども!」


「そういう事言われるとなんだか恥ずかしくなるじゃないですか。もう着替えますよ。今回は普通の服にしてください。こういうのもまた着てあげますから」


「ちょっと待ちなさい」


 セレネがパチンと指を鳴らすと周囲の光景が一瞬で切り替わった。どう見ても寝室です。我慢できなくなったわけね。



「もう。まだ遊んでいる最中じゃないですか。もう少し我慢してくださいよ」


「語尾は『にゃ』よ」


「してくださいにゃ」


 ノアちゃんも結局ノリノリだ。




----------------------




「もう一年経つよね。なんだか物足りないかも」


「延長しましょう。取り敢えずもう一年よ」


「本気ですか? 何時もやることが無いとボヤいているじゃないですか。大人しくここらで切り上げておきましょうよ」


「「嫌」」


「まったく。どうせ明日には後悔しますよ」


「それでもいいの~」


「取り敢えず結婚記念日のやり直しだけ済ませておきませんか?」


「ダメよ。そんなの。理由が無くなっちゃうじゃない」


「もうあべこべですね。最初からなのかもですが」


 それはそう。



「それで? 今日は何をするのですか?」


「「……」」


「ちょっと。無言で乳繰り合わないでください。もうずっとそんなんばっかりじゃないですか。たまには外に出て遊びましょうよ」


「じゃあ何するの? もう大体やり尽くしたよ?」


「だから終わりにしましょうと言ってるんじゃないですか」


「それは嫌なの~」


「わがままですね。また何時でも思いついた時に来ればいいじゃないですか」


「違うのよ。理由があるから羽目を外せるの。私達だって向こうでは自制してたんだから」


「理由なんていくらでも作ればいいでしょう。無理に続けるような事ではない筈です」


「わかってないわね。滅多な事で外さないから意味があるのよ。代わりに一度外したならとことんまで満喫しなきゃ」


「もう満喫したから飽きてるんじゃないですか」


「それはただ刺激が足りないだけだもん」


「けれどお外は刺激が多すぎるのよ。休む暇も無いじゃない」


「もしかして出るのが億劫になっているのですか?」


「……そんなんじゃないわ」


「隠してもわかりますよ。私にセレネの真意が見抜けないわけないでしょう」


「はいはい。もうそれでいいから」


「ルビィが恋しくはないのですか? 私はリヴィに会いたいです」


「子供達を出すのはズルいわ」


「実はセレネが隠れてルビィのNPCを出しているのだって知っているのですよ?」


「ちょっと。それは黙ってなさいよ」


「素直になったらどうです?」


「私は素直よ。素直にまだ続けたいって言ってるの。アルカが私とノアだけを見てくれる生活をやめたいなんて思えるわけないじゃない」


「セレネぇ~」


「よしよし。良い子よアルカ。そうやって私にしがみついていなさい」


「まったく。後で後悔しても知りませんからね」


「その時は慰めなさいよ」


「はいはい。好きにしてください」




----------------------




「「もう一年」」


「ダメです! これで何度目だと思ってるんですか!」


「「今度こそ最後だから」」


「そんなの皆と一年過ごしてからでもいいじゃないですか」


「「でも……」」


「でももだってもありませんってば。次の結婚記念日まで待てないなら他の祝い事の度にやればいいじゃないですか。もう直セレネの誕生日もあります。あとたった数日後にです。一度ニクス世界に戻って考えましょう。また再開したいならその時に改めて始めましょう」


「「は~い……」」


「はい。結構です。それでは最後の一日を盛大に楽しみましょう。これが本当の結婚記念日という事で」


「ニクス世界に戻りましょう。どうせなら皆にもお祝いしてもらいましょう」


「良い考えだわ。全員に休みを取らせましょう」


「それ言い出すとまた数日先になりません? 当初の予定通り私達だけで済ませるか大人しく深層で開催してみては?」


「「ダメ!」」


「もう。仕方がありませんね」

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