43-16.ヒューマンエラー
「ノアズテイルよ!」
つまりノアちゃんの尻尾よ! 遂に完成したわ!
「完璧よ。国花にしましょう」
「本気? これただの猫じゃらしでしょ?」
「違うわ! よく見て! これは小さな花の集合体なの! 月の光を蓄えて光を放つ習性まであるんだから!」
「これこそまさに求めていたものだわ!」
「「いえ~い♪」」
仲良くハイタッチ♪ きっとセレネも気に入ってくれると思ってたよ♪
「ちなみに煎じて飲めば魔力も傷もまたたく間に回復する万能草よ♪」
「それは余計ね。オミットなさい」
「そんなぁ!?」
「というか草って言っちゃってるじゃん。アルカも実は花っぽくないと思ってるんでしょ」
そんなんじゃないし!
「薬としての効能は必要ないわ。これは消費するものではなく象徴するものなの。摘み取って使おうなんて考える輩が出ては困るのよ。欲しいのはただ綺麗なだけの花よ。なんならこの国を出た途端に枯れるくらいで丁度いいわ」
「また面倒な事を。でもまあそんなに難しくはないかな? 十分な神力が無い土地では生きられないようにすればいいんだもんね」
「そうよ。そういうのよ。流石アルカね。すぐに取り掛かってくれるかしら?」
「あいあいさ~」
「あんまり変な事しないでよ? 植物の影響や生命力って馬鹿にならないんだからね?」
「あいあいさ~」
「もう。適当な返事して。セレネも全然言う事聞いてくれないし」
「どんまい♪」
「真面目にやってよ」
「まあまあ♪ 大丈夫よニクス♪ そんな心配しなくても♪ シーちゃんのシミュレーションは完璧だもの♪」
「過信しすぎだよ。アニメ制作だって没くらったじゃん」
「今度こそ大丈夫♪ でも気を付けるわ♪」
「頼むからね」
「がってん!」
「本当に大丈夫かなぁ」
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「「「「……」」」」
「?」
あれ? この娘はだぁれ?
「今の何が起きたんだ? 見間違いか? わりぃがもう一回試してみてくれねえか?」
「びっくり! お花が女の子になっちゃった!」
「神力の過剰投与が原因でしょう。と言うか誰ですか? ニクスの因子をそのまま放り込んだ粗忽者は」
「ごめんなさい……私です……」
「ここがアイリス内で良かったですね。マスター」
「はい……」
「まぁま?」
あれ? もう言葉が喋れるの?
「シーちゃん何かした?」
「……」
待って! そこで黙らないで! コンソール見ながら顔を顰めないで!
「……おめでとうございます。マスター」
「なにが!?」
「どうやら一つの生命として確立されたようです」
「またぁ!?」
「ニクス因子は危険なので封印しましょう」
「デリートよ! 残しとかないでそんなの!」
「研究は必要です。対策を講じねばニクスがアイリスを使う事は出来なくなります」
「出禁よ出禁!」
「それは可愛そうです。ニクスは使用率一位なのですから」
いつの間に!? と言うかそんな事してるから十分なデータが蓄積されちゃったんじゃ!?
「そうだよ、アルカ様。ニクス姉ちゃん今回は何も悪いことしてないよ。それよりこの娘に名前つけてあげようよ!」
くっ! エリスの言う通りね! 生み出した以上は責任を取らないと!
「あなたは今からアルルよ!」
「あうう?」
「そう! アルル!」
「あうう!」
「自棄になってる割には早かったな」
「もうちょっとしっかり考えてあげなくてよかったの? 可愛い名前だとは思うけど」
「まさかクルルに押し付けるつもりかしら?」
「私とイロハとニクスの娘って事にしましょう!」
つまりクルルの妹って事で!
「しれっと巻き込んだわね。ニクスは今回本当に何もしていないでしょうに。というか釘を差していたくらいじゃない」
「連・帯・責・任!」
「れーたーせーにー!」
「あはは♪ お上手お上手♪ 私の妹にもなってね♪」
「教育係はエリスに任せるわ!」
「あいあいさ~♪」
「あ~あ~さ~♪」
可愛い♪
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「バカじゃないの?」
「ごめんなさい……」
「なんでニクスの因子なんて放り込んだのよ?」
「それはほら……ニクスの力の残滓で……生きられるようにって……関連付けようと……思って……」
「まったく……。この花に問題は無いんでしょうね?」
「はい。徹底的に洗い直しました。確認も完璧です」
「信じるわよ。けど暫く動植物には手を出さないで。このプロジェクトは一旦凍結よ」
「はい」
「暫く様子を見てこの花に問題が無ければ再開も検討しましょう」
セレネにしては寛大な対応だ。つまり本当ならそれだけ欲しかったものがあるって事だよね……。次に頼もうと思っていた何かがあったんだよね……。足引っ張ってごめん……。
「そんな顔しなくていいわ。ありがとう。アルカ。色々と助かってる。まだまだお願いしたい事はいっぱいあるんだから今後はもう少し落ち着いて続けて頂戴。頼りにしてるわ」
「うん。頑張る」
「ええ♪ よろしくね♪」