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43-10.取り残された者達

「変わっちまったなぁ……」


 クレアが遠い目をしている。ノアちゃんの成長に驚いたようだ。まあ、うん。成長は成長だからね。預ける人間違えたかもと思わなくもないけれど。



『絶対カリアだけのせいじゃないと思うけど』


「ならイロハは私があんなにイジメっ子だって言うの?」


『ええ。自覚無いの? そんな筈ないわよね』


 イロハにだけは言われたく……いえ。ごめんちゃい。




----------------------




「追い出されてしまいました」


「今のは明らかにノアが悪いんじゃないですか」


「まあ残っていたところで得られるものも無いでしょうし。それよりどうします? また一から冒険者始めてみます?」


「素直に潜入してみては? ギルドの内情もある程度は把握できました。怪しまれる事も無いでしょう」


「いっそのことラブカ&フェリルになってみます?」


 あ、そっか。カルラとフェブリが不在だから。見た目さえ真似ちゃえば中身が誰であってもバレやしないよね。



「名案です。アルカ様はこの時の為に下地を用意してくださったのですね」


 違います。単なる思いつきです。



「単なる思いつきだと思いますが」


 流石ノアちゃん。



「とは言え二人の姿で出来る事はギルドの表側に紛れ込む事だけです。深部に潜り込むには信頼が足りません」


「どうでしょうか。今のギルドは戦力を求めていますから。二人を在野の者と判断すれば向こうから声を掛けてくるかもしれません」


「そう上手くいくでしょうか」


「ハルがドーム建設の為とか言って半端に手を付けた土地があった筈です。先ずはそこに行きましょう。幸い上物もそのままですから。王都に住まえばイオニアの内情も把握しやすい筈です。あそこはアルカ様に寛容な王が治める国です。ギルドとの関わり方も幾つか方法が考えられるかと」


「なるほど。王国を介して。『深海の神狼』のキャラクター性とは合わない気もしますが、首尾良く繋がりを持てれば手札の幅も広がりますね」


「はい。先ずは出来る事を一つずつ」


「慎重に進めていきましょう♪」




----------------------




「二人って仲良いのね」


「そうだなぁ~」


「次の娘見てみよっか」


「そうだなぁ~」


「クレアも混ざってくる?」


「いんや」


「退屈してきたんでしょ?」


「難しい話ばっかだ。私には」


「今はドンパチやる時じゃないからね。こっそり裏工作を続けるしかないのよ」


「苦手だぜ。そういのは」


「私もあんまりかも」


『なっさけないわねぇ。子供達が頑張ってくれてるのに年長者二人が揃いも揃って』


「私達の時は悪いやつを倒すだけでよかったんだもん」


『本当は良くなかったのよ。だから今大変なんじゃない。アルカがもっと味方を増やしていれば丸く収まったのよ。折角世界中を旅していたのに人見知りで皆と仲良く出来なかったせいで敵ばかり作ってしまったのでしょ』


「うぐぅ……」


「まあまあ。アルカだって反省してんだ。それくらいにしといてやれよ」


『何他人事みたいに言ってるのよ。クレアだって行く先々で暴れていただけじゃない。ギルドや他の皆の信用が無いのはあなたも同じでしょ』


「……さ~せん」


『子供達の成長に感謝する事ね。お陰でこうしてかつての大人達はのんべんだらりと過ごせているのだから』


「「ひどい……」」


 「かつて」って今はもう子供扱いって事だよね……事実かもだけどさ……ぐすん。



『それで次はどこを覗くの? ノア達の方も暫くはこれと言った進展もなさそうよ?』


「……イロハもこっち側よね。色々言っていたけれど」


「……自覚ねえのかな? 色々言いやがったくせに」


『はいはい。悪かったわね』


 自分だけ私達のお目付け役だからとか思ってるんだろうなぁ。イロハはズルいんだぁ。



『悪かったってば。ほら。切り替えなさい。子供達が働いてくれているのに何時までもムクれてる場合じゃないでしょ』


「むぅ……」


 イロハめ……。



「でも次は何処見てみよっか」


 ヴァガル組とムスペル組は心配要らないだろうし、商会組は既に撤収済みだ。学園組も一先ず騒がれてはいないそうだ。とは言えあまり刺激するべきじゃない。アリア達が過剰に反応してバレてしまっても困るし、覗くのはやめておこう。どうせ今の時間は授業受けてるだけだろうし。そっちは既に散々覗いたことあるからね。



「いっそ私世界の開拓に参加してみる?」


「エリス達の側に居てやるって手もあるぜ」


『どちらもやったらいいじゃない。時間はあるんだから』


「ならエリスも連れていきましょう。今はルネルもセフィ姉もいないから。エルヴィと一緒に子供達を見てくれているけどきっとあの娘には物足りないと思うの」


「そうかぁ? 随分楽しんでたぜ?」


「エリスがあっちを選んだらそれはそれで構わないわ。けどこっちにはクレアだっているんだし、誘ったらきっと喜んでくれるわよ」


「それもそうだな。よし! エリスの事は任せろ! 私が呼んでくるぜ!」


 クレアは言うなり飛び出して行ってしまった。クマさんパジャマで。すっかり気に入ったらしい。もう四六時中あの格好だ。あれもうパジャマじゃなくて普段着よね。可愛い。



『エリスとイリスの分も用意しておいてあげたら?』


「ナイスアイディア♪ いやでも、マリアお姉ちゃんが知ったらどう思うかしら……」


『きっと自慢するでしょうね♪』


 エリスは見せるよね。喜んで。



「まあ別にやましい事をしようってわけでもないんだけど」


 ただ単にあの格好のクレアと散々やましいことをしてしまったせいで僅かばかりの罪悪感のような抵抗があるだけで。

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