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43-8.閣議会議・続

「やっぱり人手が足りないわ」


「分かっていた事でしょ。もう少し規模を小さくしたら?」


「ダメよ。さっき説明したでしょ。必要な事なのよ」


「だからって不相応なものを求めるのは違うでしょ。未完成の管理しきれていない城のせいで見限られたら本末転倒よ。ここは手堅く済ませて後から増築したらどうかしら」


「増築案は悪くないわね。多少ハリボテでも拡張性と建造速度を優先する方針でいきましょう」


「商人を甘く見てはいけないよ。必ず見抜かれて広まるさ。やるなら徹底的にだ。薄板一枚の一夜城なんて笑いものにしかならないからね。工法を見直そう。機能美ってやつを見せつけてやろうじゃないか。規格化された木材の骨組みを取り入れてみてはどうかな。先ずは工場を用意しよう」


「木造にするの?」


 この世界のお城は石材やレンガが主流だ。勿論木材だって使われているけど、テオちゃんが指しているようなものが一般的とは思えない。ニクスが趣味で作り上げた江戸モドキな島国ならともかく、この国の人達には馴染みが無いだろう。テオちゃんが指揮するにしても末端の作業員にまで上手く作業内容が伝わりきるものだろうか。



「アルカ君の懸念は想像がつくよ。けれど心配は要らない。その為の規格化であり工場だ。工場の中身については秘匿させてもらうけどね」


「シーちゃん達の力を借りるって事?」


「あくまで加工だけね。ナノマシンで素材を作るのではなく、構成材質はそのままに形だけを変えてもらうんだ。これならニクス君も反対しないんじゃないかな?」


 ギリセーフ?



「けどそもそも流行らなかったって事は何か問題があるんじゃない? この辺りには適した材料が無いとか、気温や湿度なんかとの相性が悪いとかさ」


「なら少しだけインチキをしよう。あくまでこの地にあるものを使ってだ。シイナ君達なら出来るだろう?」


 シーちゃんが加工したものならシロアリ対策だってバッチリだろう。さぞかし特殊な木材が生まれることでしょうね。



「結局この世界に存在しない材料が誕生しちゃいそうね」


「それはそれで良いんじゃないかな。この際だから神木とでも名付けようか♪ きっと皆もありがたがってくれるよ♪」


 ギリギリかも。とは言え私としては止める理由も無い。後はニクス次第だ。



「なら工場の役割は教会で引き受けるわ。民間には資材確保と搬入出だけを任せましょう」


「それで親しみやすさは得られるのかなぁ」


「十分だよ。組み立てだけでもね。それに必要な資材は何も木材だけというわけじゃない。この町で用意できる物については極力皆に任せるつもりさ」


「洗い出しが必要ね」


「こちらが調査簿です。職人の一覧も」


 ヴィルマちゃんは出来る子だなぁ。セレネが重宝するわけだ。



「設計はどうするの? 工法をまるっきり変えちゃうんじゃ難しいんじゃない?」


「元々デザイン案程度のものだよ。速度優先さ」


 そっか。いくら優秀な人達を揃えたってこんな短期間で幾つもの完全な設計図なんて上がってくる筈も無いものね。



「シイナを出してくれる? 概算の工数を算出したいわ」


「あ、ごめん。今取り込み中なの」


「そう。ならいいわ」


 プロツーちゃんが現れた。セレネ世界から引っ張り出されたようだ。



「そう言えばこの子の名前は?」


 何時までもプロツーちゃんじゃね。シーちゃんは名付けに反対していたけど、セレネが素直に従うとも思えないし。



「マインよ」


 地雷? いや、私のものって意味か。セレネらしい。



「任せたわ」


「うん」


 容赦なく電卓代わりに使ってらっしゃる。


『そこはもっと高度な何かでしょ』


 そういう問題じゃなくて。


『本人達が納得してるんだから良いじゃない』


 別に不満があるわけじゃないけど。



「次よ」


 今度は財政に関する打ち合わせだ。お城の件は今ので決まったらしい。うちでやる会議とは大違いだ。そしてセレネはとっても慣れていらっしゃる。仕事モードのセレネもなんだかいいものね。



「気を抜かないでアルカ」


「はい」


 いかんいかん。足を引っ張っちゃ台無しだ。私も真剣に参加するとしよう。



「さっきも言った通り先ずは行商人達の確保が急務よ。それからこの町の産業も発展させなくちゃならないわ」


「特産品みたいなものってあるの?」


「無いわよ。今のところは」


 マズイじゃん。



「でもこの町結構オシャレだよね。服飾品なんかも力を入れてるしお菓子も美味しいし」


「ええ。今までは観光地としての価値を付加してきたの。これからもそこは大きな収入源となるでしょう。けれど当面はその勢いも衰えるでしょうね。情勢が安定するまでは誰も近づきたがらないわ」


「そもそも観光産業をメインにするには立地が悪くない?」


 王都からは遠いし。他に隣国も無いし。元々リオシアの隅っこだし。



「それでも十分な利益を上げていたのよ。今まではね。お貴族様の保養地としては最適だったの」


 なるほど。メインターゲットがそこだからこそ大幅な収益減が確定しちゃってるのか。



「安全性も宣伝していかないといけないのね」


 今一番難しいやつ。



「それにはリオシアとの友好関係を維持するのが一番よ。つまりリオシアにとって有益な何かを産出する必要があるの」


 WinWinな商売が目標なわけだ。私達が頼る形ではなく。



「例えば?」


 流石に例の神木を輸出する許可は得られないだろう。ニクスが反対する筈だ。



「手っ取り早いのは魔道具よね。あれならそう数は必要ないわ」


 信じられない程高価だもんね。それに希少性も高い。商人だけでなく貴族達だってこぞって買い付けに来るだろう。例え国から睨まれたとしても。



「けれど危険だ。リオシアだけでなくギルドをも必要以上に刺激しかねない」


「それにもっと一般の人達が携われるものがいいわ。魔道具職人を育成したってなれるのは極限られた者だけだもの」


 そもそも爺さんだってそこまでは協力してくれないだろうなぁ。私としても頼みづらいし。と言うかニクスも止めるだろう。あの国の二の舞いになりかねない。あとやり過ぎるとあの地下の町の優位性を潰しかねない。あそこだって魔道具職人が稼ぎ頭だし。それを私達が潰しちゃったら色々台無しだ。



「そういう時こそ知識チートの出番じゃない?」


「手始めに娯楽品の類も生産したいところだけど職人の多くには城造りに協力してもらわないとだわ。何か他のも考えておきましょう」


 はて。どんなものがあるやら。



「蚕でも育ててみる?」


「今はもっと短期的な案がほしいわ」


「アイドル」


「二人はコレットから引き剥がせないじゃない。それに宣伝も必要よ。順序が逆ね」


「神の御業」


「お布施をたんまり頂ければどんな治療も請け負いましょうって? うちはそんなアコギな商売してないの」


 聖女としての矜持が許さないらしい。この世界に他の宗教とか存在しない筈だから比較される事も無いだろうけど。それにセレネだって聖女の立場を利用して散々お偉方相手の営業活動は行っていたでしょうに。



「もう他には無いのかしら?」


 ぐぬぬ……。

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