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43-6.それぞれの活動

「ルネル」


「……バレてしまったようじゃな」


「ごめんね」


「いいや。わしの方こそすまんかった」


「ううん。何か手伝える事はある?」


「いいや。レルネは十分に備えておった。慌てるような事なんぞ何一つありはせん」


「そっか……」


「アルカは帰れ。ここにいてはならん」


「私から話すべきだと思うの」


「ダメじゃ。そんな事せんでも皆わかっておる。しかし顔を見れば意に反した感情も湧き出よう。皆の為じゃ。どうかここは遠慮しておくれ」


「それで納得出来るの?」


「わしが信じられんか?」


「……わかったわ」


「すまんな。わしはもう暫く残る事にする」


「うん。待ってるから」


「うむ。必ず帰るとも。しょげとらんで気楽に待っておれ」


「うん。セルマさんにもよろしくね」


「うむ」




----------------------




『レルネの孫だからセルマなのね』


 急に何よ。


『エルフは血縁者に似た音の名前を付けるって風習の話よ』


 ……そうね。


『案外とセフィも長老の血筋なのかもね』


 ……かもね。それがどうしたの?


『セルマの話を聞いた時は余裕が無かったじゃない』


 今ならあるように見える?


『実際アルカは暇でしょ』


 ……。


『そうやって落ち込むくらいならシイナ達に付き合えばいいじゃない』


 ……気分じゃない。


『折角ハルだって帰ってきたのに』


 イロハだけでも行ってくれば?


『私はアルカ係よ』


 ……ありがと。



「アルカ」


 イロハが出てきた。そのまま抱きしめられた。



「もう一度ルネルの所へ行ってみる?」


「ダメに決まってるじゃん」


「最初から歓迎されない事はわかっていたでしょう? ルネルに追い返されたからってイジケることないじゃない」


「……そんなんじゃない」


「それでも成果は得られたわ。少なくともルネルは塞ぎ込んだりしていない。エルフ達の為に国を支えているだけ。いずれ必ず帰ってくるわ。もう何も心配しなくて良いの」


「うん……」


「シイナの事はハルとミユキに任せておけばいいわ」


「やっぱり側に居ないとかも。万が一があっても困るし」


 普段私の中に住んでいるお姉ちゃんが未来ミーちゃんであることは内緒だから。チグサ達だったら違和感に気付くかもしれない。


「大丈夫よ。シイナがいるわ。それにもしもの時はミーちゃんだって言い張ればいいのだもの。内緒にしなきゃいけないからってアルカの中に引き籠もり続けるわけにもいかないじゃない」


「そうだね」


「融合も待ちね。アルカの出番はシイナの調整が済んでからよ」


「付き合えって言ったのはイロハじゃん」


「義務感で付き合う必要は無いわ。一人でいるのがしんどいなら合流すれば良い」


「イロハがいるもん」


「私だけで満足してもらえるなら光栄ね♪」


「うん……」


「もう♪ 甘えん坊ね♪」


 やわやわ……。



「お。アルカ。戻ってたんだな」


「クレア? なんでここに?」


「なんでってなんだよ。ちょっと外してただけじゃねえか」


 え? そうだったの?



「なんだ? ヴァガルに行ったと思ったのか?」


 なんだかんだ手伝うことになったのかと思った。いつの間にかいなくなっちゃったし。



「タマキが私役だとよ♪ 後で覗いてみようぜ♪」


 そっか。結局クレアも。



「なんだか元気ねえな」


「ううん。大丈夫。イロハが慰めてくれたから」


 クレアが来た途端に私の中に戻っちゃったけど。



「それで? お前はどうすんだ?」


「どうって? 何もしないで大人しくしてるけど」


「それでいいのか? 折角皆楽しそうにやってんだ。お前も覗いてみたらいいじゃねえか」


「クレアは何処が見たいの?」


「なら最初はアルカディアの様子を見てみようぜ♪」


「クレアまでその名前で呼ぶの?」


「良いじゃねえか♪ あそこはもうアルカの国なんだし♪」


「私のじゃないわ。ニクスやテオちゃんの国よ」


「そのテオ本人がアルカの為にって頑張ってくれてんじゃねえか。そもそも私達のもんはみんなお前のもんだ。こんなん今更言うまでもねえだろ?」


『変われば変わるものね。あのクレアがこんなデレッデレになっちゃって』


「……ふふ」


「よし。少しは元気になったな。なら早速映像出してくれ」


 そう言えばハルちゃんもシーちゃんもいないんだった。



「……イロハ出来る?」


「はいはい。任せなさい」


 また出てきてくれた。



「ありがと。イロハ」


「どういたしまして♪」




----------------------




 アルカディアは元々リオシア王国の一都市に過ぎない。勿論領都とかでもない。立派な大聖堂はあるがお城は無い。


 ただ一応は教会の事を気にしていたのか、或いはセレネ達が頑張ったお陰か、いつの間にかこの辺りを仕切っていた領主の手を離れてリオシア王家の直轄領になっていた。


 今回私達は王家から直接巻き上げた形になる。もっと正確に言うと姫であったテオちゃんが独立する餞別に切り分けて与えてくれたのだ。太っ腹。勿論これは単なる口実だ。そんな簡単に通る筈もない。何せリオシアの属国というわけでもないのだ。きっとリオシアのお偉方も必死に言い訳を捏ねくり回したのだろう。やはり私関連のゴタゴタに巻き込まれるのは御免だったらしい。



「ダメだ。地味すぎる。次」


 テオちゃんは部下の人達が差し出すお城の設計図を手に取ってはバッサリと切り捨てていく。どうやら建築に関しての知識も持ち合わせているようだ。


 にしてもこんな事してて良いのかしら? ニクスの神託から然程時間も経っていないのに。



「公王陛下。お時間です」


「こっちに通して」


「かしこまりました」


 秘書さんや部下さん達が退室して暫くするとセレネが現れた。しかも見慣れない少女を連れている。十代後半くらいだ。見た目はセレネより年上だ。


 セレネまでこっちに来るなんて。教会の方はどうなっているのかしら。まさかニクスに丸投げ? 今頃沢山の人に囲まれてあわあわしてない?



「アルカ」


 セレネにはあっさりと覗きがばれてしまった。たぶんアウラが伝えたのだろう。カメラ目線で手を振っている。どうやら来いと言っているようだ。



『行ってもいいの?』


「この部屋で打ち合わせをするだけよ。いらっしゃい」


 セレネが良いと言うなら。



「紹介するわ。ヴィルマよ。前に伝えたでしょ。私の片腕なの」


「え? ……ああ。そういえば随分と前に言ってたわね」


 そんな子がいるとだけは聞いていた。いずれ家族に引き込むつもりだとも。



「中々機会が無かったものね。ヴィルマ。こちらはアルカ。あら。クレアも一緒だったのね」


「はじめまして。アルカさん。それからいらっしゃい。クレアちゃん♪」


「毎度毎度子供扱いしやがって。私は歳上だぞ?」


 ヴィルマちゃんには色々打ち明けているようだ。クレアも少女モードの方で普通に接触していたらしい。



「はじめまして。ヴィルマさん。セレネが何時もお世話になっています。挨拶が遅れてごめんなさい。それに色々と巻き込んでしまったわよね」


「気なんか遣わないでいいわよ。こっちも言った筈よ。いずれヴィルマの事は引き込むつもりだったんだもの」


 まったくセレネは……。



「大丈夫ですよ♪ アルカさん♪ もうとっくに驚き慣れていますから♪」


 ほんとすんません。

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