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43-2.採用面接

「やあ♪ アルカ君♪ こうして会える日を待ち望んでいたよ♪」


 あれ? 美人ってそっち?


 リリカに連れられて我が家の一室を訪れたのは中性的な美人さんだった。ウェーブが掛かった短めのミディアムヘアに襟足だけを長く伸ばして垂らしている。服装は僅かに少年っぽさを感じさせる特徴的な燕尾服(?)だ。なんかチョコレート工場でも案内してくれそうな雰囲気ね。


 お姫様って言うより劇団のスターみたい。ともすれば軽薄な印象すら受けかねない。しかし本人が放つ高貴さが軽薄さを見事に打ち消している。結果的に丁度良い塩梅の親しみやすさを演出している。これは子供達にも人気が出るわけだ。むしろそこを狙ってこの服装をチョイスしたのかも。ちょっと本気すぎない?



「ふふ♪ どうやら夢中になってくれたようだね♪」


「あ、ごめんなさい。つい見惚れちゃって」


「おや♪ ふふふ♪ 嬉しい事言ってくれるじゃないか♪ そしてこれは噂に違わぬ玄人っぷりだね♪ そんな風に平然と返されたのは初めてだよ♪」


 よっぽど自分の容姿に自信があるようだ。まあ大抵の女性諸君はイチコロだろう。正直第二王子とかよりよっぽどイケメンな王子様にも見えるし。こんな濃ゆい姫様がいるとは知らなかった。正直本気で驚いた。ルカが褒めるのも納得だ。



「ええ。きっと貴方も知っての通りよ。アリア達が随分とお世話になっていたみたいだし」


 色々聞いているのだろう。内容も想像に難くない。



「ふふふ♪」


 意味深に笑うわね。別にアリア達が浮気したとかは疑ってないわよ。それだけは絶対にあり得ないもの。



「早速だけど本日お呼びした経緯を説明させてもらうわね」


「出来れば自己紹介くらいはさせて頂けないかな♪」


「あ……。そうよね。うっかりしていたわ。ごめんなさい」


「良かった♪ 少しは動揺してくれていたようだね♪」


 まあそうね。認めるわ。私としたことが飲まれかけていたわ。例えアリア達からお互いの事を聞いていたって自己紹介くらいするべきよね。先に面接だってしなきゃだし。焦らず落ち着いて話を進めよう。



「僕はテオドラ。気軽にテオちゃんと呼んでおくれ♪」


 そこは君じゃないんだ。本人的に色々拘りがあるのね。


 それに名乗るのは名前だけなのか。国と関係無い立場としてここに来たと言いたいのだろう。これはどっちかしら? 国を巻き込むなという牽制? それともあくまで個人的な興味で私達の誘いに乗ったと示したいだけかしら。



「私はアルカ。今はただのアルカ」


「元冒険者のアルカ君。君のスピーチは聴いていたよ」


「そう。なら話は早いわね。私達は貴方に事後処理の協力をお願いしたいの」


「勿論協力するとも♪ でなければここには来ないさ♪」


 軽いなぁ。



「本当に良いの? 聴いていたと言うならもう一つの」


「悪しき魔女アルカ君♪ むしろ僕が強く興味を引かれたのはそっちの君の方さ♪」


「お伽噺が好きなの?」


「見ての通りね♪」


「弟子はとらないわよ?」


「これでも中身は夢見る乙女なのさ♪」


「勿論攫ってあげるのは構わないわ。貴方が私の眼鏡に適うなら」


「条件はなんだい?」


「私だけを愛する事。浮気は厳禁よ」


「おかしいな? 聴いていた話と違うようだ」


「貴方だけの特別待遇よ。感謝して頂戴」


「あらら? どうやら僕は警戒されているようだね?」


「アリア達が目的なら帰りなさい」


「流石にそこまで厚顔無恥ではないさ♪」


「けれど貴方の好みは幼い少年少女なのでしょう?」


「むむ? なにやら誤解があるようだね」


「違うの? 誓ってアリア達にやましい感情は抱いていない?」


「無論だとも。子供とは愛でるものであって手折るものではないのだよ♪」


 どっかで聞いたような言葉だ。まさか異世界転生者? なわけないけど。



「なら私を愛せる?」


「勿論だとも♪」


「軽すぎるわ」


「心外だね」


「でも丁度良いかも。いっぱい嘘を付く事になるのだし」


「それは王としてかい? それとも世界に対して?」


「リリカ達はそこまで話したの?」


「いいや。勿論彼女らは話していないよ。けれどその程度推察出来なければリリカ君が声をかけてくる事はなかったさ」


「そうね。その通りね。想像通りよ。私達が貴方に頼みたいのは国家の独立よ。そして世界の敵となってもらうわ」


「覚悟の上だ。あの放送を聴いたのだから当然の話しだね」


「なんでそこまで?」


「簡単な話だ♪ 大きな事を成したいのさ♪ 僕は目立ちたがりやだからね♪」


「その割には名前も聞かなかったけど」


「君が興味を持たなかっただけでは?」


 それはそう。



「う~ん。やっぱり勘違いしているようだね。仕方ない。ここは正直に打ち明けるとしよう。こればかりはいかな僕とて恥ずかしくもあるのだけどね。ごほん。実を言うと僕って前々から君の大ファンなのさ♪」


「見え透いたお世辞は要らないわ」


「いやいや。これは本心さ。考えてもみなよ? 僕より五つも下の少女が世界中で人々を救ってくんだぜ♪ そんなのもう心踊るに決まってるじゃないか♪ まさにお伽噺の主人公だ♪ その主人公が悪の魔女を名乗り、今度は僕を主人公に任命したんだ♪ こんなの乗らないわけがないだろう♪ 年甲斐もなく燥いじゃうよね♪」


 あれ? まさかこれって?



「この際だ♪ 言ってしまおう♪ あれは初恋と言っても過言じゃない♪ 僕は君に恋い焦がれていたんだ♪」


 セレネやトニアと同じタイプかぁ……。そしてテオドラの性癖ロリコンの原因は……。



「私と貴方は同い年よ」


「ああ、うん。そうらしいね。聞いたよ。アリア君から根掘り葉掘りね♪」


 ……これは何か余計な事も聞いていそうね。



「……もう少し何かリアクションしてくれても良くない?」


 寂しそう。一世一代の告白が空振ったらそうなるよね。



「悪いけど貴方で三人目だから」


「罪作りな女だねぇ~」


 遠い目になっちゃった。



「イロハ。最終チェック」


『がってん』


「え? なに?」


 流石にイロハの存在までは知らなかったのね。悪いけど記憶を覗かせてもらうわ。これ以上ゆっくり面接してる時間も無いもの。今の話しが全て本当なら採用するとしましょう。



『心配要らないわ。と言うかアルカの想像なんて軽くぶっちぎる本気っぷりよ』


「……ならまあ、良いでしょう。採用よ」


「なんか思ってたのと違う……」


 仕方ないわね。



「えっ!? え!? えぇぇぇえええええ!!!?!?」


 早速契約を交わして不老魔法をかけると、十二歳くらいの少女に変化したテオドラが驚きの叫びを上げた。



「魔女との契約よ。対価は生涯私ただ一人を愛する事。約束を違える事は決して許さないわ」


「こんなの聞いてないよ!?」


「良いじゃない。そっちの方が可愛いわよ。と言うか正直痛々しいのよ。元の姿のテオちゃんって」


「え……。えぇ……」


 そりゃアラサーボクっ娘少年風コスはいくらこの世界でだってねぇ。本人の見た目が若々しくて様になっているからギリギリセーフかもだけど、同い年と知っている私としてはちょっと。うん。


『流石に容赦が無さすぎるのではありませんか?』


 正直危険だと思うの。テオちゃん野放しにしておくのは。


『まあそうね。そのうち流されるでしょうね。テオにとっては理想郷だもの』


 やっぱりそっちも本気なんじゃん。と言うか私のせいか。


『そうよ。テオの宝物はアルカのブロマイドよ』


 ブロマイド? 私が爺さんにお願いするまでこの世界にカメラなんか無かったじゃん。


『正確には似顔絵ね。かなり精巧なやつよ。ギルドから横流ししてもらっていたみたい』


 え? なにそれ? 私聞いてないよ?


『成長に合わせて何枚も刷られているわ』


 えぇ……。


『テオも結構な数を持っているわよ』


 もう聞きたくなぁ~い~。

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