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42-45.家族会議・続々続

 やっぱりダメだよねぇ……。何か他の方法は無いかしら。


 うっかり流されそうになってしまったけれど、今回ばかりは身代わりなんてマズイと思うのだ。


 あの教会とそれを中心として興す国とは、言わば悪の組織の総本山と取られかねない立ち位置だ。少なくともギルドがそのように広める可能性は高いのだ。何せ私を庇う為の盾だもの。どう言い繕ったってそれが揺るがぬ真実なんだから。



「なら私がリオシアの王子を婿にすれば満足?」


「意地悪言わないでよ。そんなの認めるわけ無いでしょ」


 セレネだって全部わかってるくせに。



「いっそ今のまま好き勝手して向こうから切り捨ててくれるのを待つのはどうかしら?」


 リオシアのことなんて無視してニクスから一方的に声明を出せばいい。やっぱり敵意を受け止めるのは私達の誰かであるべきだ。ニクスにならそんな役割だって任せられる。私の大切なニクスは傷つくだろうけれど、それでも殆ど見ず知らずの誰かに押し付けるよりはずっといい筈だ。



「バカを言うのはやめたまえ。それこそ兵を送られても文句は言えんのだ」


「そんなわけないじゃない。先ずは話し合いで解決しようとする筈よ」


 それ以外に選択肢なんて無い。私は力を示してしまった。真っ向から抗おうと考える者なんている筈が無い。



「その結果どうなる? リオシアが大人しく神に傅くと思っているのか? それこそありえん話だ。その逆を求めるに決まっておろう。神とその使徒は単なる危険物に成り下がるのだ。極めて強力な爆弾だ。だが爆弾を抱え込むのにも相応の益はある。逆に手に入らぬならば徹底抗戦しかあり得まい。万が一隣国に流れれば。ならばいっそと。そう考える筈だ。君の故郷と同じだ。君自身が世界すら滅ぼし得る兵器と化したのだ。それを手にした者は世界を手にしたも同然なのだ。しかし君は一人だけだ。対抗手段なんぞ存在せん。冷戦にはならん。一方的な搾取が始まるだけだ。君にその意思が無くとも皆はそう考えるのだ。致命的な終わりを迎える前に抗おうとするだろう。何を犠牲にしてもここで終わらせねばと奮い立つだろう。君が決別を突きつければそれしか道は残らないのだ。誰かが犠牲にならねばならん。だが誰でもいいわけではない。神が降臨すべき場所は決まっている。フロル君でもツムギ君でもカノン君でもダメなのだ。説得力が必要だ。我々には戦友が必要だ。リオシアには後ろ盾になってもらわねばならん。見てみぬふりをしてもらわねばならん。ならばリオシアの王族以外に適任なんぞおらんだろう」


 ……私が甘いのだろうか。人々は本当にグリアの言うように考えるのだろうか。私達が強力な爆弾だと言うなら私達の言う事を聞いてくれる筈なんじゃ……ううん。そんな考え方がダメなんだって事はわかってる。一度でも脅しちゃったらお終いだ。皆が戸惑っている内に平和な解決策を見つけなきゃいけない。ネズミだって猫を噛むのだ。敵わないと分かっていても挑んでくる事はあり得るのだ。或いは私達の力をこの期に及んで真に受けない人たちだっているんだ。世界の繋がりは強くない。この世界には誰もが使える電話やネットがあるわけでもない。どころかラジオもテレビも無いのだ。私の流した放送が世界中に向けられたものだと理解出来るのはギルドだけだ。ギルドは私達以外で唯一世界に情報をバラ撒けるのだ。ギルドの好きなよう世界を扇動出来るのだ。私達だけでは負けてしまう。信用が足りていない。フロルやツムギが頑張ってくれたとしても国中の人たちが信じてくれる筈もない。世界中の人達が敵に回るのは時間の問題だ。ニクスの言葉が力を失うのはきっとすぐだ。全部わかってる。



「いいか? リオシアの王女には事前に教会ごとあの地を切り取ってもらう。リオシア本国にはその裏につけたのだと思わせる。その前提があれば火種となり得るあの地を手放すだろう。厄介払いでもするように安く扱ってくれる筈だ。ギルドが動き出す前である今ならば間に合うのだ。リオシアの連中がアルカ君の力を完全に理解するのはまだ先だ。大多数の者達は性懲りも無くまた騒ぎを起こそうとしているとしか認識しておらんのだ。それこそが付け入る隙になる。一部の賢明な者達であれば我々の意図を理解する。国を憎しみから遠ざけられるならと話に乗ってくれるだろう。独立も狂った姫様の暴走で押し通せる。かなり強引な手段ではあるが実現する為の筋道は立ててある。後は君次第だ。君が口説き落とすのだ。我らと共に地獄を歩めと彼女を唆すのだ。それがアルカ君の責任だ。嫌だとゴネた所で対案なんぞ出て来はせん。覚悟を決めろ。だが心配するな。アルカ君は一人じゃない。君の家族は全員が君と道行きを共にする覚悟を持っている。どんな地獄へだろうと付き従う。君は自信を持って先頭を歩き続けろ。迷わず皆を導き続けろ。出来るな? アルカ君」


「……うん」


「よろしい。ならば教会の方針はこれで決まりだ。次はヴァガルの件を話し合おう。まだまだ話し合う事は沢山あるぞ。しっかりしたまえ。顔を上げろ。笑っていろ。私達の為に」


「うん」


「うむ。良い顔だ」


「ありがと。グリア」


「うむ」

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