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42-44.家族会議・続々

「いっそ教会は手放さない?」


 ニクス? いったい何を言ってるの?



「私の力はお母様がくれたので十分すぎる程だから。正直もう信仰システム自体が必要ないんだよね」


 ああ。そりゃそうか。最初はニクスの力を取り戻すのが目的だったんだ。なんかもうすっかり忘れてたけど。


 イオスの存在はある意味チートみたいなものだ。本来であればニクスは世界を守り育てる事で自らもまたレベルを上げていく筈だったのだ。それがゲームマスターであるイオスと直接繋がってしまった事で、強制的に上限レベルまで引き上げられたようなものなのだ。勿論この世界はゲームなんかじゃないけど神にだって成長は必要だ。そうでなければ邪神や偽神、或いは他の何かに容易く滅ぼされてしまうのだから。



「もう一つの計画を諦めるつもりは無いわ」


 セレネは反対のようだ。これもまた当然の反応よね。セレネは元々ニクスの為に活動を始めたわけでもないんだし。



「アルカはアルカなんだから拘らなくたっていいんだよ」


「以前と言っている事が違うわ」


「とっくにフェーズは進んでるんだ。何時までも最初の目標に拘り続けるのは間違ってる」


「ならアルカが変わってしまったらどうするの? ニクスはいいわよね。どこであろうとついていけるのだから。けれど私は? 他の皆は? 私達はどれだけ肉体的に変わったって心は人のままなのよ? アルカとは違うの。いつか追いつけなくなる時がくるの。だから私はアルカを繋ぎ止めたいの。例えそれが足を引っ張る行為だとしても諦めたりしないわ」


「その時は皆で神になっちゃおうよ。お母様がいればそんな夢だって叶うんだよ」


「夢ですって? いったい何寝ぼけた事を言っているの? イオスとアルカの力を自分のものだとでも思っているの? 全てあなたが言い出した事よ? なのにこれまで頑張ってきた全てを否定するって言うの? 母親の助力に浮かれて自らの役割すら投げ出すっていうの? 何千年も一人で頑張ってきたんじゃなかったの?」


「セレネ。それくらいにしてください。ニクスだってわかっています。今のだって本気で言ったのではありません。本当に最後の手段である筈です。セレネを安心させようとしたに過ぎません。ですよね? ニクス?」


「……ごめん。私が間違ってた。セレネが真剣に悩んでいるのに余計な事を言った」


「私も言い過ぎたわ。ごめんなさい」


「二人ともよく出来ました。それでは話を戻しましょう」


「なんかノアが生意気」


「このまま会議を主導するつもりかしら? 何時かのように皆が好き勝手話だしてイジケちゃうんじゃない?」


 本当に何時の話をしているの? あの頃のノアちゃんも可愛かったけど。



「アルカ? 何故私を膝に乗せるのです? まさかセレネの与太話を本気にしたのですか?」


「ううん。ただの精神安定剤」


「そうですか。ならばお好きにどうぞ」


「不公平だわ」


「セレネもいらっしゃい」


「私も!」


「はいはい。ニクスもどうぞ」


 膝の上にノアちゃん、両脇にセレネとニクスを侍らせて皆に向き直る。



「真面目に話をする気が無いのかしら?」


 カノンがイジケてる。仕方ない。後で交代するとしよう。今は分体とか出してる気分じゃないし。



「後でねカノン。それで教会の件だけど、いっそニクスをもっと表に出しちゃうのはどうかしら。私を使徒だと公言して人々の目をニクスに集めるの。今回の件は全てニクスの指示だったと言ってね」


「まさかアルカからそんな提案が出るとは思わなかったわ」


「セレネは反対?」


「いいえ。むしろそれしかないと思っているわ。グリアさんともその方向性で話していたの」


「やむをえまい。事ここに至って神が引き籠もり続けるわけにはいかん。世界に問題が起きたのだ。声明を出さねばな。ここで神ニクスが沈黙を続ければ戻りつつあった信仰もやがては失われるだろう」


「教会の権威が強まるわね。リオシアへの根回しが必要かしら」


「当然だな。であるならいっそ今回の件を口実に切り取りを進めるのも手だ」


 なるほど。リオシアに直接交渉を持ちかけるのか。或いは裏側から工作して切り離すように仕向けるか。世界の敵となった私達とも縁の深い土地だ。厄介に感じる可能性は高い。



「リリカはどう思う?」


「話は通せるわ。切り取り自体はそう難しくないと思う。この状況ならかえって派手に動く事だって出来るもの。堂々とアルカ様が関係してるって話しちゃってもいいわけだしね。切り取り自体は元々そのつもりで動いていたのだもの。今回の騒動も絡めれば一気に動き出せるのは間違いないわ」


 なら後は誰を代表者とするかね。



「誰の国にするのが適切だと思う?」


「先ず神ニクスはありえん」


 そうね。ある意味今回の騒動の原因としても扱われるんだもの。それだけ反発も大きくなる筈よ。それに神が直接統治する国なんて世界中から注目を集めすぎてしまうわ。それでは後々動きづらくなる筈。ここは神を封じる側の立場として国を興すべきよね。出来ればリオシアに近い立場だと話しが通りやすいのだけど。とは言え流石にルイザにやらせるのもね。本人はやる気満々で了承しそうだけど。



「リオシア王家から一人拐かしてこよう」


 遂にグリアまで当然のように言い出したわね。それだけ切羽詰まった事態ではあるんだけども。



「心当たりがいるの?」


「いるわ。気の良いお姫様よ。既に接触は済んでいるわ。彼女を仲間に加えて公王に仕立て上げましょう」


 流石リリカ。仕事が早い。



「公王? リオシアとの繋がりも残しておくの?」


「そうとも限らん。リオシア側の考え次第だ。なにぶん時間が無いからな。調整は都度行いながらとなるだろう」


 なるへそ。グリアの叡智を持ってしても見通しきれないわけね。そりゃそうか。ニクス降臨の前に教会を切り取りたいのだし。国取りに時間をかけ過ぎればニクスの方が手遅れになってしまう。かと言って教会がリオシア所属のままでは動きづらいのも間違いない。



「細かいことは任せておきなさい。アルカ様達が決断したなら後の事は私達が責任を持って成し遂げてみせるわ!」


 リリカは相変わらず自信満々ね。心強いわ。



「一応他の案も考えてみましょう。そのお姫様を利用しない手もあるかもしれないわ」


 今の状況で私達の仲間に加わってくれるかも疑問だし。いくらリリカ達が根回ししてくれていたってこればかりはね。



「他の手なんてあるとすれば私かクレアが王になる事くらいじゃないかしら?」


「セレネ達もダメよ。それではニクスが支配するのと変わらないわ」


「当然だがアルカ君も論外だ」


 わかってる。



「となるとグリアを代表にするのはどうかしら? 別に王政じゃなくても良いんだし」


「構造を変えている余裕はない。少なくとも段階を分けるべきだ」


「それもそうよね……」


「諦めなさい。これは必要な事よ」


「そもそもアルカは何故反対しているのです?」


「要は私達の身代わりに表立ってもらうってわけでしょ?」


「故にこそリオシア王家の者にしか務まらぬのだ」


「それはわかるけど……」


「心配要らないわ! 彼女なら!」


 そう? リリカがそこまで推すなら……。

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