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42-39.微妙な距離感

「ハルちゃんに会いたい」


「しつこいわよ。何度言っても会えないものは会えないの」


 わかってるけどさ……。



「もう出ようよ」


 十分長く過ごしたのに全然許可が降りない。イロハ達的にはまだ時間が足りていないらしい。解せぬ。



「私達では代わりになりませんか?」


「うん。無理。ツクヨミはツクヨミだもの」


 ツクヨミはツクヨミで大切なのだ。ハルちゃんの変わりになれば済む話じゃない。



「マスターがこうして愚痴をこぼすのは何時もの事です。どうかお気を確かに。ツクヨミ」


「大丈夫です。理解していますから」


「そうでした。ツクヨミはマスターの一部でしたね」


「シーちゃんもいけるんじゃない? お姉ちゃん達だって問題無いみたいだし」


 未来ちゃんの状態も安定している。融合も出来る筈だ。



「ハルが方法を持ち帰るわ。あの子はきっとその為に残ってくれたのよ」


 なるへそ。ハルちゃんは勉強熱心だ。


 それにしても未来ちゃんってハルちゃんの事になると知ったような事を言うよね。避けられていたなんて自供した割にはハルちゃんの事が気になって仕方ないようだ。



「お姉ちゃんってハルちゃんの事好きだよね? どうして避けられたりなんてしちゃったのかしら」


「だからでしょ。きっとミライもしつこくしすぎたのよ」


「そうですね。どのような時間軸であろうとミユキの本質は変わらないのでしょう」


「ミユキは凝り性ですから。マスターも経験がある筈です」


 なるへそ。私に対してしたようにか。ハルちゃんも私なんだし考えてみれば当然か。当然か?



「ハルちゃん部屋でも作ってドン引きさせちゃった?」


「……ノーコメント」


 それはもう自白してるようなものなんよ。でもハルちゃんがその程度で避けるかな? もしかしてまだ何かやらかしてる?



「私のグッズは作られなかったのですか?」


 シーちゃんはそっちが気になるのか。一応シーちゃんが未来ミーちゃんの師匠だもんね。



「ノーコメント」


 これは作ってない方っぽい。お姉ちゃんは一途だからね。融合によって私と一人になったハルちゃん以外は推さなかったのかもしれない。或いは単純に先生役を務めたシーちゃんには素直に熱中出来なかったのかもしれない。



「ハルの精巧なコピーでも作ったんじゃないかしら? シイナがナノマシンでプロトを作ったみたいに」


「……ねえ、もうこの話やめましょうよ」


 お姉ちゃんはわかりやすいなぁ。



「ハルちゃんってお人形さんみたいに可愛いもんね♪」


 無理もない♪ 自分だけのハルちゃんを作って人に言えない事をしたくなるのも当然だ♪ 私にはわかる♪



「黙っていればね」


「声も可愛いじゃない。ところでこれって自画自賛になるのかしら?」


「知らないわよ。と言うかそこは内面を褒めなさいよ。何よ声って。確かに可愛いけど」


 イロハもメロメロだ♪



「ハルの性格も可愛らしいものではありませんか」


「そうです。マスターは言うまでもなかっただけです。そしてイロハは照れているだけです」


 ここにも強火のファン達がいた。ハルちゃんファンクラブでも作っちゃう?



「私のいた世界のハルは、と言うより皆はもっと殺伐としていたわ」


「そうなの? そもそもどうやってそっちのお姉ちゃんは異世界転生なんてしちゃったの? 私達の時とは全然違うんでしょ?」


 そもそも私達のミーちゃんは未来ミーちゃんと偽神の暗躍によってこの世界に呼び寄せられたのだ。あれが初めてなのだとしたら矛盾が生じてしまう。まさにタイムパラドックスだ。つまり最初のミーちゃんとは違う経緯で呼び出された筈なのだ。



「知らない方がいいわ」


 これも話す気はないと。未来ちゃんがそんなだから何時まで経っても外に出してもらえないのになぁ。



「お忘れですかマスター? 未来ミーちゃんには私の仕込みが通用しました。少なくとも今目の前に存在するこの個体については発生経緯が同じであった筈です」


 ああそっか。仮想電脳世界のアイリスに特殊なログを残すやつか。シーちゃんが未来ミーちゃんの身体を構築する時に特殊な仕掛けを施したのよね。



「それは根拠として弱いわね」


 イロハがまた何かもったいぶっている。気付いた事があるなら積極的に共有してほしいものだ。



「要は自覚の問題よ。シイナは仕掛けを施した事で仕掛けの存在に気付いただけなの」


 つまり違う理由によって未来ミーちゃんの時間軸に存在したシーちゃんも何かしらの理由でサインを残していたと?



「それはあり得ません。それ以前に取得したログには存在しなかったのです。あの瞬間に間違いなく過去は変わっていたのです」


 どういうこっちゃ? なんだかややこしくなってきた?



「過去は変わらないわ。シイナは気が付かなかっただけ」


「違います! 私は見落としなどしていません! 今となってはその証拠もありませんが! 本当なのです!」


「待って! 待って! 落ち着いて! 喧嘩しないで!」


 シーちゃんがこんな風に感情的になるなんて珍しい。いったいどうしちゃったのかしら?



「お姉ちゃんはどう思う?」


「どちらも事実よ。そしてどちらも間違ってる」


 また謎掛けみたいな。でも事実? 正解じゃなくて?



「そう。前提が間違っているのね。つまりミライが意図的に仕組んだ事だったわけね」


「そうよ。ダメ元だったけど」


「自分の正体を明かすために?」


「ええ。私はシイナの全てを知り尽くしているわ。シイナのくれた力を以ってすれば造作もなかったの」


 そうやって時間差で記録を書き換えたのか。或いは気付かれないように居残っていたのかも。あの時逃げたと見せかけてまだ側にいたのかも。



「なんでそんな事を? 行く先々でやってるの?」


「まあね」


 これもまともに答える気が無さそうだ。今のは私の質問のしかたも悪かったかもだけど。何にせよ未来ちゃんは全然お姉ちゃんぽくないかも。たぶん私に対する強い好意が無いからだ。私はやっぱり未来ちゃんにとっての小春じゃないって事だ。道理でイロハ達が外に出してくれないわけだ。外に出たければ、未来ちゃんと仲良くなりたければどうにかしてこの距離を詰めるしかない。ハルちゃんに対しての好意は薄っすら見えているのだし、私に対しては意図的に押し殺しているだけって可能性もある。それにもしかしたら自罰的になっているのもあるのかも。何にせよまだまだ先は長そうだ。

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