42-34.決着
未来ミーちゃんが加わった事でイオス達は更に多くの力を引き出し始めた。どうやらお姉ちゃんの器としての許容量が倍以上に膨れ上がったようだ。先程邪神から引き剥がした外付けの力とは違うイオス達本来の力がどんどん増していく。
付け焼き刃ではない最上位の神々の力は次第に偽神モドキを圧倒し始めた。
幾つもの時間軸を渡り歩いてきた未来ミーちゃんには、お姉ちゃんとミーちゃんを合わせても到底届かぬ程の素養があったらしい。偽神ももったいない事をしたものだ。未来ミーちゃんなら自身に匹敵する存在にだってなり得たものを。
同時に偽神の強さの秘密も少しだけ見えてきたわね。もしかしたら私もかも。転移者の持つ器は世界を渡る事で強く大きくなっていくのかもしれない。時間軸超えはより大きな影響を齎すのだろう。元がニクス世界の生まれであるルーシィと比較してみればより詳細な情報を得られるかもしれない。
「勝ちましたね。結局何がなんだかわかりませんでしたが」
ノアちゃんの言う通りだ。お姉ちゃんに討ち果たされた偽神モドキはそのままお姉ちゃんが生やした大蛇の口に飲み込まれた。もはや打つ手はあるまい。お姉ちゃんは未だ警戒を解いていないようだが、今度こそ本当に終わったのだろう。少なくとも今はもう嫌な予感はしない。
終わってみればあっさりとしたものだった。勿論私達視点の話であって、お姉ちゃん達的には激戦だったのだろう。イオス達が追加した力も既に多くが消費されているようだ。これはまた回復に時間がかかりそうだ。邪神も偽神ももう暫くは大人しくしていてくれないだろうか。
「偽神モドキは完全に討ち果たされました」
シーちゃんのお墨付きも出た。
それから程なくしてお姉ちゃん達も変化を解いてシーちゃん船を体外に解き放った。
「お姉ちゃん!!」
「「やったわ! 小春!」」
再びナノマシンの身体に戻ったミーちゃんと少女に戻ったお姉ちゃんを纏めて抱き締める。
「お姉ちゃん! お姉ちゃん! お姉ちゃん!」
「「小春♪」」
イオス達はまだ暫く出てこれないようだ。そしてもう一人のミーちゃんも。
『ねえ? 私の身体は?』
「新しいのを作ってください」
『……そうよね』
物わかりが良くて何よりだ。
「……」
取り敢えずは出てきたものの、未来ミーちゃんは私達にどんな顔を向けていいかわからないと言った感じでモジモジしている。それを見かねたノアちゃんが質問を投げかけた。
「なんとお呼びすればいいでしょう」
もう三人目だものね。しかも今はお姉ちゃんとミーちゃんだってだいぶあやふやなのに。
「三人纏めてお姉ちゃんよ」
「それとは別に個別の呼び名も決めておきません?」
「ミーちゃん、ユーちゃん、キーちゃん」
「安直ですね。ですがわかりやすいかもしれません」
「なら私ミーちゃんね♪」
初代ミーちゃんはそのままミーちゃんに決定した。
「もっと分かりやすい分け方があると思うの」
お姉ちゃんは反対のようだ。
「小春達にとって私達って、それぞれ未来、過去、現代にわけられると思うの」
まあそれは確かに。
過去は最初に家族に加わった六百年もののお姉ちゃんだ。現代は私と同じ時間軸同じ世界で生まれ育ったミーちゃん。そして未来がそのまんま未来ミーちゃんだ。
「ミライお姉ちゃん、カコお姉ちゃん、イマお姉ちゃん」
試しに呼んでみたけど……なんかしっくりこないなぁ。
「微妙ですね。別の人みたいです」
やっぱりノアちゃんもそう思う?
ルビィとルーシィくらいの良い感じのないかしら。
「ミユキ、ニユキ、イチユキ」
「深雪、深夏、深秋」
「それならいっそ深雪、夏海、紅葉とかどうです?」
「モミジはもういるじゃない」
イロちゃんズに。
「そうでした」
まあでも方向性は悪くないかも?
「深雪、小雪、六花」
雪染めか。悪くない。
「深雪、美冬、未春」
「それも良いわね」
「そろそろハルは多すぎて混乱しません?」
言う程かな? 小春、ハル、千春、ハルカの四人だけよ?
まあでも、私の方なのかお姉ちゃんの方なのかは混乱するかも?
「むしろ名前はつけないでおきましょう。その為の融合だもの。皆私よ。深雪かお姉ちゃんって呼んで頂戴」
「「え~~」」
「そう。どうしてもつけたいのね。なら好きになさいな」
何もつけないのもそれはそれで違うのよ。私としては三人いる事も忘れたくないし。
「じゃあ取り敢えず深雪、美冬、未春で如何です?」
「どれが誰なの?」
「ミーちゃんが深雪で、お姉さんが美冬、未来ミーちゃんが未春にしましょう」
「そこはお姉ちゃんが深雪じゃない?」
「ならそれで」
「う~ん……」
あれこれ考えてはみたけれど、正直どのお姉ちゃんにも深雪の名前を捨ててほしくない。お父さんとお母さんに貰った大切な名前だもの。これ以上親不孝はしたくないしお姉ちゃんにもさせたくない。てことで名前じゃなくて渾名くらいにしておくべきなのよね。
「やっぱミーちゃん、ユーちゃん、キーちゃんにしましょ」
「もういいわ。それで」
今度はお姉ちゃんも反対しないようだ。