9-3.仲良し三人組
セレネの要望で私達は模擬戦を披露する事になった。
教会の中庭でノアちゃんと向かい合う。
もう何度こうしてきたのか数え切れない。
初めて戯れに立ち会った時が嘘のように、
眼の前で構えるノアちゃんには隙が見つからない。
開始の合図と共に、ノアちゃんは一瞬で私の前に現れる。
私達は互いの手の内を知り尽くしている。
これもよくあるパターンだ。
あえて正面から突っ込んできて、
私に迎撃の姿勢をとらせた上で、
直ぐ様、死角に回り込むのだ。
わかっていても迎撃するしかない。
今までなら。
私はノアちゃんの背後に瞬間転移して、
魔法で生み出した闇の槍を突き刺す。
瞬間転移はようやく使えるようになったばかりだ。
ノアちゃんにも秘密にしていたので、少しは意表をつけた。
けれど、私の瞬間転移ではルネルほどの精度では無いので、
ノアちゃんは驚きつつも直ぐ様反応して距離を取る。
私は槍を弓に変換して闇の矢を放っていく。
わたしに弓術の才能は無いけど、
魔法の矢なら能力で命中の補助が出来るので百発百中だ。
ノアちゃんは手に持った短剣で的確に矢を弾いていく。
そのままノアちゃんをその場に縫い付けて追い詰めようとするが、
急激にノアちゃんの気配が視えなくなり、視界からも姿を消す。
流石、ルネルにすら視づらいと言われたほどだ。
気配の消し方が天才的だ。
私は上空に瞬間転移して、
警戒する方向を下方に集中してノアちゃんを探そうとする。
その瞬間、ノアちゃんに叩き落されてしまう。
ギリギリで防御は間に合ったので決着にはならなかった。
私の動きを読んでいたノアちゃんは既に上空に飛び上がっていたようだ。
今のノアちゃんは神力を足場みたいにして空中で方向転換までしてくる。
やろうと思えば擬似的に飛ぶことすら出来るだろう。
私は地面に落ちる前にまた転移して、
攻撃の瞬間に出現したノアちゃんの気配を元に更に上空に移動する。
あまり高く飛びすぎるとセレネが観戦出来ないかもしれない。
今のところは必勝パターンである、超高度からの狙撃は今回は無しだ。
普段は飛ぼうと思っても叩き落されてしまい、
なかなか空には上がらせてもらえない。
今後は瞬間転移を使えるようになったことで少しはやりやすくなるだろう。
まあ、ノアちゃんならすぐに対応できるようになるのだろうけど。
ノアちゃんの力を視ながら爆撃魔法で広範囲に弾幕を張っていく。
ノアちゃんが地上に降りたのを確認して、
今度はまた矢を放っていく。
「ア~ル~カ~!!!!
ストップ!!!ストップ~~~!!!!!」
突然、セレネの叫び声が響く。
私とノアちゃんはセレネの前に並ぶ。
「二人共やりすぎよ!!
すっごい強くなったのはよくわかったけど、
ここは町の中なの!あんなバンバンやってたら皆怖がっちゃうわ!」
「バンバンやってたのはアルカ・・・」
「ノア!!」
「はい。すみません・・・」
「アルカも!」
「すみません・・・」
「ごめんね。私が見たいと頼んだのだけど、
ここで今の二人に全力を出されたら困ってしまうわ。
でも本当に二人共強くなったのね!
私驚いてしまったわ!」
セレネはそう言いながら私達を抱きしめる。
これでお叱りはおしまいなのだろう。
上空とはいえ、流石に町中で爆撃魔法を使うのはやりすぎだった。
つい我を忘れて白熱してしまった・・・
「ノアちゃんごめんね。
私がつい調子に乗って」
「いえ、私も楽しんでいたので同罪です。
まさか、ルネルさんの瞬間転移まで使うとは。
またアルカに引き離されてしまいました」
「そうは言いつつノアちゃんすぐに反応していたじゃない。
私の転移はルネル程の精度じゃないものね。
まだまだ精進しなきゃだわ」
「ルネルさんと比べるのは無茶ですよ。
やろうと思えば相手に何も気付かせずに転移させられるんですよ?
あれはもう理不尽です」
「二人共!何時まで私を放おっておくつもりなの!」
「「ごめんなさい」」
その後、私はグリアからも叱られた。
身を隠しているのに何をやっているんだと。
気を取り直して三人で部屋に戻る。
久しぶりにオセロがやりたいらしい。
数分後、成長したセレネにボコボコにされて、
凹んでしまったノアちゃんの姿があった。