04-25.反撃準備④
「ウイルスにはウイルスで対抗したどうかしら?」
「邪神の内側から崩すのですか? 確かに敵が途方もなく巨大な存在であるなら有効かもしれません」
「そうは言っても私達は邪神の事を何も知らないわ」
「抹殺、或いは弱体化が必要よ。その具体的な方法を考えなくちゃね」
何時かのように、と言うか何時ものように、ベットで四人転がりながら思いつきを口にしてみる。
「邪神の端末。あれを解析すればどうにかならない?」
「手がかりはそれしかないでしょうしね」
「シイナちゃんはどう?」
「何か思いつきそう?」
『今のところはなんとも。イオス達にすら邪神の力は解析しきれていないのです』
そうでしょうね。それが出来るならいくらでも時間稼ぎが出来る筈だもの。或いは逆侵蝕だって。
「結局力尽くで払いのけるしかないのかしら」
「それにはアルカの器を広げるかお姉さんに頑張ってもらうしかありません」
「私達は後者を希望しているのだけど」
「小春がね」
ぐぬぬ。
「ならば融合の安全性を高める事に注力してみては?」
「簡単に言わないでよノアちゃん。私とハルちゃんがどれだけ苦労して編み出したと思ってるのよ」
「だからって諦めるのですか? いっそアルカも内側の一人として参加してみては?」
「良いわねそれ」
「でも流石に恥ずかしいわ」
もう。ミーちゃんたら。そんな事言ってる場合じゃないでしょうに。
『アルカごと紛れ込むのは良い考えよ。融合の制御だけでなく、将来それ以上の力を持つことになるアルカには良い経験になるもの』
それもわからないでもないけど。
「神話の中にヒントは無い?」
「ヨルムンガンドとか?」
「それは?」
「全ての神を殺しうる毒持つ竜よ」
「ウロボロスの原型でもあるみたい。だから無限の成長をも可能としていて、神話の中では世界を締め上げられる程に大きな蛇として描かれているわ」
「ぴったりね。私がそいつの力を手に入れればいいのよ」
『どうやって?』
さあ?
「一先ず一度戻ってイオスに聞いてみましょうか。出来るなら先ずは捕獲してみましょう。何かの参考になるかもしれません」
「邪神の前に先ずヨルムンガンドに勝てないんじゃない?」
「そもそも邪神に取り込まれてるかもしれないわね」
「ダメよ。お姉ちゃん達。そういう事は後で考えましょう」
ネガティブ発言禁止よ。
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「私の管轄じゃないからわからないわ」
そりゃそうか。
「詳しいとしたらトールでしょう。素直に教えてくれるといいのですが」
テルスが問い合わせてくれているようだ。テルスって顔が広いのね。まさかそっちにも知り合いがいるなんて。そういうところは私達の世界の神話とは全然違うのね。ガイアとトールが知り合いなんてあり得ないし。
「幼体で良ければとのことです」
取り敢えず研究材料としては十分だろう。
「対価は?」
「要らないそうです。ミドガルズオルムは厄介者なので」
ミド? ああ。ヨルムンガンドの別名か。
つまりあれかな? こっちで面倒見てくれるなら好きに連れて行けってことかな?
「どこに取りに行けばいいのかしら?」
「もうすぐ届きます」
テルスの言う通り、どこからともなく小さな子ヘビが飛ばされてきた。なんか雷を纏ってる。もしかしてかの有名なトールハンマーで打ち上げられたのかしら? あとここ私世界なんだけど? 世界の壁とかもお構いなしなのね。
「シーちゃん確保」
「イエス、マスター」
よし。もう一度深層に戻りましょう。
「扱いには気をつけなさいよ。そんな形をしていても中身は世界を喰らう怪物よ。それは子孫としての子供なんじゃなくて、滅ぼされる度にその幼体からやり直しているだけよ」
復活系の不老不死か。厄介な。けどありがたい。その力が手に入るならだけど。
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「どない?」
「さっぱり」
「難航しております」
「力の質が違いすぎるわ」
「取り込むどころか解析に時間を要します。マスター」
まあ、まだまだ始めたばかりだもの。ゆっくりやって頂戴な。
「ねえ、あの蛇の力は私が取り込むべきだと思うの」
「意地悪言わないで。お姉ちゃん」
「違うわ。そうじゃなくて」
「小春はイオスの系譜でしょう? あの蛇の力は異質過ぎるわ。小春はやっぱり対偽神の切り札だから。対邪神は私に任せてくれないかしら?」
「……イロハ」
「わかったわ。私は融合の研究ね」
「「ありがとう♪ 小春♪」」
「備えるだけよ。お姉ちゃん達の融合を認めたわけじゃないわ」
もしもの時の為だ。それだけだ。
「私にも何か出来る事はありますか?」
「ノアちゃんは私を励ます係」
「大事なお役目ですね♪」
ほんとにね。