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42-22.反撃準備①

「様子はどう? シーちゃん」


「変わりありません。マスター」


「そう」


 邪神の端末は既に金属生命体から引き剥がしてイオスの生み出した新たな器に押し込められている。その上でシーちゃんの作り上げた特別製の透明な檻の中で隔離中だ。それをイオス、ラフマ、テルスが片時も離れず見張っており、邪神本体へ干渉する手段を模索している。



「イオスの力を以ってしても太刀打ちできないの?」


「無理ね。それが出来るならとっくに排除しているわ」


 そうよね。



「ラフマはどう?」


「お手上げよ!」


 諦めが早い。



「テルスは何か他に知っている事はあるかしら?」


「いいえ。先程話した以上の事は何も。ですがそれをより詳しく説明する事ならば出来ます。今なら多少余裕も出来たのでしょう? 先程の補足説明をさせて頂いても?」


「お願いするわ。あ、でもその前に」


 お姉ちゃんとミーちゃんを抱き寄せてからテルスの話を聞いてみた。



「外なる神とは先にも言った通り宇宙人です。ただここで言う宇宙とは小春さん達がよく知るものとは異なります。世界の外を指す場所の事です。私達は外界と呼んでいます」


 そのまんまね。



「世界は常に重なりあっています。同時にこの世全ての世界が隣接しています。外界はその外に存在します。世界の間には存在しません。あくまで全ての世界の外側です」


 その辺は未だによくわからないのよね。でも多分今回の件とそこまで大きな関係があるわけでも無いと思うのよね。



「小春さん達の住まうこの世界、そしてそれ以外のいくつもの世界。それらを纏めて複層世界と呼称しましょう」


 その言い方は本来別の呼び方があるのかしら? あくまでこの場の説明に都合が良いようにそう呼ぶだけで。



「本来神々が住まう世界とは、複層世界の中で世界同士の重なり合った空間に存在するのです。原初神とは複層世界そのものであり、幾つもの複層世界を内包する時間すらも超越した存在です」


 以前イオスは細胞に例えたわよね。複層世界が一つの細胞で、それが時間軸の数だけ無数に存在してるって。そんな集合体こそが原初神の真の正体だって。でも原初神と同等の存在は他にも存在していて、それらもまたこの複層世界の内の一つに過ぎない世界にも端末を置いているのだと。まさしくラフマのように。その辺りもよくわからない。原初神もまた何か他の存在と重なり合っているのかもしれない。世界と同じように。或いはモイラとノルンやガイアとテルスみたいに。



「規模としては間違いなく原初神の方が上なのです。ですがそれでも世界の内側の存在でしかありません。原初神から見た邪神がどれだけちっぽけな存在であっても、それだけで私達の優位性は得られません」


 結局原初神の本体は何も出来ないのよね。起こっている争いが小さすぎて認識すら出来ないんだもの。



「お母様が複層世界を細胞と仮定されたならば、差し詰め邪神はウイルスです。我々細胞の立場としては何としても排除するしかありません。敗北し、感染すれば、抗体によって細胞ごと、つまりはこの時間軸ごと破壊されてしまうのです」


 助けてくれないどころか後ろから刺してくるわけか。本体からすれば当然の対応なのだろうけど。ウイルスが全身に回っても困るのだし。だから患部を破棄するのは当然だ。


 けれど細胞の一つに住まう程度の私達からしたらとんでもなく迷惑だ。そんな簡単に切り捨てないでほしいものだ。私達は免疫機能に見限られる前に邪神を打ち倒す、或いは追い払う必要があるわけだ。少なくとも既に体内に侵入された分については。



「つまり邪神の本体っていうのは事実上討伐不可能なのね。私達に出来るのはここに送り込まれた分を排除する事だけ。また何時襲われるかもわからない。そういう事よね?」


「はい。その通りです。先程はウイルスとお伝えしましたが邪神は内と外でも繋がっています。その部分を強調して例えるなら毒虫と呼ぶべきかもしれません。私達内側の者に出来るのはあくまで体内に侵入してきた毒と毒針を消しさる事だけです。肌に張り付く虫を取り除く事は出来ません」


 本当に酷い話だ。さっさと原初神の本体が叩き潰してくれたらいいのに。



「この端末は毒に過ぎないわけね。なら毒針の居場所を特定してそれを砕かないとね」


「居場所については気にしなくていいわ。私が連れて行ってあげる」


 イオスにはそれがわかるのか。なら今悩んでいるのは砕き方の方なのね。



「イオスや私の本体にとって大したことない奴でも、今ここにいる私達からしたらとんでもねえ化け物よね。規模だけなら偽神なんて目じゃねえわよ。なにせ奴らは一刺しで幾つもの時間軸さいぼうを破壊できちゃうんだから」


 なるほど。そりゃ無理だ。むしろ私達の時間軸が押しつぶされていなくて何よりね。



「まあ先程のはあくまで例えですから。流石にそこまで絶望的でもありませんよ」


「とは言え打って出る方法が無いのも事実よ。純粋に火力が足りないわ」


「イオスでも?」


「全然気にしてなかったけど、こうなると偽神に力を奪われたのは痛手だったわね。まだ完全に力が戻ったとは言えないもの。全然気にしてないけど」


 根に持ってるなぁ。当たり前だけど。



「確かにお母様が全盛であれば可能性も……」


「ならラフマの力を完全に取り戻させちゃえば? イオスに匹敵する存在なんでしょう?」


「いいの!?」


「良いわけ無いでしょ。ダメよ小春。そんな事したらあなた破裂しちゃうわよ?」


「え゛?」


「だってラフマとはもうパスを繋いじゃってるじゃない」


 ああ。そりゃそうか。今のラフマの体に流れる力をイオスが制御してくれているから私は無事でいられるんだもんね。



「なら破棄する?」


「出来るわけないでしょ。神との契約をなんだと思ってるのよ」


 そうなの? その辺はイオスが何時の間にかやってくれてたから詳しい事は知らないのよね。



『がったいせんし』


「イオスとラフマで?」


『テルスも』


 悪くないかも。邪神もなんかいっぱい神様取り込んでるみたいだし。魔人◯ウ対ベ◯ットみたいな感じで。


「面白い案だけど器を用意出来るかしら?」


 そのまんまガッチャンコは出来ないんだね。


『マキナはどう?』


「無理よ。今でも限界いっぱい引き伸ばしてるんですもの。あれ以上詰め込んだらマキナだって破裂しちゃうわ」


 マキナは私達の力を結集したみたいな存在なんだけど。あの娘でも器になり得ないなら私達に用意できるものは無くない?


 でもとにかくこの方向性で考えてみるしかないか。

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