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9-1.教会の居候

私はグリアに話をつけて、教会に数日滞在させてもらう事にした。



グリアの宣言した通り、

既に二人で殆どの権限を掌握していた。


これは忙しくて当然だ。

しかもここから勇者や聖女、

魔王についての正しい知識を広げていくのだと言う。


セレネを旗頭に教会の改革は着々と進んでいるようだ。


一度は教会の聖女を辞めたとは言え、

上層部が消滅して混沌としていた教会からするなら、

聖女がトップに立ってまとめてくれるのは都合が良かったのだろうか。


まあ、それで困る人も少なくなかったのだろうけど。

その辺りはグリアが頑張ったのだろう。

怖くて詳しくは聞けないけれど。




「ア~ル~カ~!!!!!」


私達が転移すると早速セレネが飛び込んできた。


一周年記念パーティーからも既に半年近い。

その間、小型転移門で頻繁にお話はしていたけれど、

殆ど直接会うことは出来なかった。



まあ、私は気になって殆ど毎日覗いていたのだけど。

皆には内緒だぜ!

流石にドン引きされそうだから、

ノアちゃんにだって内緒だぜ!



私もセレネもノアちゃんも久しぶりの再会に喜びあう。



「セレネまた大きくなったわね!」


子供の成長は早い。

ノアちゃんとは常に一緒にいるせいか、

あまり実感しにくいが、

久々に近距離で触れあうセレネは全然違って見える。



「私ももう11歳ですもの!」


誕生日はセレネの方が少し早いので、

ノアちゃんはまだギリギリ10歳だ。


私と出会った時は二人共9歳だった。

ここからまだまだ成長していくのだろう。



「今年はお祝い出来なくてごめんね」


「そんな!私が忙しくて断ってしまったのだわ!

アルカが謝る事なんてないじゃない!」


「代わりでは無いけれど、暫くお邪魔させて貰うから、

少しでも一緒にいましょうね」


「うん!」



セレネは挨拶もそこそこに戻っていった。

私達との時間を作るために少しでも早く仕事を終わらせるつもりらしい。



「この部屋は自由に使ってくれたまえ」


グリアに案内された部屋で暫く寝泊まりする事になる。



「アルカ君。当然わかっているとは思うが、

君は外出禁止だ。もうほとぼりも冷めつつあるとはいえ、

この国の貴族に目をつけられれば何があるかもわからない」



魔王討伐の際に私が魔王復活の危険を証言したが、

その後私達は魔王が行動を起こす前に討伐した。


その結果、魔王の脅威をこの国が知ることは出来なかった。

なんせ、前に魔王がいたのは六百年も前だ。


しかもおそらくその時も殆ど暴れていないのではないだろうか。

魔王から受けた印象や、ルネルの話を聞く限りそんな気がする。


それでもあの魔王が最初の魔王というわけではない。

具体的な被害は知られていなくとも、

魔王という存在だけはおとぎ話の類として認知されていた。


結局無闇に国を騒がせたとして、この国の一部の貴族達から

やり玉に上げられそうになっていた。


流石にもう諦めただろうと思っていたのだが、

どうやらそうでもないようだ。



「わかったわ。

どうしても出かけたい時は転移門で別の国に行くから大丈夫よ」


「そうしてくれたまえ」


その後、グリアにルネルを紹介すると、

グリアのテンションが急沸騰した。

なんかほあーって叫んでる。


千年以上生きて人間の魔法にまで長けたエルフは

どんな書物よりもグリアの知識欲を満たしてくれるだろう。


お婆ちゃん。新しい孫よ。

可愛がってあげてね。


見た目だけは幼女二人だけどな!

二人共、私より年上だけどな!



私は二人を放置して、

収納空間から荷物を取り出していく。


滞在先で毎回私の収納空間から出すのでは手間になる。

ノアちゃんは私に頼まないと取り出せないからだ。

なので、最初に必要な物は出しておくことにしている。


もしかしたらルネルなら私の収納から勝手に取り出すことも出来るかもしれない。

収納空間は単に空間の壁の向こう側を勝手に利用しているだけで、私の個人的な領域ではないのだ。



「流石に無理じゃ。

知覚できない異空間の座標なんぞいちいち憶えておれん。

やるにしても労力に見合わんじゃろう。

家に置いて転移で回収すれば済む話じゃ。

それはお主だけの特別な力があってこそじゃ」


らしい。

ルネルにも出来ないことがあったとは。

というかこの言い回しだとやろうと思えば出来るのかもしれない。

さすルネ。



私の能力を有効に利用するヒントはこのあたりにもあるのだろうか。

細かい調整を能力任せに出来るのって他には何があるかしら。


まあ、最近よく使っている、

人の魔法を見て覚えるという使い方も十分便利だ。

力を視る事でこの精度も格段に向上した。


ルネルも私の能力を知って、

いくつかの魔法を見せてくれた。

お陰でここ最近で一気に手札が増えた。

あとは自分の物にするための修練を続けよう。


そろそろまたノアちゃんに置いてかれそうだからね・・・


ノアちゃんの成長速度が速すぎる!

これが子供ぱわーか!

ノアちゃんが努力家なのも、

戦闘大好きなのもあるだろうけど。


ノアちゃんの成長は嬉しいのだけど、

最近はそれだけではなく焦りも湧いてくる。


ノアちゃんにおいていかれるのが辛い。

私も負けないように頑張ろう。






「アルカ!お風呂に入りたい!」


夜になって、仕事を終えたセレネは私に飛びついてそう言った。


私は渋るノアちゃんも連れて自宅の風呂に転移する。


最近せっかく近づかずに済んでいたのに、

強制連行されてノアちゃんは涙目だ。


エルフの国にお風呂なんて無かったものね。


ノアちゃん、水浴びは平気なのに、

なんでお風呂は嫌いなんだろう。

猫としての本能だろうか。


流石に可哀想だけれど、

体の作りは人間なのだから、

猫と同じように扱うわけにはいかない。


日本ならお風呂嫌いの子供だってそう珍しいわけでもないのだし。


無理やり自分を騙している感も無くはないけれど、

とにかく、ノアちゃんも一緒に入れてしまおう。



私達は三人で仲良く体と心を癒やした。


一人だけそんな事は思って無いけれど、

なんだかんだ付き合ってくれた。


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