42-7.隠密部隊
「クレア。起きて。クレア。悪戯しちゃうわよ?」
「う~ん……むにゃむにゃ」
なるほど。そうくるか。くふふ♪
『ダメよ。アルカ。今日はまだ忙しいんだから。クレアも何時までも寝たフリしてないで起きなさい』
ちくせう。
「……なんだ。私に用か?」
「これから私世界に行くから。クレアもどうかしら?」
「ふぁ~~~。勿論行くぞ。私はお前の見張りだからな」
何が見張りよ。ずっと寝てるじゃない。
「じゃあ早速行きましょう」
「あ! おいちょっ!」
ふっふっふ♪ 今日は一日そのクマさんパジャマで過ごしてもらいましょう♪
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「えっと、先ずはツクちゃんズの方からね」
「既に集めております♪ どうぞこちらへアルカ様♪」
「ありがとう♪ ミヤコ♪」
「はい♪」
「ったく。毎度毎度イチャつきやがって」
「クレアも可愛いわ♪ ほら♪ 手を繋いで行きましょ♪」
「やだよ。そういうんは趣味じゃねえんだ」
「もう。我儘ね」
「アルカ様♪」
「ミヤコ♪」
ミヤコと手を繋いで目的の部屋に向かう。既に数十名程のフィリアスが集められているそうだ。その子達の中からツクちゃんズ採用オーディションが開かれる。何時もならミヤコやシーちゃんが予め人数を絞ってくれるのだけど、今回は折角だからとツクヨミが直接選ぶ事になった。それにちょっとした同窓会みたいなものだしね。私も会うのが楽しみだ。かつてツクヨミが纏めていた子達はどんな感じなのだろう。
「こちらです」
「アルカ様。少々お待ち頂けますか?」
「え? うん。良いよ。そうだよね。ツクヨミが真っ先に会いたいよね」
「いえ、そういう意味ではなく。見て頂く方が早いですね」
ツクヨミは私達を少しだけ下がらせた上で一人だけ扉を開けて足を踏み入れた。その瞬間、四方から強烈な殺意が降り注ぐ。数十のフィリアス達が一斉にツクヨミに向かって襲いかかってきた。
『これまた随分と手荒い歓迎ね』
「流石ツクヨミの子達って感じかしら。クレアも混ざってきたら?」
「邪魔なんかしねえよ。わかんねえのか? 師匠だって楽しそうにしてんじゃねえか」
ツクヨミが? まあそうよね。ツクヨミだし。
暫く待っていると部屋の中が静かになった。部屋の中央では無傷のツクヨミが立っている。その周囲を囲うように数十人のフィリアス達が跪いている。
「あなたとあなた。それからそちらの方。後は……いえ、今日のところは三人だけですね。他の者達はまだまだ修行が足りません。我らが主の力となりたくばより一層の精進を」
「「「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」」」
ツクヨミから指名された三人を除いて他の全員が転移で姿を消してしまった。今のが採用試験だったらしい。何時の間に打ち合わせてたの?
「アルカ様。ツクちゃんズの選定が終わりました。あなた方も今の名を名乗りなさい。我らが主の御膳です。くれぐれも失礼の無いように」
「「「はっ!」」」
驚いた。ツクヨミだからもっと緩い感じかと思ってた。
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「中々個性的な子達だったわね」
「お気に召しましたでしょうか?」
「ええ。もちろん。けどツクちゃんズの事は皆には内緒よ。今度こそ私の隠密部隊として暗躍してもらうわ」
「はい! 必ずやお役に立ってみせましょう!」
「ノアにも内緒にしとく気か?」
「ええ。クレアも黙っていてね」
「……それで私まで連れてきたのかよ」
「ふふ♪ 気付いたようね♪ クレアは協力者よ♪ 名誉ツクちゃんズ会員の席を与えるわ♪」
「なんじゃそりゃ。まあいいや。好きにしろ」
「ええ♪ さあ♪ 次はシーちゃんズの方ね♪ シーちゃん達と合流しましょう♪」
シーちゃんはノアちゃん達の検査をしている筈だ。今度は転移で向かうとしよう。ミヤコと手を繋いでゆっくり行くのもいいけど、向こうの様子も気になるしね。それにシーちゃんズ次第ではミヤコを連れていけるかもだし。
ステラは近々こっちに専念するから新しいフィリアスは必要無いって話しだったし、後はノアちゃん達の方が終われば今日のところは落ち着くかしら? 明日あたりはいい加減爺さんの方にも顔出さないとよね。それからルネルとも少し話しておきたい。アンジュ達を引き合わせる前に一声かけとかないと。ルネルはもうとっくに気付いてるだろうけど。アンジュもクロエもジゼルも何度か私の部屋までは出入りしてたからね。けどまあ、ちゃんと根回ししといた方が良いだろう。過去に色々とあったみたいだし。