42-5.人事相談
「それで? 結局三日間丸々遊んでいたのですか?」
マノンとイロちゃんズがそれぞれの持ち場に復帰すると、入れ替わりにノアちゃんが部屋を訪れた。
「いや、あの……一日目は部屋で大人しくしてた……よ?」
「マノンから聞いていますよ。爛れきっていたと」
「あはは~……ごめんなさい……」
「別に良いですけどね。そもそも謹慎はアルカが自主的に言い出しただけですし」
「あれ? そうだっけ?」
「あくまで家で大人しくしていろと言っただけです。どの道三日どころかもう半年以上、下手すると数年は大人しくしていてもらう予定なのですから。敢えてその程度の処分を課すまでも無いですね」
あ、はい……。そっすね。
「エーリ村の件は無事終わりました。今日からは私もこちらで過ごします。マキナとリジィとベーダ、それからマティは引き続きコレットの下で手伝ってくれるそうです」
結局マキナもリジィにもう少し付き合う事にしたのね。きっとリジィが計画の手伝いを願い出たからだろう。それからきっと今晩からはうちで寝泊まりするのよね。折角だから部屋に誘ってみましょう。一度話をしておく必要もあるだろうし。
「マティも? キティは大丈夫?」
「ええ。お母様が復調されましたので。お母様の方も前向きに新伯爵を支えていかれるそうです」
「それは何よりね。でも将来的にはキティも巻き上げちゃうんでしょ?」
「フロルはそのつもりのようですね。後は本人次第かと」
「まあやる気ないのに無理やり連れ出してもね」
仮にも貴族のお嬢様だとか、罪人の娘だからとか考え出すとあれだけど、まあそこは緩めにいっちゃいましょう。どの道もう十年は先の話なんだし。
「そういう事です。幸い我々は既に十分な人員を揃えていますから」
「世界征服するには全然足りないじゃない」
「そんな事本気で許すわけがないでしょう」
「そりゃそうなんだけどさ」
でもフロル達は本気だと思うよ? イロちゃんズまで総動員しちゃってるし、案外時間は掛からないかもしれない。
「コレットちゃんも大丈夫そう?」
「ええ。アルカも見た通りです」
なら安心だ。
「ノア~。修行行こうぜ~」
今朝もクマさんパジャマのクレアがだらけている。クレアは私の匂いが好きらしい。私のベットに入ると中々出られないのだ。随分と素直になったものね。やっぱり肉体が子供になったのも大きいのかしら?
「少し待っていてください。私達はこれから大切な話しがあるんです」
「お~」
ノエルとセラフの件も進めちゃわなきゃね。元々三日間ってそっちの話だったんだし。
『マスター。念の為精密検査を実施したく思います。本日いっぱいノアをお借りできますか?』
「おっけ~」
「すみません。クレアさん。やっぱり無理そうです」
「お~」
だらけてるなぁ~。これはクレアも今日は動かないわね。永遠の寿命を得たせいか以前程の焦りは無いみたいだ。人って変われば変わるものよね。あのクレアがこうなるなんて考えられなかったわ。もちろん私としては嬉しいけどね。
「セレネは?」
「まだ寝ています。この三日は向こうも忙しかったので」
ああ。そっか。計画変更はヴァガルだけじゃないものね。やっぱり悪いタイミングでイロちゃんズ戻しちゃったわね。
「ならセレネ待ちね。それまで何してよっか?」
「セレネのことですからもう直起きてきますよ。普通にここで待っていましょう」
「ノア~こっちこ~い~」
「なんです? クレアさん?」
素直にベットに近付いたノアちゃんがクレアに捕食されてベットに引きずり込まれた。そのままノアちゃんを抱き枕にして二度寝を敢行するクレア。
「ちょっとクレア。独り占めしないでよ」
「アルカも~こ~い~……zzz」
寝てるし。
「まったく。仕方ないですね」
とか言いつつ満更でもないノアちゃん。相変わらずクレア大好きね。まったく。ノアちゃんもチョロいんだから。
「ちぇ~。私だけ除け者なんてな~」
こうなったらミヤコを側近に加える作戦でも考えるか。
『ダメですよ。マスター』
「お願いシーちゃん。そこをなんとか」
『なら私を解任してください。このままでは人数が多すぎます。他の希望者達に示しが付きません』
「ハルちゃん。イロハ、ツクヨミ。シーちゃんと融合する方法を考えて」
『『『がってん♪』』』
早く固定枠にしてしまおう。二度とこんな事を言い出さないように。
『マスターは強引過ぎます』
シーちゃんは頑固過ぎます。
『やはり七枠にするのはどうでしょう? 七の方がそれっぽくないですか?』
『ぽい~』
ハルちゃん、イロハ、ツクヨミ、シーちゃん、ヤチヨ、ヒサメちゃん。ミヤコを加えて七人ね。そうね。名案だと思うわ。良い事言うわね。ヤチヨ。
それはそれとしてシーちゃんの固定枠化も進めるけど。
『けれどやっぱり難しいのよね。シイナは元々アルカの一部を切り離して造ったわけだし』
アリスやハルカと似た生み出し方だもんね。融合しちゃうと完全に溶け込んでしまうかもしれないのよね。
『そもそもマスター。イロちゃんズを外に出してしまったので、ミヤコまで連れ出してしまえば運営委員会の人員が足りなくなります。コマチ一人に任せるのは難しいかと』
そう? もう随分落ち着いてるでしょ? 後は多少放っておいても大丈夫じゃない? 他の委員会メンバーも十分経験は積んだだろうし。
『ミヤコの働きはそれだけ大きいのです』
そっかぁ……そうだよね……ミヤコだもんね……。
全員送り出したのはやり過ぎだったか。せめてチハヤだけでも司令塔として残しておけばよかったかも。チハちゃんズの方も皆出払っちゃってるし。結局私個人の手駒は殆ど居なくなっちゃったわね。ルイザの件もあるからリリカはリオシアから動かせないし。また募集かけようかしら?
『やろう』
『にゅー』
『ちゃんズ』
『つくる』
『今度は誰を代表にするのよ?』
『ツクちゃんズ?』
『おけ』
『さいよう』
じゃそういう事で。
『……イエス、マスター。手配します』
不服そう。他の手段考える?
『アニエスとナディはそろそろ動かしても宜しいかと』
ならその二人はムスペルに戻しましょう。元々そういう約束だったんだもの。今は何の問題も残っていないのだし、まだツムギとステラもちょくちょく顔を出してるから何か手伝う事もあるかもだし。
『イエス、マスター。手配致します』
あと私もマリアさんとアレクシアさんに会いに行かないと。そろそろ向こうも落ち着いたかな? まだ忙しいかな? 後で二人を預ける時に聞いてみよう。
でまあ、二人はそういう事だから、やっぱりツクちゃんズを作るのが良いかも?
『シーちゃんズは如何でしょう?』
もちろん良いわ。その子達には私世界の事を任せるわね。
『イエス! マスター! 感謝致します!』
シーちゃんはもうちょっと素直におねだりしてね。
『イエス、マスター』
やっぱり融合したいなぁ。シーちゃんともっと通じ合いたい。シーちゃんに気を遣わせるばっかりじゃなくて。
『言う程気なんて遣ってたかしら?』
『むしろ無理やり気を遣わせていたのではないでしょうか』
『シイナ』
『わがまま』
まあ、うん。たまにはね。シーちゃんだから。
『そうやって甘やかすから増長するのよ』
『実質小春先輩を裏で操っていますよね。私も見習いたいです』
たぶんシーちゃんも貴方達にだけは言われたくないと思う。