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42-3.レクリエーション

 いや、きっついわこれ。折角の水着回なのに。


「アルカ!」


「小春!」


「マスター!」


「アルカ様!」


「アルカはん!」


「小春先輩!」


 あちらこちらから集中力が足りないとお叱りを受けてしまう。皆状況は分かっているのに、むしろ競うように自分達の方へと意識を向けさせてくる。


 これ絶対私で遊んでるでしょ。うちの家族は皆仲良いんだからもう。



「む~り~!」


「「「「アルカ♪」」」」


 容赦が無い。誰も引く気が無い。悪ノリ感がどんどん増していく。


 これでも私の並列思考だって随分と成長したのだ。ハルカの頑張りのお陰で今や十の分体を生み出しても問題なく運用出来ている。しかしイチャイチャとなると話が別だ。皆一人一人が自分だけを見るようにと要求してくるのだ。そこまでの精度となると難しい。どれだけ同時思考が出来ても求められる水準には達していない。全神経を集中して一人一人を見つめなければならない。そんなの無理だ。根本的に方法が間違っている。


 やっぱりハルちゃんみたいに分体毎で人格を分裂させてみる?


 危険だと思ってこれまでは手を出してこなかったけど、この先の事を考えるならその程度の技術は必要かもしれない。既に伴侶だけで五十人を超えている。もう直家族は百人だ。一人一人と向き合っていくには無限の寿命があったって足りはしない。このまんまでは皆を退屈させてしまう。


 由々しき問題だ。これは本気で対処せねばならないのだ。新しい私が生まれちゃったらその時はその時だ。全力で土下座しよう。



 よし。やるか。


『バカ』


『どうしてそう浅慮なのよ』


 あれ? ハルちゃん? イロハ? なしてここに?


『アルカから一瞬たりとも目を離すわけないでしょ。私達の本体は何時でもアルカと共にあるんだから。ノアとノエルは大丈夫よ。そっちも変わらず見張っているわ』


『おなじく』


 流石だね。分体の扱いも私以上だ。


『当然じゃない。私達の監督も無しに新技術に手を出すのはやめなさい。アルカは大してセンス無いんだから』


『たよれ』

『ハル』

『ぷろふぇっしょなる』


 はい。ごめんなさい。


『それから意識の分裂はやめておきなさい。前にも言ったでしょ。あれはハルにしか出来ないわ』


 あ~。うん。そうだった。そうだった。そんな話だった。数多のハルちゃん達がその身をハルちゃんの成長と私の為に費やしては消えていったのだ。というか今も現在進行系で続けている筈だ。ハルちゃんは常にレベルアップを続けているのだ。どこのチート主人公? 私が言うのもあれだけど。


『半分裂程度にしておきましょう。マニュアルをオートマにするのよ』


 出来るの? そっちの方が難しくない?


『難しくてもやるしかないじゃない。このままじゃアルカが分裂に手を出しかねないんだし』


 お手数おかけします。


『アルカがやるのよ。私達はあくまで手伝いよ』


 それでも十分心強いわ。


『ツクヨミも手伝いなさい』


『はい。イロハ様』


『いいかげん様はやめなさいよ。ツクヨミも私の一部になったんだから』


『ふふ♪ 畏まりました♪ イロハ♪』


 そうだよ。イロハもツクヨミもハルちゃんも私なんだから皆に分体任せたらよくない?


『無理に決まってるでしょ』


 でもわからないでしょ? イロハなら完全に擬態する自信あるでしょ?


『もちろんよ』


『ならためす』


『面白い試みですね♪』


 試み? ふむふむ。なるほど。



「皆~! 集合~!」


 一旦全ての分体を回収してから再び四体の分体を生み出した。ちなみに本体は相変わらずナノハのベット状態だ。いつの間にかチグサまで寝ちゃってる。可愛い。



 本体から少し距離を取った所に皆を誘導し、その四方に分体を立たせる。


「これからゲームをしましょう。この分体は私とハルちゃんとイロハとツクヨミがそれぞれ動かしているわ。これからそれぞれの私に自由に質問してみてね♪ 見事私を見つけられたらご褒美よ♪ さあ♪ 張り切っていってみよう♪」


 ふふ♪ ハルちゃん達だって私だからね♪ 魔力的にも神力的にもパス的にも見破れまい♪ さあ皆の者♪ こぞって挑戦するが良い♪



 真っ先に私を指し示したのはアリスだった。


「小春みぃ~っけ♪」


 即答だ。一切悩む素振りもなかった。



「アリス。ごめんだけどアリスは無しね。ご褒美はあげるからゲームから抜けてくれる?」


「うん♪ ふふ♪」


 嬉しそう。可愛い。


 けどうっかりしてた。アリスもまた私の分身だからね。ある意味アリスこそが分裂体とも言える。その誕生にはイオスも関わってるからちょっとだけ複雑だけど。とにかくまあ、こればかりは仕方がない。



「はいもっかい! ちょ~と待ってね~!」


 もう一度分体を回収して配り直す。



「おか~さん♪」


 今度はルーシィが駆け寄ってきた。ラトナの手まで引いている。



「はい。ルーシィ&ラトナはクリア~。じゃあアリスの方に行っててね~」


「もっと褒めてよ!」


「折角ならもうちょっと悩む素振りとか見せて場を盛り上げてほしかったなぁ」


「ならもっかい!」


「ダ~メ~♪」


 まだまだ人数いるもの。というかほら。一部の子達でもあっさり見つけちゃうと分からない子達が気に病むじゃん。この試し方失敗だったかしら?



「もう一度よ!」


「マスター!」


「はい。シーちゃん&ミーちゃんも正解ね~。もう一回」


「アルカ様♪」


「はい。ミヤコ&コマチもおっけ~。次~」


「こはる♪」


「ノルン&ミーシャもクリア~。さあ次もいってみよ~」


「小春先輩!」


「ヤチヨもおっけ~。次~」


 なんか早押しクイズみたいになってきた。しかも全員当てちゃうし。違うんだって。そういう感じじゃないんだって。もっと内面を見てほしいんだって。ハルちゃん達の高度な擬態を感じ取ってほしいんだって。せめて悩んでよ。質問してよ。なんか私の想定と全然違うんだけど。


 というかどこで見分けてるの? 分体そのものは私の生み出したものよ? あくまで動かしてる中身が違うだけよ?


 あれか? 体幹的なやつか? 立ち姿とかから? それか何か不正でもある? アリスが目で追ってるとか? もうちょっと離れてもらっておく?


 いや、うん。もちろん嬉しいんだけどね。取り敢えず私の目論見は浅はかだったようだ。もうイロハ達の擬態技術とか以前の問題なのだろう。……ふふ♪

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