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42-1.不健全な謹慎生活

「やってくれたわね」


「あらマノン。ご機嫌ナナメね」


 私の腕の中にすっぽりと収まりながら不機嫌そうな声音を漏らすマノンちゃん。今日も今日とてツンツンだ。可愛い。



「私仕事中だったんだけど」


「カノンから説明は受けたでしょ?」


「本当にただ説明を聞いただけよ。引き継ぎだってしてないわ」


「でもカノンがもう良いよって。だから抱き寄せたのよ?」


「カノン姉さまの仕事が増えるじゃない。少しは考えなさいよ」


「そうツンケンしないで。カノンはマノンがいっぱい頑張ってくれたから休ませてあげたいねって相談してくれたのよ。だから私は協力したの。きっとマノンは素直に聞いてくれないからね」


「……別に怒ってるわけじゃないわ」


「ふふ♪ 愛しのカノン姉さまに迷惑をかけたくないだけよね♪」


「ふん!」


 ふふ♪ やっぱりマノンは可愛いなぁ♪



「それより何よあれ」


「あれって? 計画の事?」


「他に何があるってのよ」


「あはは♪」


「あははじゃないわよ!? どうしてくれんのよ!?」


「まあ大丈夫だって。マノンがお休みしている間にカノン達が軌道修正してくれるから」


「やっぱり行くわ!」


「ダ~メ。家族会議に参加しなかった罰よ。三日間謹慎よ」


「お休みって言ったじゃない! 休みをどう使おうが私の勝手でしょ!?」


「だから変更。休みじゃなくて謹慎よ。怖~い見張りもいるんだから大人しくしていましょう♪」


「そうだぞマノン。勝手に出勤したら食っちまうからな~」


「どこが怖い見張りよ! 本当にクレア姉さまなの!? なによこのだらけっぷり!?」


 私のベットで転がるクレアは何故か可愛らしいクマを模したパジャマ姿だ。とっても似合ってる。可愛い。もうずっとその姿でいてほしい。



「マノンの分もあるみたいよ?」


「着ないわよ!!」


 私も着ようかしら? 子供姿に変身して。



「まあともかくね。三日間はこの三人で箱詰め生活なの。マノンも諦めて付き合ってね♪」


「罰を受けてるのはアルカだけでしょ!? なんで私まで巻き込むのよ!?」


「だから言ったじゃない。家族会議に参加しなかった罰だって」


「後付でしょ!? 今考えたやつでしょ!?」


「まあそうなんだけどさ。でもほら。マノンが良い子にしてたらただのお休みだったのよ? でも仕事するなんて言うから仕方なかったのよ」


「んなことわかってるわよ!」


 んも~♪ マノンは真面目だなぁ~♪



「まあそう騒ぐな。マノンだけならアルカ世界に行くのも認めてやる。当然私もついて行くけどな」


「……クレア姉さまはアルカの見張りじゃないの?」


「今回ばかりはアルカも反省してっからな。心配要らねえだろ」


「あなた本当にクレア姉さまなの? 実はハルが化けてたりしない?」


「しっけいな。私は私だ。なんなら手合わせしてみっか?」


「それいいわね。修行つけてよ。クレア姉さま」


「おう。良いぜ。なら明日はアルカ世界行こうぜ」


「やっぱり偽物だわ! クレア姉さまが明日なんて言う筈ないもの!」


「ぶっ!!」


「ひっでぇなぁ。マノンの事情を聞いてて今すぐ連れ出すわけねえだろ。というか私も今日はもう満足してんだよ」


 結局会議の後も延長戦してたものね。私も今度こそはって相手させられたわ。あれだけやれば流石のクレアでも満足するわよね。そもそも今はまともに身体を動かせる状態じゃないものね。



「マノン。クレアのことマッサージしてあげて。きっと喜ぶわ」


「良いなそれ。来いよマノン。アルカは触るなよ」


「なんで私はダメなのよ?」


「私は疲れてんだ。これ以上お前の相手をする気力はねえ」


「クレアがもっとって言ったんじゃない」


 勝手なことばかり言いおってからに。



「フリじゃねえからな。絶対に触んなよ」


「ふっふっふ」


「おい。よせ。近付くな」


 わぁ。棒読みだぁ。クレアったらわざとらしいわね♪



「やめなさいアルカ」


「「え?」」


「なんでクレア姉さままで驚いてるのよ?」


「なんでってお前……ぷっ」


「ふふ。ククク♪」


「ちょっと! なんで二人して笑うのよ!?」


 マノンか~わい♪




----------------------




「不健全だわ」


「今更だな」


「今更ね」


「今は謹慎期間中ってわかってるの?」


「だから大人しくしてるじゃん」


「どこがよ!? 爛れてるじゃない! せめて服くらい着なさいよ!」


「いいじゃねえか。どうせまたすぐ脱ぐんだし」


 クレアは素肌同士で接するのが好きだもんね。普段はあれだけ動き回ってるのに、こういう時はただじっと抱き合ってるだけでも満足しちゃうのだ。



「でもマノンの言う通りかも。またあのパジャマ着てよ」


「やだよ。あれ着てっと尻ばっか揉んでくるじゃねえか」


「どこでも触ってあげるから♪」


「うるせ♪」


「いい加減にしなさい!」


 あかん。マノンちゃんがマジギレしてる。これは嫉妬とかじゃなくて本気で我慢できなくなってる。マノンも決してそういう事が嫌いなわけじゃないんだけど、というか人一倍好きな方ではあるんだけど、それはそれとしてメリハリの無い生活は嫌うのだ。丸一日以上も素っ裸でゴロゴロ絡み合っているのは無理があったようだ。



「修行付き合ってくれるんでしょ! 行くわよ! クレア姉さま!」


「お、おう。そうだな。アルカ。頼む」


「は~い♪」


 仕方ない。ここは快く送り出してあげよう。そろそろヤチヨ達も我慢できなくなってるし。



「アルカもよ! ついてきなさい!」


「え? 私謹慎処分中だよ?」


「アルカの中に行くんだから問題ないわよ! グダグダ言ってないで付き合いなさい!」


 まあ良いけどさ。マノンたっての希望ならその程度は認めてもらえるでしょうし。クレアも止めるつもりは無いみたいだ。それにまた機嫌を損ねちゃったからね。少しくらいお付き合いしましょう♪

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