8-15.顛末
今回エルフの国に来てから
一年近い長い時間をかけて、ようやく目的を果たした。
今の私なら杖の力を使いこなせるという実感がある。
けれど、代わりに杖を使いづらい理由が出来てしまった。
気分的には今までのようにおいそれと使うわけにはいかないが、
ドワーフ爺さんの気持ちがこもっている物でもあるため、
杖そのものを否定したくはない。
力は使いようなのだろう。
振るう私が間違わなければ悲劇に繋がる事はないはずだ。
もしどうしても手に負えなくなれば、約束通り自分で破壊しよう。
今回の事で私達は大きく成長した。
もしかしたらもうすぐクレアとも渡り合えるかもしれない。
訓練が終わった後も、
暫くはルネルの元で生活を続けた。
その間は私とノアちゃんの二人での模擬戦もしていた。
これまで、戦う事がこんなに楽しいと思ったことは無かった。
今はノアちゃんとの模擬戦が楽しくてしかたがない。
私が魔法を使っても、既にお互いに互角の勝負だ。
一時は追い抜かれたかとも思ったが、
まだなんとか追いついている。
これから先もノアちゃんはもっともっと強くなるのだろう。
ルネルの元に置いて貰って、
修行を続けるのも良いのかもしれない。
けれど、やっぱり私が一人でいたくはないから、
ノアちゃんも連れて行ってしまおう。
きっとそれでも喜んでくれるはずだから。
そうして、ようやくエルフの国を旅立つ事を決意した。
「ノアちゃん。そろそろ行こうと思うのだけどどうかしら」
「それは構わないのですが、どこに行くのですか?」
「片っ端から世界を回って、一つ一つ敵の拠点を潰していこうかなと」
今なら、ルネルから聞いた情報もあるし、
視る力で敵を探すことも出来るはずだ。
強い力を持つ魔道具はとても目立つ。
ドワーフ産の物は特にだ。
大きな力を見つけていけば敵の痕跡を辿れるだろう。
「流石に危険すぎるのでは?
そんな無茶をしないといけない段階なのでしょうか」
「なんとも言えないわね。
もしかしたら余計な事さえしなければ、
もう敵も諦めているかもしれないし」
「そうですよ。
前回の事件だって、いくら実行犯が捨て駒でも
あれだけ大規模なものを阻止したんです。
普通なら諦めるはずです!」
「そうよね・・・」
「何か大きな事件が起きてから動くのではダメでしょうか
何度も言いますが、アルカが全てに責任を持つ必要は無いんです。
待つことも必要なことです」
「うぐっ・・・」
「今なら私が毎日甘えてあげますよ?」
「まさかそんな直接的な餌を出してくるなんて・・・」
「良いんですか?旅立ったらたまにしか甘えてあげませんよ?」
「たまには甘えてくれるんだ」
「・・・」
「ごめんね。やっぱり出発したいな。
自分から積極的には探さないって約束するから。
目についたら潰していくくらいで」
「大して変わってませんよ!!」
「じゃあ、とりあえずセレネのところに遊びに行かない?
何日か教会に滞在するつもりで。
ルネルから聞いた聖女の話しもしておきたいし」
「それは賛成しますが、
結局その後何かに巻き込まれていくんですよね?
もう先の展開が読めました」
「そっそれは私が原因じゃないと思うのだけど・・・」
「いえ。アルカは絶対に何かを惹きつける力を持っています。
きっとそのうち、敵の方からノコノコ姿を現すはずです」
「いや・・そんな事は・・・」
「無いと言い切れるのですか?」
「無いと良いな~」
「自分でも無駄な悪あがきだとわかってる事言わないで下さい」
「うぐぅ・・・」
「もう。仕方ないですね。
じっとはしていられないのでしょう?
最後まで付き合うと約束しましたから。
どこへでもお供します」
「ありがとう!ノアちゃん!!」
「話は済んだのか?
ほれ行くぞ支度せい」
「どこに行くのルネル?」
「わしもしばらくお主達に付いていくのじゃ。
安心せい。手は出さんからのう」
「「え!?え~~!!」」