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41-26.見解の一致?

「というわけだ。ヴァガルの皇帝はわらわただ一人だ。揺るがしかねん勢力を野放しにはできん。いずれにせよギヨルドは削らねばならん。現ギヨルド王家には退いてもらう。これはギヨルド王の人柄とは関係の無い事だ。わらわが自らの権力を守るために画策する姑息な手口だ。それでもわらわは為さねばならん。後の千年を平和なものとする為に」


 フロルは予定通りに話を進めた。



「姉様がそのように仰る事は想定しておりました。我々反対派の論もお聞きくださいませ」


「勿論だ。よい。話してみよ」


「はい。姉様」


 コレットちゃんも落ち着いている。それに自信満々な雰囲気だ。負けるなどと微塵も考えていないように見える。



「姉様。いっその事帝国は丸ごとギヨルド王家に引き渡してみては如何でしょう」


 コレットちゃんはいきなり爆弾を放り込んできた。フロルとお兄さんの約束を聞いた筈なのに、フロルが絶対に認めないであろう事を提案してきた。



「皇帝では役不足なのです。帝国だけでは姉様の器を満たすには至りません。姉様は世界を取るべきお方なのです」


 ……えっと? コレットちゃん?


 え? これ反対派の総意なの? 良いのカノン? 止めないの?



「うむ。丁度我らも似たような話をしておったのだ。気が合うな。コレットよ」


「ちょっとフロル! 約束が違うでしょ! コレットも変な冗談やめてよ! フロルが乗り気になっちゃうじゃん!」


「ニクス。今は静かにしていてね」


 トニアまで?


 ああ、これはただの作戦なのか。本気で世界征服しましょうってお誘いじゃなくて。私とニクス以外は真に受けている様子も無いみたいだ。ちょっと恥ずい。



「感激です。姉様と志を一つに出来る事は私にとって何より喜ばしいことです。ですがまだ決着には早かろうかと存じます」


「うむ。続きを話してみよ」


「はい。姉様」


 今度はご機嫌取り作戦? フロルには確かに効果ありそうだけど。でも流石にそれだけってことは無いよね?



「ギヨルド王は皇帝陛下を上回る勢力を味方につけてみせました。これは評すべき事実です。それ程の傑物をただ排してしまうのでは勿体ないのではありませんか?」


「ならばどう使う?」


「帝城に召し上げては如何でしょう? 王国は御息女にお任せするのです。何も力尽くだけが支配の手段ではございません。此度の件はツクヨミ姉様を動かすまでもないのです」


「従うわけがなかろう」


「彼が真に平和を望む者ならば、民の血を流さずに皇帝陛下の御本へと近づけるこの機会を逃しはしないでしょう」


「楽観が過ぎるな。罠とわかっていて乗り込んでくる者などおるまいよ」


「ならば戦争です。かの王は皇帝陛下の直轄領に手を出した不届き者です。疾く成敗致しましょう」


 それは……どうなんだろう。


 普通に考えたら従うとも思えない。それに仮に国を空けるとしてもそのタイミングでアンジュに任せることはしないだろう。皇帝に都合の良い展開過ぎて普通に気付くだろうし。



「戦争は無しだ」


「はい。そんな結論に至ってはカノン姉様も黙ってはいないでしょう」


 カノンだけでなく皆が納得しない。だから単なる脅しだ。ギヨルドの国王にそう持ちかけるだけだ。勝手した事を不問にしてやるから出頭しろと。その手腕に免じて悪いようにはせんと。暫く帝城に籠もって帝国の改革案に知恵を貸してくれと。話としてはそんなところだろうか。対外的にもそれこそが罰なのだと示せるだろう。甘い対応とは思われるかもしれないが、後の流れを考えればむしろその甘さこそが一貫しているとも言えるのだし。



「ギヨルド王にはたっぷりと知らしめてやりましょう。姉様の偉大さと我らの力のその一端を垣間見せてやりましょう」


 それで叛意も失せるだろう。民は巻き込まず王ただ一人を絶望させるだけでいい。随分と話はシンプルになる。きっとギヨルド王も喜んで先々の和解策に同意してくれるだろう。



「いっそのこと拉致してしまうのも手だな。その方が話しも早そうだ」


「脅かし過ぎてもなりません。恐怖に蝕まれれば役割を果たすどころか敵対を強める結果にも繋がりかねません」


「なればこそ徹底的に躾けてしまうべきだな」


「ダメです。かの者には正気のまま危機感を抱いてもらわねばなりません」


「それがお前の復讐か? コレットはギヨルド王家を擁護する立場であろう?」


「ですから命と王家は守りましょう。引き続き現王家の血筋の者達が王国を治めればよろしいかと」


「復讐と言うには随分と生温い手だな。発案者が王本人の可能性は低かろうに」


「責任は取るべき者が取るものです」


「違いない」


 あれ? 纏まっちゃった?



「トニア。それから皆の者。わらわはコレットの案に賛同しよう。ギヨルド王を引きずり出し、此度の一件についてその責任を取らせよう。わらわが奴を引き付けている間に王国はアンジュに奪わせる。その為の策を皆で話し合おうではないか。どうかね? この提案に不服のある者はいるかね?」


「……どうしてこうなるのよ」


 この場に集まった半数はトニアと同じく困惑中だ。残りの更に半分は明らかに反対意見がありそうだ。もう半分はなんだろう? 呆れかな?


 というか何で反対派まで困惑してるの? もしかして違う結論に繋げる手筈だった? それともここでフロルが賛同するとは思ってもいなかったの?



「あからさま過ぎるわ。頭を取られた反乱勢力がかえって勢い付く可能性もあるわよ。アンジュだって危険よ。護衛の為に誰か派遣してしまえば結果的にツクヨミが行くのと変わらないじゃない」


 セレネが真っ先に反対意見を表明した。ここからまた賛成派と反対派に別れて議論するのかしら?



「それは極論が過ぎるぞセレネ君。情報が行き渡るには時間もかかるのだ。挙兵ともなれば尚の事だ。アンジュ君が上手く立ち回ってくれれば武闘大会開催までには十分に間に合う筈だとも」


「ちょっとグリアさん!? なんでそっち側につくのよ!」


「これは異なことを。私は先程アルカ君に引き抜かれたではないか」


「アルカ!」


 なんでこっち!?



「皆落ち着いて。一旦冷静になって考えてみて。それからフロルとコレットちゃんの意見を元にもう一度話し合いましょう」


 トニアの言葉に皆が賛同した。それから暫く、軽く話し合ったり、それぞれに考え込んだりしながら、再び賛成派と反対派に別れていった。

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