表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1250/1366

41-17.賛成派の反駁②

 あれから偽神関連の話が暫く続いている。そうこうしている内にだいぶ議論も盛り上がってきた。この調子だと途中でトニアに止められてしまうかもしれない。



「何故わからぬ? 今回の件にこれ以上偽神が関与する事はありえん。何時まで怯えているつもりだ? そうして永遠にアルカを囚えておくのか? それではギルドの連中と何ら変わらんのではないか? 奴らはアルカに付き纏い、行く先々で目を光らせ、それを嫌ったアルカは自宅に引き籠もった。奴らは結果的にアルカの自由を奪ってみせたのだ。アルカが大人しく引き籠もったのは自分達の手柄だとほくそ笑んでいることだろうさ。お前達は敵の術中に嵌まっているのだ。敵は偽神だけではない。奴らの好きにさせておいていいのか? 今こそ示す時ではないのか? アルカは決して奴らの自由になる存在などでは無いのだと! 我らもまたこの世界に生きる者の一人なのだと! 我が物顔で世界を支配するギルドをこそ我々は打ち倒すべきでは無いのか!?」


 なんか話しが広がってるなぁ。わざとなんだろうけどさ。でもギルドまで持ち出すとノアちゃんも反対派に回りかねないよ? ノアちゃんも慎重に事を進めてる最中なんだし。今はアメリとお姉ちゃんに丸投げしてるけど。



「バカ言わないで! それこそ意識しすぎなのよ! ギルドなんて放っておきなさい! どう思われようが関係ないわ! 私達は私達の矜持を持って道を選んできたの! それはフロルにだってとやかく言わせないわ!」


 カノンも良い塩梅に白熱してきた。フロルの計画通りだ。けどここからどうするのかしら? 見事なお手並みだとは思うけど、カノンが増々意固地になる可能性も高そうだ。これで本当に突き崩せるのかしら? そろそろタイムリミットも近そうよ?



「ストップ。一旦話を止めてくれるかな?」


 あ~あ。フロルも頑張ったけどここまでみたいね。司会トニアストップが入っちゃった。



「フロル。ギルドの件はまた別で話し合おうね。今回の件とはあまり関係ないわ。今の議論の的はあくまで偽神関連だからね。双方その範疇から外れすぎないように。当然アルカが世界に与える影響だとかも一旦無視してね。世界中が敵に回るかもしれないとかもよ。一つ一つ決着をつけましょう」


「関係が無いなどという事はあるまい。偽神の件も、世界への影響も、ギルドとの確執も、全ては根本的に同じ理由だ。皆が及び腰である限り何一つ問題は解決せん」


「不必要に煽るのも無しよ。冷静な話し合いをと持ちかけてきたのはフロルでしょ?」


 そう言えばディベートって言い出したのはフロルだったわね。私はそこまで具体的にお願いしたわけじゃなかったし。


 でもこれは痛い。フロルの策略が丸々潰されてしまった。ディベートで敢えて感情論同士のぶつかり合いに持ち込もうとしたフロルもフロルだけど。



「それは謝罪しよう。悪意があるわけではない。ただ私の考えとしては」


「フロル」


「わかっておる」


 完全にマークされちゃった……。



「話を戻そう」


 めげない。流石皇帝陛下。



「此度の一件では世界の守護神であるニクスが此方側についた。彼女も我々の意見に賛同している。そもそもアルカに窮屈を強いる現状を良しとしていないのは皆同じだろう。当然アルカ自身にも大きな問題はあるのだがな。まあそこは一旦置いておこう」


 良いの? そこが一番の問題じゃない? 三日で十人よ?



「先ずは誤解の無いよう宣言しておこう。今回の話し合いでアルカの自由を認めて欲しいというわけではない。あくまで偽神の件はその一つでしかないからな。わらわはその一つ一つを取り除いてやりたいだけだ。皆の賛同をもってアルカを解放するのが正しき未来だ。今回のこれは最初の一歩だ。当然本来の議題とは関係も無いからな。前例の一つとして議事に残すとしよう。だからどうか認めておくれ。偽神の件ではもうアルカを束縛せんと。偽神なんぞ恐るるに足らんのだと勇気を示しておくれ。いずれ立ち向かうべき相手を必要以上に恐れるのは悪手だ。我々としても今の内に克服しておくべき問題だ。長く染み込めばそれだけ抜き取ることは出来なくなる。今がそのチャンスだ。我々も勇気の一歩を踏み出そう。どうかわらわに続いておくれ。頼む皆の者。お主達ならば必ず偽神めを踏み越えて行けるのだと信じている」


 フロルの真摯な言葉に沈黙が流れる。そこで最初に沈黙を破ったのは予想外の人物だった。



「良いぜ。私はその話に乗ってやる。わりぃな。カノン。それにセレネも。私はやっぱあっち側の方が性に合ってるぜ」


 今の今まで空気だったクレアが私の隣に腰を下ろした。何時の間にかノアちゃんがズレて場所を空けてくれていたようだ。でもなんでここに? フロルの方じゃなくて良いの?



「驚いたわ。まさかクレアがちゃんと話についてきてるなんて」


「お前は黙ってろ。どうせフロルにもそう言われてんだろ」


 あ、はい。



「まったく。クレアさんにも困ったものね」


 カノンは弱ったように反対派の仲間達を見回した。



「いいわ。認めましょう。偽神の件はフロルの言葉に利があるのだと」


 たった一票だったのにあっさりとカノンは認めてくれた。これで八対六になったからかしら? あんまり関係ない?



「けどまだもう一つの意見を変えるつもりはないわ」


「うむ。なれば話を進めるとしよう」


 これでようやく後半戦だ。しかもまだ賛成側の一回目の反駁すら終わってない。そもそも本来は都度あんな風にやり合うものでもないのだろう。フロルが何か無理やりカノンを引きずり込んでただけで。


 まあでもそれしか手は無かったものね。流石は皇帝陛下だ。コレットちゃんの視線も当社比三割増しくらいでキラキラしてる気がする。クロエは湿度が上がった? ジゼルは……敵意? 流石にそこまででは無いけど警戒心は強まってそう。愛するクロエが寝取られるかどうかの瀬戸際だもんね。無理もない。ここだけ何か違う勝負が始まりかけている。


 あれ? これジゼルが敵に回ったら流石に勝ち目無くない?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ