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41-10.話し合いの口実

「ど~しよ~……」


 コレットちゃんの説得は難航している。一応カルラとフェブリはハルちゃんが止めてくれてるみたいだから勝手に転移してしまう事はないだろうけど、当然このまま放っておくわけにはいかない。



『やみおち』


『しかけてるわね。アルカが他に気を取られていたせいで』


『大変申し訳ございません……』


「流石にツクヨミのせいじゃないわ。コレットちゃんとはずっと一緒にいたんだもの。全て私が気付けなかったせいよ」


 フォローが全然足りていなかった。ただ側で見守っているだけではダメだったのだ。



『悪かったわ。私が言ったのだものね。コレットに任せておきなさいって』


「別にイロハのせいでもないってば」


 そもそも誰のせいだとか不毛な事を考えている場合じゃないのだ。同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。今は何よりコレットちゃんから視線を逸らさない事こそ重要だ。




 コレットちゃんは復讐がしたい。大好きな家族を滅茶苦茶にしたギヨルドが許せない。実行犯であるジスカール家をも罰したい。その為に私を放り込みたい。自らを囮にする事も厭わない。



 纏めてしまえばこんなところか。


 実際には大した思惑があるわけでもない。どこまで相手を苦しめたいとかハッキリしているわけでもない。ただただやり返したいだけだ。同じように滅茶苦茶にしたいだけだ。


 結果ギヨルド王国が得をしてしまったとしてもだ。とにかく引っ掻き回したいのだ。もちろん痛い目にあってほしいとは思っているのだろう。だが私達がそれを良しとしないのはコレットちゃんにもわかっている。だからせめてもと。そういう話なのだ。



 難しい。当然この願いを聞き届けるわけにはいかない。私達が目指すところとは正反対だ。それでもコレットちゃんは願う事を止められない。


 ただ従わせるだけなら簡単だ。私の下に呼び寄せてたっぷりと甘やかしてあげよう。きっと何時かは立ち直ってくれるだろう。もう少しだけ冷静になれば思い直してくれるかもしれない。後者までいくと望みは薄いが一番平和的な解決方法だ。大局的に見れば結果も最良と呼べるものになるだろう。



 けどそれじゃあコレットちゃんの想いは報われない。ただ我慢を強いるだけだ。大人になれ、感情に身を任せるなと説教臭く講釈を垂れるだけだ。もしかしたらコレットちゃんは心を閉ざしてしまうかもしれない。折角私を頼ってくれたのに私は何も返せず突き放すだけになってしまう。



 それは良くない事だ。コレットちゃんとちゃんと向き合ったとは言えまい。


 私には時間がある。丁寧に向き合い続ける余裕がある。早々に行動は起こすべきだが、ただ切って捨てるだけで終わらせるのは間違いだ。少なくとも私はそう思う。



『子供扱いしすぎるのも良くないわ』


「うん……」


『おとす』

『ギヨルド』


「ハルちゃん?」


 え? いきなりどうしたの?


『よこうれんしゅう』

『ツクヨミ』

『しはい』


『良いわね。やりましょう。グリア達にも相談しましょう』


「ちょっと!? イロハまで!?」


『当然私に否はございません! 全力で承ります!』


「待ってってば! 盛り上がる前にどういう事かちゃんと説明して!」


『どうもこうも無いわ。言った通りよ』


「ならダメでしょ!」


『いいじゃない。どうせヴァガルでは好き勝手するつもりなんだし。いっそ頂上決戦やりましょうよ♪ 大舞台でアルカ対ツクヨミの激戦を見せつけてやりましょう♪』


『めいあん』


『やりましょう! 是非!』


「やるわけないでしょ!!」


『大丈夫。心配要らないわ。ギルドの連中もアルカの力を見れば恐れ慄くわよ。もう二度とストーカーなんてしてこなくなるわ』


「逆だってば。世界中から恐れられる存在になるだけだってば」


『今更よ。今のアルカなら例え世界を相手取ったって万に一つも負けは無いわ』


「戦う事になった時点でお終いでしょ! そのまま世界征服でもするつもりなの!?」


『戦わなければいいじゃない。適当にあしらいなさいよ』


「ふざけないで!」


『別にふざけてないわよ。いいじゃない。一度くらい失敗しても。失敗すればコレットも思い直すわよ。成功したら万々歳よ。今後は基準を弛めましょう』


「ダメだってばぁ。変な事言って困らせないでよぉ」


『皆遠慮しすぎなのよ。たまには私達に合わせてもらいましょう』


「イロハ。お願い。もうやめて」


『そこで思考を止めないで。真面目に考えるべきはアルカの方よ。いずれやるつもりの事を先に少し試すだけよ。ちゃんと検証しておきましょう。国取り計画だって失敗は出来ないわ。先に民衆の反応を確認しておくべきよ』


「それは……」


『ダメ元で良いから。先ずはグリアとセレネを呼んでみましょう。なにはともあれ話し合うのよ。もしかしたらアルカのように誰も賛同しないかもしれないわ。けどそれでも良いのよ。きっとその時にはコレットも納得するわよ。一人で悩んでいるより皆で話し合いましょう』


「……わかった。その為の口実なのね」


『ええ。今のところはね』


 試すだけ試してみよう。何度も集めてしまって申し訳ないけど。でも不満を持ったままの子がいるなら先ずは話し合うべきだ。全員が満足するまで続けるべきだ。今度はコレットちゃんを除け者にしないで。そして謝ろう。勝手に決めてしまった事を。

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