41-7.中断と再開
「何時までバカやってるのです? 揃いも揃って本題を忘れてやがるのですか?」
「「「「ごめんなさい……」」」」
クロエに叱られてしまった。待たせ過ぎてしまった。
「ん? 一人増えてるのです?」
「ツクヨミと申します。以後お見知り置きを」
「これはご丁寧にどうもなのです。私はクロエなのです」
「よくよく存じております。ふふ♪」
本当にクロエの全てを知ってるのよね。私達ですらまだ聞いてないような事まで。当然クロエの記憶も覗き見たんだろうし。なんならクロエの尻尾の毛の数まで把握してそう。
「……なんだか寒気がするのです」
たぶんツクヨミにロックオンされてるからよ。才能あるクロエを鍛え上げたくて堪らないみたいだから。今のツクヨミそんな目をしてたもん。
「まあ良いのです。今は一旦戻るのです」
「「え~!」」
「諦めろなのです。私がたっぷり遊んでやったのです。二人もここらで満足しておけなのです」
「「は~い~」」
凄い。クロエがカルラとフェブリを制御してる。すっかり二人のお姉さんとしての地位を築き上げたらしい。
とにかくクロエの言う通りだ。そろそろログアウトしなきゃだ。コレットちゃんも起きてるかもだし。
ノアちゃんとノエルも流石にバツが悪そうにしている。どうやら異論は無いようだ。
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「良かった。まだ寝ていたわ」
ベーダの方はカウンセリング中だ。あの子はもう少し時間がかかりそうだ。
「ツクヨミも無事に出てこれたみたいね」
『はい♪ アルカ様とご一緒できて感激です♪』
流石はシーちゃんのアイリスだ。
「暫くはここで大人しく話でもしてるのです」
クロエがソファに腰を下ろすとその両隣にカルラとフェブリが張り付いた。何時の間にか侍らせていらっしゃる。
「悪いけど二人はコレットちゃんの方についていてね」
私の分体もいるからあまり心配は要らないけど、やっぱり今のタイミングで抜けた事に気付いちゃうと悲しいだろうからね。
「「は~い♪」」
二人はクロエの両頬に軽くキスをしてから転移した。
「懐き過ぎでは?」
「まさか手を出したのですか?」
「そんなわけねえのです」
「ノアちゃん達も私にあれやってよ」
「ズルいのです。一人寄越すのです」
「ダメよ。ノアちゃんズは私のよ」
「アルカは私だけで我慢してください」
「クロエには私がついてあげます」
「二人は仲良くなったのですね。成果があったようで何よりなのです」
ほんとにね。あれだけ時間かけて何にも無しじゃね。
「もう何も心配は要りませんよ」
「チーム戦というのも悪くありませんね」
結果オーライね。
「セレネ達の方はどうかしら」
「私達より簡単だと思いますよ」
「セレネ達は割り切っていますから」
まあそうね。セレネなら上手く利用するだけでしょうね。当然セラフも同じだろう。セレネは最近忙しくて教会に籠りがちになっていたから、今の状況を幸運だとすら思っているかもしれない。
「ところで話は変わるのですが」
「ツクヨミにアルカの分体を貸してみませんか?」
「もしかしてまだやるつもり?」
「「はい」」
そんなに物足りないの? 良いけどさ。
ツクヨミには聞くまでもないだろう。
『喜んで♪』
だと思った。
「コレットちゃん起こさないように離れた所でやってね」
「「はい♪」」
分体を生み出すと私に同化していたツクヨミが移動した。このツクヨミはアイリス内で生み出された影響か、普通の分体とは違って自らの体を持っていないのだ。どうやら精神体のみの分体らしい。実は私の方も精神体なんだけど、ここは私世界だからツクヨミとは若干違うのよね。
今はシーちゃんもいないし、ノエルでは流石にナノマシンの体は生み出せない。そもそもここには十分な素材も無い。いや、どっかにシーちゃんのストックがあるのかもだけど。それにツクヨミなら自分で身体を生み出せるのかもだけど。
まあ変な事される前に私の分体を渡しておきましょう。
「ふふ♪ うふふふふ♪ あは♪」
あかん。ツクヨミがトリップしかけてる。
「後でちゃんと返しなさい」
「いけずですぅ~」
借りパクする気だったんかい。
「ノアちゃんとノエルも怪我の無いようにね」
今のツクヨミが加減出来るのか微妙なところだ。しかもこれアイリスにいた頃よりまた一段と強くなっているのだろうし。ラヴェリルと同じだ。私のスペックを私以上に引き出す筈だ。失敗したなぁ。もっと加減しておけばよかった。