40-70.教育の成果
「はぁ……」
流石のイケイケノアちゃんも頭を抱えてしまった。ノエルとセラフの存在はそれだけ衝撃が大きかったようだ。
「ところでベーダは?」
ニクスが空気の読めない質問で無理やり空気を入れ替えようと試みる。
「……」
「……ごめん」
流石に無理があったようだ。そりゃそうだ。
「オリジナル、いえ、ノア。私はあなたと異なる存在です。どうかご理解ください。受け入れろとまでは言いません。先ずは見逃してください。深く考えるのは追々で構いません」
「そうよ。ノア。セレネが増えたようなものと考えなさい。彼女があなたと心を共有しているように、私達はあなた達と記憶を共有しているだけよ」
「無茶を言いますね。ですが仕方ありません。今更問い詰めても着地点も見つけられませんしね。良いでしょう。二人の事も受け入れます。先ずは話をしましょう」
「もしかして今すぐ?」
「当然です。深層に潜りましょう」
さっき散々……いえ、なんでもないです。
それから再び深層に潜った。しかも何故かベーダちゃんまで一緒に。
「えっと? なんで?」
「成長を見てあげてください」
「なによここ!? 真っ暗じゃない! こんな所に連れてきて今度は何するつもりよ!?」
ほんとに成長してる?
「ベーダ。アルカの言う事をよく聞くように」
「っ! はい! ノア姉さん!」
あれ? めっちゃ怯えてる? いったい何があったの?
「仕方ないわね! ノア姉さんの言いつけだからアンタに従ってやるわ! ありがたく思いなさい!」
「ベーダ」
「ひぃっ!? なんで!? 言われた通りにしたのに!?」
なるほど。ノアちゃんも苦労しているようだ。流石に一日で常識まで身に着けさせるのは無理があったか。けど一応良い子にするつもりになっただけでも格段の進歩よね。やるわね。ノアちゃん。
『情操教育プログラムを試しましょう。こんな事もあろうかとアイリスに備えてあります』
流石シーちゃん。準備が良い。
「容赦なくやっちゃって」
『イエス、マスター』
どのみちこの子には更生が必要だからね。けど場合によっては刑期を短くしてあげてもいい。まだまだ子供だからね。教育次第でそこら辺はどうにでもなるだろう。
「私達もアイリスを使わせて頂きます」
「どうぞ~」
シーちゃんとベーダちゃんの二人に続いて、ノアちゃん、ニクス、ノエル、セラフの四人もアイリスに移動した。これで残ったのは私(達)とクロエだけだ。
「やっば。マキナの事忘れてたわ。声かけなかったのは失敗だったわね。後でまた詰められるんじゃないかしら……」
「マキナとは誰の事なのです?」
クロエにも皆の事紹介していかないとね。
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「アルカ」
「おかえり。ノアちゃん。話し合いはどうだった?」
「一先ず心配は要りません。それより次はクロエを貸してください」
「ノエルとセラフは?」
「そちらもまだ暫くお借りします」
あらら。私だけハブにして何を話し合っているのかしら?
「そんな顔をしないでください。まさか私の事が信じられないのですか?」
「そんなわけないじゃない。普通に寂しいだけよ」
「我慢してください。たったの小一時間程度です」
そうなんだけどさ。
「良い子にして待っているのですよ」
私の頬にキスをしてからノアちゃんの後に続くクロエ。ノアちゃんは一瞬反応を示したものの、結局何も言わずに戻っていった。
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「ただいまなのです!」
尻尾ふりふりクロエが飛びついてきた。この様子を見る限り数日は潜っていたようだ。
あれ? そう言えばベーダちゃんは? 先に潜った筈なのにまだ戻ってないのよね。大丈夫かしら?
「帰還致しました。マスター」
お、噂をすれば。
「まっマスター!」
え? ベーダちゃん?
「ほっ本日はお日柄も良く!」
いや、ここ深層だから空とか無いんだけど。
「シーちゃん?」
「バッチリです」
さいでっか。
「じゃあそろそろ名前を教えてくれる?」
「?」
あれ? 何故そこで疑問を抱く?
「ベーダ」
「はい!」
シーちゃんにも躾けられてしまったらしい。ちょっと可愛そうになってきた。
「あ! えっと! 自分は元々名前もありませんでした! マスターから付けて頂いたベーダを名乗らせて頂きたく思います! お許し頂けますでしょうか!?」
「えっと……それは良いんだけど……話し方元に戻してもらっても?」
ちょっと居た堪れない気持ちになるからさ……。人格変わりすぎでしょ……。
「イエス! マスター!」
なんでマスター呼びなのかしら。シーちゃんの影響よね?
「シーちゃんは良いの?」
反対しないの? 特別感あったでしょ?
「マスターを崇拝する者が増えるのは良い事です」
崇拝はされたくないなぁ……。
情操教育プログラムとやらについては見直しの必要がありそうね……。




