表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1222/1366

40-66.ゴリ押し会話術

「アンジュは今後どうするの?」


「如何様にも」


「違うわ。アンジュ自身の目算を聞きたいの。ううん。こんな堅苦しい言い方も違うわよね。アンジュの望みを教えて。私達の家族になって何をしたい? このままアイリスで遊んでみる? 魔力や神力の使い方を学びたい? 自分だけのフィリアスが欲しい? 露天風呂に入るのが楽しみ? 食べてみたい料理がある? 他に会ってみたい人は? 私以外の推しは? その娘のどんな所が好き? 特に思い出深い出来事は? 一番ハラハラしたのはどんな時? あの時ああすればよかったとかある? これから私達に何をしてほしい? いっぱい妄想してきたんでしょ? 皆そうするもんね。私だってそうする。それもまた物語の楽しみ方だから。登場人物になる事を憧れていたなら尚更よね。全部聞かせて。時間はいくらでもあるから。アンジュの考えを知りたいの。私もアンジュの事を好きになりたいから」



「……それは難しいかと存じます」


「物語に影響を与えてしまうのが怖いから?」


「仰るとおりです」


「私が頼んでいるのに? アンジュは私の気持ちになんか興味は無いの?」


「っ……そんなはず……」


「私と家族になってくれるんでしょ? それともお人形遊びがしたいだけ?」


「いえ! そんな! 私はただ!」


「なら先ずはお話ししましょう。どんな些細な事からでも構わないわ。私にアンジュの事を教えて。全部あなたの口から聞かせて。いきなり家族は難しいでしょうから先ずはお友達からね。けど気負う必要は無いわ。最初は普通で良いの」


「……」


「安心して。別に撤回するつもりも遠ざけたりするつもりも無いわ。私はこう思っただけ。もしかしたらアンジュは普通の人付き合いを知らないのかもしれないと。何でもわかるから聞く必要が無かったのかもしれない。姫という立場があったから周りもそれで納得していたのかもしれない。けどそうじゃないの。皆最初は何も知らないの。相手から教えてもらわなきゃ相手の事なんてわからないの。だから私達に合わせてほしいの。私達と同じ目線で言葉を交わしてほしいの。私達にアンジュ自身の事を教えて。観測者だとか人気の舞台女優だとかは一旦忘れてしまいましょう。大丈夫よ。心配しないで。それでアンジュが誰かに害されると言うなら私はその誰かを決して許しはしないから。あなたは私の家族となったんですもの。実態や心の繋がりはどうあれ、私はもうあなたを受け入れて守り抜くと決めたの。その覚悟を持って手を伸ばしたの。あなたはそれを握ってくれた。あなた自身がどう考えていようとも私の心は変わらない。あなたに振り向いてもらえるまで何度でも問いかけ続けるの。あなたの事を教えてほしい。私としたい事を教えてほしい。私にあなたの望みを叶えさせて。私と普通の家族に、友達になってください」


 もう一度手を差し出す。



「……」


 アンジュは私の手を見つめるだけだ。その表情からは何の感情も読み取れない。



「はい、握手」


 私は眼の前にいるアンジュを敢えて抱き寄せ魔法で腕の中に呼び寄せる。そのままアンジュの手を握りしめて微笑みかけた。



「!!?」


 アンジュの表情が少しだけ驚きに染まった。



「このままキスでもしてみる?」


「……ご容赦を。これ以上は心臓が保ちません」


「もしかして緊張してただけなの?」


「…………違います」


 あらあら♪



「ふふふ♪」


「……なんですか?」


「一つアンジュの事がわかったから♪ この調子ならきっとあっという間ね♪」


「……なるほど。これが皆さんの感じていたものですか」


「どんな風に感じたの? それも教えてほしいな♪」


「内緒です。ですが他のご質問にはお答えしましょう」


「じゃあ改めて一つずつ聞いていくわね。私以外で一番推してるのだあれ?」


「やはりノアさんです」


「ふふ♪ 私達気が合いそうね♪」


「セレネさんもハルさんも皆さん魅力的です。それにニクスさんもとっても可愛らしいと思います」


「うんうん♪ それから? それから?」


「もう少しカノンさんにも優しくしてあげてください」


「そうね。私も反省してるわ」


「それからグリアさんとの進展もずっと待っているんです」


「そうね。クレアやエルヴィともデートしたいわ」


「ツクヨミさんやルチアさん、アウラさんもです」


「そうね。また怒られそうだものね」


「アリスさん達の事も放置しすぎじゃないですか?」


「私きっと近々軟禁されるから、そうなったらへスティの件を探ってみましょう。アリスだけじゃなくてメアとナハトとも会いたいし。アンジュも付き合ってね♪」


「あのロボットには一度乗ってみたいです」


「良いわね♪ なんならシーちゃんに複製してもらって専用機を用意してあげるわ♪」


「私に扱えるでしょうか?」


「むしろ相性良いんじゃない? ニュー◯イプみたいなものでしょ?」


「ニュータ◯プ?」


「えっと……知覚能力とか何か凄いパイロット?」


 でいいの? 細かい事はちょっとよくわかんない。


 それはともかく、アンジュにも知らない事はあるのね。そりゃそうよね。あくまで私を見つけた時からの事しか知らないんだし。それに私を観測の起点としているなら私が見ていないものは知らないわけだ。多分ノアちゃんとか私の記憶からあのアニメを見た娘達もいるはずだけど、その娘達と一緒にアニメも視聴していたわけではないのだろう。そんな時もあったのかもしれないけど、全部ってわけではないようだ。



「アルカさんのお力になれるでしょうか……」


「え?」


「いえ、なんでもありません」


 力になるつもりは無いんじゃなかったの? 私の想いが伝わったから? それとも本当はただ自信が無かっただけ? 自分には何の力も無いから役立てないと思ってたとか? それで干渉してはいけないなんて言って誤魔化してたの?



「なんですか? その顔は」


「ふふ♪ なんでもないわ♪」


 やっぱり私はまだまだアンジュの事を知らないのよね。それでも少しずつ見えてくるものもある。アンジュも見せてくれるようになってきた。良い調子だ。私達はきっとすぐに仲良くなれる。ハルちゃんはもっと短時間で攻略してたけど。まあ焦る必要はない。何時も通り時間はたっぷりあるんだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ