表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1221/1239

40-65.オタサーの姫

「「………………ふふ♪」」


「ねえ? これ何してるの?」


「意気投合したようです。マスター」


 何故か見つめ合って微笑み合うハルちゃんとアンジュ。しかもハルちゃんは早くもアンジュの膝の上だ。まったく。ハルちゃんの浮気グセにも困ったものだ。ぷんぷん。



「皆さん。ご心配ありがとうございます。ですがどうかご安心ください。確かに私自身に力はありませんが、これでも"お友達"は多いのです。かの者達の力を持ってすれば、ただ見る事しか出来ない無力な少女とでも意思を交わし合う事が可能なのです」


「えっと? つまり? とっても強いファン仲間がいるから守ってくれるって事?」


「はい♪ その通りでございます♪」


 なるへそ。抜け目ない。


 と言うか、わざわざ部屋を離したのに普通に私達の話を把握していたのね。このアイリス内で分けた部屋って、別に地続きの空間に存在しているわけでもないんだけど……。



『ならば念話ならどうです?』

『全部念話で話すのも面倒じゃない』


「念話の傍受も可能です。私に念話は扱えませんが。残念ながら魔術の素養が無いようなのです」


 使えるならとっくに我慢できずに話しかけてきてそうだものね。本人は観測者にすぎないから干渉はしないなんて言っていたけれど。



「傍受してる自覚があるならやめなさいよ!」

「それは覗きと言うのです。私達にドラマを演じているつもりはありません。今後はプライバシーを遵守してください」


「これは失礼致しました。そうですね。調子に乗っていたのは認めましょう。二度と言及は致しません」


「覗くなっつってんのよ!」

「さては全然反省する気は無いですね」


「申し訳ございません」


 ダメだ。譲る気無いわ。これ。



「ねえ、お願い。アンジュ。私のことはいくら覗いても良いからさ。皆には気を遣ってあげて」


「はい♪ アルカさん♪」


『そんな曖昧な指示じゃ……いえ、先ずは話し合うんだったわね』


 そうよ。何かをお願いしたいなら仲良くなってからじゃないとね。むしろアンジュが自分から遠慮したくなるようにしてあげなきゃ。


『自分も登場人物の一人になったのだとわからせてやりましょう。小春先輩』


『わからせ~』


 ダメよ。ヒサメちゃん。そういう言葉覚えちゃ。ヒサメちゃんはいつまでも良い子のままでいて頂戴。


『がってん~』


『先輩も大概ですね』


 この件に関してヤチヨには言われたくないかなぁ。



「アンジュ。やっぱりあなたの事を教えてくれる? 私はあなたと対等な関係になりたいの。一方的に知られているだけでは足りないわ。先ずはそこからよ。本当の意味で家族になりましょう」


「はい♪ 喜んで♪」


 う~ん……やっぱり舞い上がってるだけっぽいなぁ……。まんま、推しキャラからプロポーズされたって感じっぽい。夢のシチュエーションにテンション爆上がりってとこだね。


 それを姫様としての立場からくる経験と、"お友達"への気遣いで強引に律しているだけな気がする。だからきっと悪い子ではないのだろう。けど今目の前に立つ私を本当に見てくれているとは思えない。


 私だって覚視は使えるのだ。アンジュやノアちゃん程じゃないけど対面した相手の意識の向きとか勢いは読み取れる。この娘の中で強い想いが渦巻いているのはわかるのだ。同時にそれが私に向かう時、普通の人とはどこか違っているのも間違いない。


 うん。だからこそだ。やっぱりイロハの言う通りなのだろう。この娘は普通の娘だ。少しばかり目と耳が良くて付き合う友達が上位存在ばかりだっただけの。そんな娘だ。思い込みと勘違いも普通に起こすただの幼い少女だ。


 それでも思っていた以上に自身の立ち位置を理解してもいるようだ。"お友達"から加護も貰ってるみたいだし。誰か入れ知恵した存在でもいるのかもしれない。


 良かった。その上位存在が善良な存在で。少女の危うさを見咎めて守ってくれたのかもしれない。ありがとう。名も知らぬ誰か。私のファンだと言う少女が知らずの内に傷つくのを止めてくれて。それと見るのは構わないけど、影響を及ぼす時はよくよく考えて『やめなさい!』


 イロハ?


『ダメよ。アルカ。それ以上はやめなさい。あなたまでアンジュと同じ事やらかしてどうするつもりよ』


 ……そうだね。ごめん。うん。もう考えない。



「アルカさん? 今何かされました?」


「え?」


「少しばかりお友達が騒がしくて……あ、ごめんなさい。なんでもないです」


 アンジュも口止めされた?


『ここどこだと思ってるのよ……。わざわざ深層に入ってからアイリス使ってるのにどうして普通に話しかけてこれるのよ?』


 イロハ。もう忘れよう。


『そうね。私が言ったのよね……』


 ふふ。気になるよね。一度知っちゃうと。良くないとは思っても。


『それでもよ。お互い気をつけましょう』


 ええ。そうね。大丈夫よ。私達なら。


『ハルもいる』

『ふたりだけ』

『ちがう』


 ええ。もちろん♪


『裏切り者がしれっと入ってきたわね』


 もう。そういう事言わないであげてよ。ハルちゃんはやるべき事をやってくれていたのよ。


『そう』

『アルカの』

『いうとおり』


『おともだち』

『なった』


『つぎ』

『もっとなかよく』

『かぞくなる』


 頼りにしてるわ♪ ハルちゃん♪


『アルカも自分の事棚上げして浮気だとか言ってたじゃない。でも良いわ。許してあげる。自分に怒ったってしょうがないものね』


 そうよ。私達は三人で一人なんだから。


『あらそい』

『ふもう』


『ほら。もうこっちはいいから。それよりアンジュと話しなさい』


 は~い♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ