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40-64.対策会議

「なんでそこでクロエなのよ。ノエルの相方は私でしょ」


「モフモフが必要なのよ……でもセラフもいらっしゃい」


 両脇にモフモフ(ノエル&クロエ)を抱え込み、膝に座ったセラフの綺麗な髪に顔を埋める。



「すぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」


「いつまで吸ってんのよ!? 吐き出しなさいよ!」


「なんでセラフはそんな怒ってるの?」


「アルカのせいよ!!」


 なんでさ……。



「それで? マリアンジュさんはどうするのですか?」

「危険よ! あんなの排除するべきだわ!」


 やっぱりセラフの様子がおかしい。セレネだったらこんな時意味もなく怒ったりしない。多少の事なら余裕の表情を崩さない。上から目線で知ったような事を言ってみせる筈だ。



「何時もそんな事思ってたの!?」

「迂闊ですね。アルカ」


 あ、やべ。



「ごめんてば。もう虐めないで。正直私も今回ばかりは混乱してるのよ……」


「無理もありません」

「仕方ないわね!」


 ほんとどうしたものかしら……。あの娘への向き合い方がわからないわ……。



『私も一つ知ったような事を言っても良いかしら?』


「珍しいわね。イロハがわざわざ確認するなんて」


『気を遣ってあげてるんじゃない』


「ありがと。それで?」


『たぶんだけど、あの娘の言った通りなのだと思うわ』


「なにが?」


『あの娘はただ見えているものが多いだけなのよ。それ以外は普通の人間と変わらないの。けれど実のところ本人自身も勘違いしてしまっているの』


「勘違い?」


『他の観測者達とやらを自分と同等の存在、いえ、自身をそれらと対等な存在だと誤認してしまっているのよ』


 あ~……。ありそう。なんかナチュラルにズレてそう。



『けどあの娘に出来るのは見る事だけよ。ただそこから考察を重ねていっただけ。それ以外はただの非力な少女でしかないの。確かに姫としての立場と合わせれば人間の社会でなら無双出来たのでしょう。万能感すら感じていたのかもしれない。けれど私達と共に来ればそんなの通じない。あの娘の力は役立つけどあの娘自身には何も出来ない。だから過剰に恐れる必要は無いわ。警戒する必要もない。精々普通の女の子として受け入れてあげましょう。力に酔って調子に乗っている哀れな少女を導いてあげましょう』


 まあ、うん。イロハの言いたい事もわかるんだけどさ。



『何が不満なのよ?』


「不満って言うか……ほら。そういうのってこっちからも観測すると色々問題あるでしょ? 深淵を覗く時は~ってやつとか、推しから認知された~とか。厄介オタクが過激な手段に出ないとも限らないじゃない?」


「アルカもアルカで調子に乗ってるわね」

「ですが事実です」


『つまりアンジュを近づけさせる事でそういう輩までもが寄ってくるかもしれないってわけね。そうね。アルカの言う通りかもしれないわ』


「でしょ? だからどうしようかなって。側に置いておいて良いのかな? かと言って野放しにも出来ないだろうし」


 逆にアンジュが狙われるかもしれない。何か見てはいけないものを見たりとか、今回抜け駆けした事で私の観測者達とやらの不興を買うかもしれないし。



「気にしすぎなのです。全部悪いのは姫様なのです」


 身も蓋もない。事実だけども。



「クロエの言う通りね」

「ルネルさんに師事した事があるなら全く制御出来ないという事もないでしょう。見ない事だって出来た筈です」


「けれど今回のアンジュは明らかにファンの領分を逸脱していたわ。アイリスを使うよう指定してきたのは他の観測者達から覗かれにくくする為なのでしょうけど、それもおそらくイオスやラフマのような高位存在相手には意味が無いでしょうね」


 そんなのがアンジュの暴露と抜け駆けに怒って仕掛けてきたら洒落にならないわよね……。


 アンジュもあれできっと興奮して舞い上がっていたのだろう。自制が利いていたとは言い難い。地味にセフィ姉やルネルに関するネタバレをやらかしていたし。


 アンジュの言葉を借りるなら、ファンの一人が画面内に写り込んで役者と視聴者に直接ネタバレをかましたのだ。他の視聴者達がブチギレる可能性は十分に高い。



「とにかく先ずはアンジュと話してみましょう。別に話してわからない娘って決まったわけじゃないものね。対策も一緒に練っていきましょう。なんならルネルに来てもらっても良いわけだし」


 お師匠様の言葉なら素直に聞き入れるだろう。



「そうね。きっと時間が必要よ」

「また暫くこちらに籠もるとしましょう」


「そういう話しなら主も連れてきて欲しいのです」


「悪いけどジゼルはまた後でね。どの道修行期間も確保するつもりだったから」


 ジゼルだけは商会の代表として表に出ないわけにはいかなかったから連れてこれていないのだ。でもあの話ジゼルには聞かせられなかったものね。かえって良かったのだろう。



「仕方ねえのです。なら今回は姫様の方に注力するのです」


「ありがとう。クロエ」


 さて。アンジュの所へ戻るか。今はハルちゃんとシーちゃんが別室で見てくれている筈だ。良い子にしていたかしら?

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