40-61.無計画の代償
『なんか』
『ふえてる』
『ちょっと目を離した隙に驚きよね』
『側近は増やさない約束では?』
『ど~りょ~ふえた~』
『賑やかね。アルカの中って』
『知ってはいたのですがこうして体験すると違いますね』
『すぐに慣れます。それよりハル。二人の融合を』
『おけ』
『そんなすぐにやらなくても良いんじゃないかしら?』
『そうです。先輩が二人分怒られてからにするべきです』
イロハが言ってるのはそんな理由じゃないでしょ?
『少し様子を見ましょう。ただでさえ不慣れな身体なんだから』
まあそれもそうね。シーちゃんもそれで良い?
『イエス、マスター』
『何よ。期待させておいて』
『少し物足りませんね。ですがオリジナルとの差別化を図るならば融合しない方が良いのかもしれません』
ノアちゃん、じゃなかった。ノエルは冷静だ。私もごっちゃにしないよう気をつけよう。
「悪いけど今日は帰るわね。クロエも連れて行くから」
『ひつようない』
『ハルの分体をクロエに変身させて紛れ込ませたわ』
なるへそ。
「ならリジィに会いに行こうかしら」
「また他の女なのです? アルカは節操ねえのです」
「そらわかっとったことやん」
どうして二人で私の手を握るのかな?
「良いじゃん。今日は泊めてもらいなよ。どうせ今更家に帰ったって大目玉だよ。せめてお説教は一回で済むようにしてあげなよ」
なにその間違った気遣い?
「つまりマリアンジュ姫を口説いてから帰れと?」
「うん」
「でも残念だったわね。今まさに叱られ始めたところよ」
「分体が?」
「ええ。帰ってきたセフィ姉が見抜いたの。驚きよね。成長早すぎよね。まさかこうもあっさり見破られるとはね」
「何で怒られたのさ。本体は部屋で寝てるとか言っておけばよかったんじゃないの?」
「そんなの通じないわ。本体が家にいない事も合わせて筒抜けみたいよ」
「それでどうするつもりなのさ?」
「どうもこうも無いわ。私がコソコソしてる事は気づかれてしまったもの。一度帰らなきゃ」
「それはダメだってば。そのまま軟禁されるのはわかってるでしょ? 計画が全部流れるよ?」
「ちゃんと許可とってリベンジしましょう」
「許可なんて出るわけ無いよ。そんなのアルカもわかってるでしょ」
そうなんだけどさ。
「コレットと一緒にいる事にしよう。コレットが帰れないからエーリ村に泊まる事にしたって言い張るんだ」
「コレットちゃんはもう帰って寝てるわよ。ノアちゃんが無理やり帰らせたもの」
というか私の分体の一人がコレットちゃんについているのだ。今も私の部屋で私の分体がコレットちゃんを寝かせたのだ。あの娘はまた消沈して晩ご飯も食べずに眠ってしまった。折角今朝は少しだけ元気になってくれたのに。許すまじ。元伯爵。
「先に打ち合わせておくべきだったかぁ……」
「マティとリジィとキティはエーリ村に残ったわね。あの父親がいないから心配も要らないものね。それにお母様の看病もしなきゃだし」
「ノアとトニアとマキナとベーダは?」
「ノアちゃんは村に残ってベーダちゃんの躾けを続けているわ。ノアちゃん自身は帰るつもりないみたい。トニアはコレットちゃんと先に帰されたの。マキナは相変わらずリジィの側にいるわね」
「……これで全員だっけ?」
「そうね。今回の件に関係しているのはこれくらいね」
「とすると、アルカの居場所はやっぱりエーリ村だと思わせるしかないね。口実は……ノアに口裏合わせを頼む?」
「その肝心な理由はどうするのよ?」
「リジィ達のお母さんの看病を手伝うとか?」
「単に心労で倒れただけよ。手助けが必要な程じゃないわ」
「ノアと一緒にベーダの教育?」
「それこそノアちゃんに任せて早く帰ってこいって言われるわよ」
「なんで口実くらい準備しとかなかったのさ!」
成り行き任せでここまで来てしまったからよね……。
「とにかくなんとか誤魔化して! 分体とはいえアルカ自身が居るんだからそこまで強く問い詰めてはこないでしょ!」
まあ確かに今はまだそんなでもないけど……。でもこれは気付いたのがセフィ姉だけだからだ。まだ城で仕事中のカノンにも話しが行けば誤魔化しきれないだろう。
「セフィ一人くらいちゃっちゃと籠絡してよ! 出来るでしょ! アルカなら!」
無茶を言う……。
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「えっと、と言うことで来て頂きました。セフィ姉に」
はい、拍手~。
「「……」」
ちょっと? どうしてそんなに睨んでくるのかしら?
「……バカじゃないの?」
わぁ。すとれーとぉー。
「それで? どういう事か説明してくれるんだよね? ここはどこ? それにアルカの手を握っている二人は? 私には見覚えの無い娘達なんだけど?」
わぁ。おこってるぅー。
「かくかくしかじか」
洗いざらい全てを話した。何故かエンジェルズの事までバレた。それから拝み倒した。どうか見逃してくれと。もう少しだけ、事が済むまでカノンには黙っていてくれと……。