40-58.イメチェン
「あら。そっちも似合ってるじゃない」
ノアちゃんとセレネの髪が綺麗な金色に変化した。ニクスと同じ色だ。本来の二人とは違ってこの娘達はニクスに生み出された存在だ。母娘というより三姉妹って感じだけども。
「それで? 名前は決まったのかしら?」
「もう少しくらいなら待ってあげてもよいのでは?」
この娘達、別に一心同体ってわけでもないのね。元のノアちゃんとセレネ以上に双子みたいなものなのに。
「別にそういうわけでもないわ」
「私達の魂は繋がっていません」
ああ。なるほど。そこは大きな違いだろう。
「いっそ融合してみるのはどうかしら?」
今の二人なら出来るんじゃない? 繋ぎが必要ならハルちゃんでも混ぜてみる?
「数を減らそうって魂胆ね」
「ですが案自体は悪くありません」
一応乗り気のようだ。
「シーちゃん」
『危険です。マスター。やるなら外でお願いします』
は~い。
まあそれもそうだよね。折角確立されてる技術があるんだしね。これ以上アイリス世界で無茶したら何が起こるかわからないものね。
「いっそアルカの心に住まわせなさい」
「名案です。外で活動すれば混乱を招きますからね」
「シーちゃん」
『……特別に許可します』
よかった。これで時間も稼げそうだ。一先ず側近に加えよう。お披露目はタイミングを見てから決行しよう。
「でも私との融合は止めておきましょう。向こうのノアちゃん達を差し置いてあなた達を優先する事は出来ないわ」
「それで良いわ」
「オリジナルの邪魔をするつもりはありません」
あら。物わかりが良いのね。
「けれど」
「ですが」
おっと?
「私達は私達として取りに行くわ」
「その為にも名前は必要です」
あくまでノアちゃんとセレネとは別人として生きると。記憶とか自己認識とかどういう感じになっているのかしら?
「難しいところね」
「オリジナルとは違う要素も多いですから」
本人達もよくわかってないのね。そういえば二人は私の思考覗けてるのね。慣れすぎて疑問に思わなかったけど。でも本来アイリスの中だとニクス達だって私の思考は覗けないはずだ。私がそう設定してれば開示されるけど。今は設定も弄ってないし。
「たぶん向こうの世界でも変わらないわ」
「なんとなくですが繋がっている感触があります」
ニクス経由で? アイリスの中でも読めているのはシーちゃん由来のってこと?
「いい感じに混ざったんじゃないかしら?」
「私達はニクスとシイナの娘というわけですね」
なるへそ。
「だってさ。シーちゃん。認知してくれる?」
『イエス、マスター』
それは何よりね。
「ニクスとシーちゃんの娘かぁ……」
「二人の名前を混ぜるのは難しいんじゃないかしら?」
「いっそオリジナルの名前も混ぜてみます?」
うむむ……。
「もうツヴァイとドゥーエでいいんじゃない?」
コソコソと縮こまっていたニクスが許された空気を感じ取って乗り込んできた。ニクスのそういうところ大好き。
「私は構いませんよ」
「私は反対よ」
ノアちゃんとセレネの意見は真っ二つに別れた。
「シーちゃんはどう? なにか案はあるかしら?」
『翼と輪も付けてみては如何でしょう?』
名前じゃなくて?
「「採用」」
早速二人の身体にシーちゃんと同じ天使の装飾セットが現れた。可愛いけどこのまま魔改造続けるの? あと猫耳天使ってニッチすぎない?
「これだと私の要素薄まらない? 相対的にさ」
ニクスは不満を零した。二人は自分のものだと強調したいらしい。すっかりやらかした負い目は消え去ったようだ。調子のいい神様だ。
「なら力を分けて。お母様」
「名案です。私も神の力には興味があります」
エンジェルズはオリジナルと別方向にスキルツリーを伸ばす方針のようだ。シーちゃんのナノマシン技術もあるしね。けどその方向性だとマキナの下位互換にしかならなくない?
「それもそうね」
「とは言えマキナは全員の力を受け継いでいます。私達に限らず誰にでも言える事かと」
それはそう。
「クロエとジゼルはどう思う?」
「話について行けてねえのです」
「酷い放置っぷりやったよね」
「そうよね。ごめんなさい。ちゃんと説明してあげるわ」
ついでにそのまま本題に移ろう。話し合いながらエンジェルズの名前も考えるとしよう。