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40-56.覚悟の答え

「質問を続けよう」


 えっと、次で四つ目ね。


 ニクスが問いかけた一つ目と二つ目は、ジゼルの覚悟を確認するものだった。ジゼルの答えを聞く限り、ギヨルド王国を裏切って皇帝側につくのは難しそうね。そこは上手く口裏合わせて関与を最低限にしてもらうしかなさそうだ。事態の収束後にマニャール商会を取り潰さずに済む程度にしてもらわなきゃだ。当然ギヨルド王国側には気付かれないように。


 三つ目の質問はクロエ達とジスカール伯爵家の関係性についてだ。マニャール商会は先代ジスカール伯のお世話になっていた。その義理で現ジスカール伯にも協力している。そしてその子息であるローラン・ジスカールは二人の幼馴染だ。


 ついでにクロエの師がルネルだと判明した。どうやら覚視の習得にまでは至っていないようだが、その一歩手前までは到達しているようだ。しかも高い素質を持っているっぽい。マキナの隠蔽を見破りかけたのはそれが原因なのだろう。ルネルの弟子と言われれば納得だ。再会したら今度こそ最後まで鍛え上げてもらうとしよう。きっとすぐ成長するだろう。



 それでだ。ここでも話し合わなければならない事が沢山あるのだ。


 一つ、マニャール商会の今後について。


 一つ、ジスカール伯家の目論見について。


 一つ、皇帝位簒奪計画の時間稼ぎについて。


 一つ、ジゼルとクロエの身柄について。



「四つ目の質問だ。今後君達の身柄はアルカが預かる事になる。その人生を捧げる覚悟は本当にあるかい? 言っておくけどこれは人の一生程度の話ではないよ。千年でも万年でもアルカの気が変わるまでは付き合ってもらう。誓うのならマニャール商会の今後は保証しよう。これから私達が行う全ての事を君達にも共有しよう。ギヨルド王国の事は君達に委ねよう。必要な力はアルカが授けよう」


「断ったら?」


「記憶を消してサヨナラだ。私達に関する事は全て忘れてもらう。それ以外は元通りだ。私達も無理やり二人に迫る事はしないと誓うよ」


「……その約束が果たされるとは限れへんわなあ」


「そうだね。記憶は消せるだけじゃない。書き換える事だって出来るんだ。どうしても諦めきれなければ認識を書き換えて無理やり攫ってしまうかもしれないね。だから私達はそんな事はしないと誓うだけだ。それを信じられるかは君達次第だ」


「問題はそれだけじゃねえのです。記憶を消されて放り出されても私は間違いなく捕虜となるのです。しかもその時は個人的に気に入ったからなんて温情も無く、ただ帝城の冷たい牢獄へと連れて行かれるだけなのです。そしてギヨルド王国と主の事を吐かせる為の尋問にかけられるのです。当然私は何も話さねえのです。この命が尽きたって絶対なのです」


「自分はどっちの味方やねん……」


 クロエったら、何故かニクスと一緒になってジゼルを脅し始めたわね。



「悪魔に魂売んのはうちだけで十分や。クロエは見逃したって」


 だから悪魔じゃないってば。魔女だってば。



「ダメなのです。地獄の底までご一緒するのです」


 地獄に引きずり込もうとしてる人が何か言ってる。



「クロエがうちの気持ちに応えてくれるならええで」


「人のせいにしてないで押し切ってみせろなのです」


「言うたな?」


「チャンスはいくらでもあったのです。土壇場で日和っていたのは主の方なのです。どうせ千年経ったって変わらないのです。なら万年でも億年でも挑んでみろなのです。そうすれば臆病で優柔不断な主でも覚悟が決まるのです」


「うぐっ……」


 あれ? そういう感じなの?


 なんだ。クロエもすっ惚けてただけなのか。と言うか全然素直じゃないのね。この子も。一見すると真っ直ぐな子にしか見えないのに。私もすっかり騙されたわ。



「アルカ。私も伴侶に加えるのです。主に見せつけてやるのです。主を奮い立たせてやるのです」


「アルカを当て馬にしようだなんていい度胸だね。そんなの本当に取り込まれるのがオチだよ?」


 何でニクスが答えるの?



「それはそれで構わねえのです。私だけでなく主の一番がアルカであったって構わねえのです」


 本気っぽい。なんか拗らせてる?



「妹分だからその気になれねえのは偽らざる本心なのです。そんな私の気持ちを関係ねえと吹き飛ばして迫ってくるなら応えてやってもいいというだけなのです。そこは主だからって手を抜かねえのです。そしてアルカが私や主の気持ちを知った上で横から奪うと言うなら喜んで受け入れるのです」


 そういう性癖? 好みのタイプがって話?


 あれかな? 気は強いけど本当は押し倒されたい的な? なんかちょっと違う? よくわかんないなぁ。いや、言いたい事はわかるんだけどさ。



「それこそアルカの得意分野だ。きっとクロエとアルカは運命の相手だったんだよ」


「ちょっとニクス。さっきから何勝手な事ばかり言ってるのよ?」


「据え膳だよ? 据え膳。食らっちゃいなよ」


「流石に私だって弁えるわ。そもそも寝取り趣味なんて無いし。やるなら二人とも纏めて頂くわよ」


「良い覚悟なのです。それでこそアルカなのです。ですがそれは認めないのです。主は私を押し倒せるようになるまでお預けなのです」


 実は逆調教していたわけね。自分好みに。とんだ忠犬だ。



「関係ないわ。私がハーレムの主よ。決めるのは私よ」


「わふ♪」


 そう。これが正解なのね。



「いらっしゃい。クロエ」


「はい♪ なのです♪」


 クロエを抱きしめて顎に手を添える。



「あなたは今、私の伴侶に加えろと言ったわね」


「言ったのです」


「私のものになりなさい。あなたの全てを差し出しなさい。あなたの一番大切なジゼルを寄越しなさい」


「断るのです。私は主のものなのです。欲しければ奪い取ってみせろなのです♪」


 なるほど。わざわざ口にすればそう答えるわけだ。面倒くさい娘だ。



「ジゼル。来なさい」


 クロエを拘束してすぐ側に宙吊りにし、今度はジゼルを抱き寄せる。



「うち、まだそんなんはちょっと……」


 顔を真っ赤にさせて俯くジゼル。



「大丈夫よ。ここは現実ではないの。本当の初めては取っておいてあげる。それより今は悪いワンちゃんにお仕置きしてあげましょう」


「え? ふぐっ!?」


 クロエの眼の前でジゼルの唇を塞ぎ、見せつけるように何度もキスを繰り返す。


 十分近くそんな事を続けてから、グッタリしたジゼルを正気に戻し、クロエの方を指し示す。



「さあ。やり方はわかったわね。今度はあなたの番よ。クロエにお仕置きしてあげましょう。クロエの望みを叶えてあげましょう。今なら抵抗なんて出来ないわ。あなたの気持ちを伝えてあげなさい」


 ふらふらしながらクロエにしがみつき、そのままクロエの唇を塞ぐジゼル。もう完全にやけになっている。何かを取り戻そうとでもするかのようにクロエを貪っている。



「はい。交代」


 ジゼルを引き剥がしてクロエにキスをする。そうするとムキになったジゼルが私を引き剥がしてクロエを奪い取った。


 それから再びジゼルを抱き寄せてジゼルにキスしたり、今度はジゼルに見せつけるようにクロエとキスをしたりと、入れ替わり、奪い合いながら続けていく。



「気分はどう? クロエ」


「最悪なのです。私の望みとは違うのです」


 説得力のない尻尾と表情だ。興奮が隠しきれていない。どう見ても悦んでいる。中々業の深い性癖をお持ちのようだ。



「そう? 随分と夢中になっていたじゃない。それにお望み通りジゼルが強引に迫ってくれたのよ?」


「一時的なものなのです。どうせアルカがいなきゃまた日和るのです」


「だってさ。ジゼル。反省が足りていないみたい。もう少し躾けてあげたらどうかしら?」


「堪忍してや……」


「あらら。いきなり飛ばしすぎたわね。まあ良いわ。何日か続けましょう。きっとすぐに慣れるわよ」


「次は私も参加しようかな」


「ニクスはダメよ。あなたにもお仕置きよ。指を咥えて見ていなさい」


「そんなぁ!?」

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