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8-10.記念日

もう訓練を始めてから長い時間が経った。


遂に季節は冬になり、

ノアちゃんと出会ってから一年が経とうとしていた。


寒くなって、ノアちゃんから頼まれてこたつを出す。


ルネルは最初は渋っていたが、

入ってみると大層気に入った。


まあ、お婆ちゃんとかこたつ好きそうだしね。


ルネルの要望でもう一つこたつを用意する事になった。

爺さんの所に頼みに行かなきゃ。

爺さんのあんな過去話を聞いといて頼みづらいけど、

ルネルが全然引きそうにない。



ノアちゃんも行きたがったが、

ルネルが人質とか言って開放してくれなかった。


そんな事しなくたって逃げたりしないわよ。


本当はルネルも一人になるのが寂しいのかもしれない。

毎日ノアちゃんと楽しそうにしているものね。


まさか、この国を出る時も付いて来るなんて言わないわよね?



私は渋々一人で出かけていく。

爺さんの店に寄るついでにあっちこっち回ってこよう。



「まあ、いいじゃろう。

というかお前さんは気にしすぎじゃ。

エルフがこたつ手に入れたくらいで世界が滅ぶわけなかろう」


爺さんは快く引き受けてくれた。

また受け取りに来ると約束して再び転移門を開く。


今度は私達の町のギルド長の所だ。

あらかじめ行くことは伝えてあるので、

直接会議室に転移した。



「久しぶりだな。ノアも元気か?」


「ええ。そっちは変わったことは?」


「いや、ここ最近は平和なもんだ。

こっちは気にせずアルカ達もゆっくりしているといい」


「そう。それは何よりだわ。

やっぱり私が災厄を呼ぶ原因なのかしら」


「笑えないし否定しづらいからそういう冗談は止めてくれ」


「悪かったわ。別にそんな事思ってないわよ」


「それがいい」


ギルド長の元を後にして、

次は直前まで私達がいた町のギルド長さんの所だ。



「本部は何か言っている?」


「いや、今のところは何も。

例の件も進展は無いようだ」


「そう。まあそう簡単にはいかないわよね」


「お前はそんな事を気にせずゆっくりしていれば良いんだぞ?」


「ついさっき、他の人からも同じ事言われたわ」


「皆そう思ってるって事じゃないか。

お前は何もかも気にしすぎだ。

もっと気楽に生きろ」


「ありがとう」


私はギルド長さんの元を後にして、

いくつか買い物を済ませて、

セレネの所に移動する。


「待ってたわ!」


セレネは私を見るなり飛びついてきた。


「久しぶり。セレネ。

私も会いたかったわ!」


私はセレネを抱き上げて、

その場でくるくるまわる。


セレネも大きくなった。

この子と出会ってからも、

もうすぐで一年だ。



きゃっきゃと笑うセレネを抱きしめて、

側で見ていたグリアの方を向く。


「あなたもやる?」


「結構だ。

馬鹿なことを言ってないで行きたまえ。

今日は久しぶりにセレネ君も一緒に過ごせるのだ。

時間を無駄にするものではない」


「ありがとう。

じゃあ、ちょっと連れて行くわね。

後のことは宜しく」


「ああ。任せておけ」


「ああそうだ、これ忘れる所だった」


私はいくつかの本を差し出す。

これまで王都に行った時など見つけておいたものだ。


グリアは一気にハイテンションになった。

見た目だけはクリスマスプレゼントを抱えてはしゃぎまわる子どものようだ。



「グリアさん。また散らかしたら承知しないからね!」


セレネも苦労しているようだ。


私はセレネを抱えたまま、

ようやくルネルの家に戻る。


「セレネ!」

「ノア!」


二人は久しぶりの再会を喜んでいた。



私は買ってきたお菓子や、料理を広げていく。

今日はパーティーだ。


爺さんの店に行くのが外出のきっかけだったが、

ノアちゃんと出会って一年のお祝いを盛大にやることにした。


残念ながらセレネは滅多に時間が取れないので、

少しフライングだが、一緒にやってしまおう。


ルネルはゲスト参加だ。


セレネとは初対面なので、

ノアちゃんにそっくりなセレネを見て大層驚いた。


あっという間にセレネとルネルも仲良くなった。

お婆ちゃんは人気ものだ。



そんな感じで遅くまで大騒ぎを続けた。


いつの間にかルネルが取り出したお酒を飲む娘達。


セレネは顔色一つ変えずに淡々と飲み続けている。

セレネはとんでもない酒豪なのかもしれない。


ノアちゃんは相変わらず豹変している。


実は、ノアちゃんは酔っている間の事を覚えていた。

本人も二度とお酒は飲まないと宣言していたのだが、

どうやらルネルにしてやられたらしい。


ルネルはノアちゃんの豹変ぶりを大笑いしている。



セレネはそんなノアちゃんを見て目を輝かせていた。

私に張り付くノアちゃんをどうにか自分に向けさせようと頑張っている。


どうやらノアちゃんに甘えられたいらしい。

このノアちゃん普段にも増して可愛いものね。

気持ちはとっってもよく分かる。


セレネになら少しくらい譲って上げたいんだけどな~

ノアちゃんが離れたがらないのだから仕方がないんだよな~


私も上機嫌だ。


明日のノアちゃんには悪いけど、

今はこの時を満喫しよう。



私は二人にプレゼントをした。

おそろいの髪留めだ。

私にも同じデザインの物を買ってある。


二人共とっても喜んでくれた。

セレネは早速身につけてくれた。

ノアちゃんなんて酔っ払ってからも握りしめている。


そんな姿を見てまた顔がニヤけるのを感じる。


二人共可愛い。



私と出会ってくれて、

家族になってくれてありがとう。


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