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8-9.苦戦

あれから訓練の内容は変わっていない。


ノアちゃんは合格と言われたのに、

いまだに私と一緒に同じ訓練を続けている。


最近では殆ど転ばされていない。

仮に転ばされても、

最初に私と立ち会った時のように、

自ら転がって直ぐに体勢を整えている。


ルネルの動きに反応する余裕が生まれたようだ。



ノアちゃんは私のせいで次の訓練に移れないのだろう。

その事を考えると情けなくてたまらなくなる。


けれど、二人は何も言わずに同じ訓練を繰り返す。

相変わらず、ノアちゃんは心底嬉しそうに続けている。




余計な事を考えている暇があるなら、

少しでも追いつけるよう努力をするべきだ。


私は訓練後に少し休んでから、

自主鍛錬も行うようになった。


たまにノアちゃんにも付き合ってもらって、

ノアちゃんが私の魔法を避けていくのを観察する。


やっぱり魔力が視えているようだ。

魔法の発動前に回避している。


ノアちゃんはルネルの教えを守って何も言わないが、

私の意図はわかった上で、動きは見せてくれる。




どうやったら私にも視えるのだろうか。

エルフにしか出来ないかもと思っていた。


ノアちゃんが獣人だから?


ルネルがこの訓練を続けている以上、

私にも視えるはずだ。


そう思いつつもきっかけが掴めない。


私だって普段から自分の魔力は扱っているんだ。

それを広範囲に広げるだけだ。


あの杖の力があれば周囲の魔力の動きすら感じ取れた。

その感覚を自らのものにするだけだ。


もう何度も経験しているのだから、

そう難しい事であるはずがない。


そうは思いながらも糸口が見つけられない。

ノアちゃんみたいに素直じゃないからかしら。




体内の魔力も杖の力で干渉した魔力もどちらも自分のものだ。

だから感じ取れるのだろう。


じゃあ、なぜ自分の外の魔力は感じ取れないのだろうか。

なぜ二人は感じ取れるのだろうか。


ノアちゃんは元々魔法使いでもなんでもない。

魔法使いの才能は無いと言われるほどに魔力も少ない。


それでもルネルと同じことをして見せている。

もしかしたら、聖女の力があってもエルフの魔法は使えるのかもしれない。


私は自分の魔力の感覚に囚われすぎているのだろうか。

自分の魔力と周囲の魔力は別のものとして考えるべきなのか?


けれど、全ての人の魔力が完全に別のものであるはずがない。

それだとルネルの力は成り立たない。


もっと本質的な何かを見つけなければいけない。

きっと表面上だけを見てしまっているんだろう。




私は目を瞑り、周囲に自分の魔力を放ちながら

魔力の流れを感じてみる。


自分の魔力が物体に当たって、

流れが変わっていくのを感じる。

これなら慣れれば周囲の把握はできそうだ。


けれどこんな方法なわけがない。

私の膨大な魔力量で無理やりやっているだけだ。

ノアちゃんなら直ぐに魔力切れになってしまう。


それにこれでルネルの動きを予測できるとは思えない。

魔力を視る事で相手の予備動作が視えるはずだ。


そうでなければルネルの妨害や

ノアちゃんの回避行動に説明がつかない。



探知魔法も同じことだろう。

あれは魔力の大きさがわかるだけで、

細かい流れがわかるわけではない


そもそも、私のイメージした魔法を使える能力で生み出したものだ。

仕組みもわかっていない。

参考にはならない。




もっと素直になろう。

自分の魔力を参考にするのはやめよう。

その先にあるのなら、エルフだけの技術にはなっていないはずだ。

人間にだって同じことが出来ていたはずだ。


そうはなっていないのだから、

他に方法があるはずだ。



私は魔力の放出を止める。


始めて魔力を知覚した時はどうだっただろうか。

あの感覚に囚われては意味がないけれど、

自分にとって全く新しい感覚を知覚するという事については同じはずだ。


この世界に転移して魔法を学ぶまで、

魔力なんてものは認識出来なかった。

けれど今ではそれなりに扱えている。


不可能に思える魔力を視るという行為も

同じように出来るはずだ。





そんな事を悩みながら、

ルネルに転がされる日々が続いていった。


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