1-12.作戦
翌日、私とノアちゃんはギルドへ向かった。
家を出た時、昨日ノアちゃんから聴いてた話を思い出して、
私は思わずノアちゃんの手を握っていた。
ノアちゃんは繋がれた手と私の顔を見比べて、
戸惑ったような喜んだような表情を浮かべただけで何も言わなかった。
ギルドに到着し、ギルド長にも必要な事だけノアちゃんの事情を説明した。
そうして三人でこれからの事を話し合った。
「つまり、実行犯とは別に黒幕がいるのだな。
確かにお前達が捕まえてきた男も自分達は指示されただけで
本当の事は何も知らないと主張している。」
「ノアちゃんのいた一族は誰かから依頼を受けて行動している。
一族の方から当たるなら、上の人間を捕まえないと黒幕の手がかりは得られないでしょうね。」
「あの者達は実力だけなら一族でも上澄みと思われます。
上級ダンジョンの深部に二人だけで行けるような者はそう多くはいません。
上手く利用すればおびき出すことも出来るかもしれません。」
「そうね。だけど切り捨てられる可能性の方が遥かに高いのでしょ?
捕まってしまった以上何を喋っているかわからないもの。」
「それならそれで、始末しに来る所を捕まえられるかもしれません。
なんとか餌として利用する手段を考えられないでしょうか」
「本当はやらせたくないけど、ノアちゃんは一族に情報を流すことはできるの?」
「はい。可能です。ただ・・・」
「問題はどんな情報を流すかね。
上手く、より上位の者をおびき寄せないと。
また使いっ走りが来たって意味ないもの。」
「ですね。」
「ちなみにノアちゃんは一族の居場所を知っているのよね?
冒険者を集めて襲撃しちゃうって手は?」
「難しいと思われます。派手な動きをすれば察知して逃げ出すでしょう。
全ての拠点を知らされているわけではないので、次は見つけられないと思います。
一族には私がこちら側に居ることはバレていますし。」
「そうよね~そんな上手くいくわけないわよね。
ノアちゃんから見て私が一人で潜入すれば潰せると思う?」
「方法によるかと。本気で壊滅を目的にするのであれば可能でしょう。
しかし、証言や証拠を得るためには丸ごと破壊しつくすわけにもいかないので難しいと思います。」
「あいつと組むのはどうだ?」
今まで沈黙していたギルド長がそう提案する。
「あいつってまさか?本気?」
「正直気は進まないが、緊急事態だ。背に腹は代えられない」
「いや~でもな~」
「あいつって誰のことですか?」
「う~ん。ちょっとね・・・」
言葉を濁す私にノアちゃんが不思議そうにする。
「かといって考えている時間も惜しいのよね・・・」
「やってくれるか?」
「そうね。やるしかないわよね。
その手段ならノアちゃんの問題も一緒に片付くし躊躇っている場合じゃないわね。」
「ならば決まりだな。奴の事は呼んでおくから夜また来てくれ。
作戦の詳細はその時に詰めよう。」
「わかったわ。ノアちゃんもそれで良い?」
「はい。では、ギルド長失礼します。」
私とノアちゃんはギルドを出て自宅に向かう。
「それであいつって誰なんですか?」
「う~ん、一応最高ランクの冒険者なんだけどね・・・
人格破綻者というか戦闘狂というかで、
関係は腐れ縁というかそんなとこ。」
イマイチ要領を得ない私の説明にノアちゃんは困惑する。
「大丈夫なんですか?その人」
「まあ、強さは保証するよ。
もう一人私がいると思ってもらえれば間違いないかな。」
「それは心強いですね!」
「ただ、下手すると証人ごと切り捨てかねないから注意しないと・・・」
「それは本当に大丈夫なんですか?本末転倒では?」
「そうなのよね・・・
まあ、その辺は私が上手いことやるわ・・・」
いまいち自信のない私の言葉にノアちゃんは不安そうだ。
「安心して!何もかも解決してノアちゃんの事は幸せにしてみせるから!」
「はい!信じてますアルカ!」
素直に頷くノアちゃん。
ノアちゃん可愛いなぁ。