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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
40.白猫少女と帝国動乱・前編

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40-43.急接近

「なんだかツヤツヤしているわね」


 トニアは早くも飛行魔術に順応したようだ。初めての空の上だと言うのに怯える様子もない。どころか私達の微細な変化すらも目敏く見抜いてきた。



「「「あはは~」」」


「それにニクスさんも機嫌が良くなったみたい」


 まあちょっとね。


 いやちょっとじゃなかったんだけどさ。たっぷり時間を要したよ。ほんと、ノアちゃんが付いてきてくれて助かった。私一人じゃ、最悪もっと機嫌を損ねていたかもしれない。



「さあ! 気を取り直して出発よ!」


 こういう時はゴリ押すに限る。幸い誰もツッコんで来なかった。心做しか視線が生暖かい気もするけど御愛嬌よね。



「マキナちゃん。もう少し東に飛んでくれるかしら。

 きっと居るとしたらその辺りだと思うの」


「ええ♪ 心得たわ♪」


 私達から情報を聞いたトニアは早速ターゲットの位置を絞り込んでくれたようだ。確信を持った様子で誘導してくれている。



「最初から頼ってくださればよかったのに」


 ノアちゃんがそれ言うの?

色んな意味で間違ってない?



「私だって人探しくらい出来るし」


 ニクスまで張り合ってきた。機嫌は治してくれたみたいだけど、それはそれとして私の気を引きたいモードは継続中のようだ。可愛い。



「ニクスの手を煩わせる程ではありません」


「わかってるよ。それくらい」


 今回はまったくのノーヒントってわけでもないからね。それに特別急いでいるわけでもない。神の力は最低限に。何時もの方針通りだ。



「いた」


「やるね♪ リジィちゃん♪」


「えっへん」


 またリジィが最初に見つけたようだ。

もしかしたら覚視の才能でもあるのかもしれない。



「あれが例の貴族が寄越した商人なの? たった二台の馬車だけ? しかも片方は荷馬車ですらないわよね?」


『皇帝にバレないよう動いているからでしょ』


「にしたってだよ?」


 どう見てもこんな場所に来るような編成じゃないと思う。


 荷馬車一台で来るならともかくだ。申し訳程度に布を被せて見た目を誤魔化しているが、そもそも箱馬車なんて普通はお貴族様しか乗らないのだ。せめて乗合馬車に偽装するとか何かなかったのだろうか。


 それにあんなにゾロゾロと護衛まで引き連れてしまっては、何かあると見せつけているようなものだ。これは関所の人達もとっくに買収されていると考えるべきなのかもしれない。


『そんなところでしょうね。流石に毎回あの箱馬車も一緒だったわけではないとも思うけど』


 まさかわざわざお貴族様本人がマティを迎えに来たの?


『もしくは伯爵の裏切りに釘を刺しにきたかね』


 結局あれじゃあ大して作物も積み込めないんじゃない?


『まだ大きく仕掛ける前なのでしょう。

 なら何より重要なのは要所を守る者の意識を変える事よ』


 現時点では兵糧攻めが目的なわけではないからか。伯爵も少しくらいバレないとか思って企みに乗ってしまったのだろうし。そうしてズブズブと引き返せないところまで行ってしまったわけだ。完全に裏切らせる為の前準備だ。


 いよいよとなったら大量に巻き上げるつもりなのだろう。その時はバレても構わないと開き直ってもっと沢山の荷馬車を寄越すつもりなのかもしれない。



「マキナ。認識阻害お願い。直接乗り込んでみましょう」


「がってんよ♪」


 私達は全員で馬車の近くに降り立った。


 小ぶりな馬車二台とはいえ結構な人数だ。御者が一人ずつと箱馬車の中に二人、荷馬車の中にも一人。周囲を歩く護衛が三人と二人で計五人。全部で十人だ。


 護衛は冒険者風の装いだが、恐らく貴族の私兵だろう。冒険者にしては装備が整っているし、何より行儀が良すぎる。あんな綺麗に歩いていたらよく鍛えられた軍人だと言っているようなものだ。


 もしかしたら想定より敵の貴族は高位の者かもしれない。私兵にこれだけの教育を施せるなら相応の財力を有しているはずだ。


 ただそうすると、逆に何故こんな所にまで乗り込んできたのだろうかという疑問が増すことになる。信頼する部下くらいいる筈だ。この程度の仕事が任せられないとは思えない。



 本当に箱馬車の中は貴族なのだろうか?

貴族の護衛にしては五人は少なすぎる気もしてきた。


 ダメだ。もう何考えてもツッコミ所しかない気がしてきたわ。私の知識が足りないせいだろうか。トニアなら現状を正確に読み取っているのだろうか。



「これはジスカール伯爵家のものね」


 流石トニア。なんかもう家名まで見抜いたらしい。流石に詳しすぎない? どんだけ事前に調べてたの?



「ほら。ここ。この紋章」


 堂々と箱馬車を偽装する為の布地を捲って紋章を露わにするトニア。認識阻害があるとはいえ大胆な事をするものだ。



「ダメよ。トニア。

 流石にそれは気付かれてしまうわ」


「あ、そうなのね。ごめんなさい。気をつけるわ」


 私達に気付けなくとも布地が浮いているからね。どれだけマキナの認識阻害が高度であろうとも、違和感を持たれれば気付かれる可能性も出てくるのだろう。



「今のジスカール伯爵家についてはあまり良い噂を聞かないのよね。先代はそうでもなかったみたいだけど」


 護衛が優秀そうなのは先代の名残かな?

こんなわけわか任務に同行させられて可愛そうに。



「中に乗っているのはどんな人?」


 トニアがマキナに問いかける。すーぱーすぱいのトニアにも密閉空間を覗くスキルは無いようだ。ご丁寧に窓まで塞がれているから無理もない。けれど当然マキナにとっては無意味な障害だ。



「若い男性が一人と獣人の少女が一人。少女の方は従者よ。けど男性が伸ばした手をはたき落としたわ。仲が悪いわけではなさそうだけど、単なる主従とも少し違うみたい」


 なんでそんな詳しく説明したの?

そしてなんで私にウインクするの?



「ならその人が現伯爵の長男ね。

 名前はなんだったかしら……。

 ごめんなさい。調査不足だったわ」


 いや、もう十分だから。



「名前はローランよ。少女がそう呼んでいるわ」


 今のニヤケ面の意味は流石にわかるわ。

なんでそこで被るの? いや、ありふれた名前かもだけど。



「ちなみに少女の方はクロエよ。

 良かったわね。こっちは被ってないわよ」


 何が良かったの? 誰と被ってないの?



「うそ!? 気付かれた!?」


 マキナがそう言った直後、箱馬車から犬耳少女が飛び出し、警戒モードで周囲を見回した。



「何者でやがりますか! コソコソしてるのは!」


 犬耳少女はクンクンと鼻を動かしながら、尚も警戒心バリバリの視線で油断無く辺りを見回していく。



「おかしいのです。確かに匂いはするのです。

 ボサッとするなです! 辺りを探すのです!」


 少女の命令に従って護衛達が獲物で周囲の草木をかき分けるように探っていく。



「上ですか!?」


 キッと上空を睨みつける少女。

バッチリ視線が合ってしまった。



「……そんな筈が無いのです」


 どうやら気付けなかったようだ。咄嗟に上空へと逃げた私達を的確に追ってきたが、それでもマキナの全力の隠蔽は破れなかったらしい。



「さっさと戻るのです! 早くこの場を離れるのです!

 何してるです! グズグズするなです!」


 護衛達は若干戸惑いながらも、素直に少女の言葉に従って再び配置についた。


 先程より速度を上げた馬車が走り抜けていく。


 ここは草木も多く、隠れられる場所が沢山ある。この状況で襲撃を受けるのはマズいと判断したのだろう。護衛たちは指示の意味に気付いていないっぽい。そもそも少女の言葉を信じて従ったというより、上司の言葉だから無条件で従っただけのようだ。内心少女をバカにしている者が大半かもしれない。獣人は元々侮られる事も多いし。それでも一言の不満も無く指示に従える護衛たちはやはり優秀なのだろう。一般的な範疇でなら。



「ごめんなさい。甘く見すぎたわ」


「いいや。今のはマキナのせいじゃない。あの娘がおかしいんだ。普通はあの程度じゃ気付けないよ」


「そうね。ニクスの言う通りよ。

 何せマキナの隠蔽は私にすら通じるものだもの」


「そう聞くとかえって信頼が損なわれますね」


「ノアちゃん空気読んで」


「冗談です。少し場を和ませようとしただけです」


「それでお母様はどうするの?」


「どうとは?」


「あの犬族の少女は優秀そうですね。

 引き抜くのですか?」


「ねえ? ノアちゃんまでどうしてそういう事言うの?」


「こうなったら一日で何人増やせるか確かめてみません?

 どうせ外出を許されるのはこれで最後になるでしょうし」


「え? もしかしてまた軟禁されるってこと?」


「当然でしょう。ちょっと外出を許したらあっという間に四人も五人も増やすんですから。また暫くは家で大人しくしていてもらいますよ」


「そんなぁ……」


「だから今日は思う存分暴れてみてください。

 なんだか少し楽しくなってきました」


「ねえ?

 やっぱりノアちゃん、ハルちゃん化してるわよね?」


「してるね」

「してません」


「ほら絶対してるって」


「私の意見は無視ですか?」


「当然でしょ。本人の言葉を聞くわけ無いでしょ」


「今すぐ軟禁状態にしてほしいと?」


「ごめんなさい。私の勘違いでした」


「わかれば良いのです」


『そんないや?』

『ハルといっしょ』


「いえ! 違います! ハル! そういう意味ではありません! これは言葉の綾と言うか! 私はただ自分の意思で話していると言いたいだけで!」


『そっか』


「本当ですよ! 信じてください! ハル!」


「これハルじゃなくてアルカの影響じゃない?」


『そうね。今の言い訳の勢いはまさにアルカだったわ。

 開き直り方もどちらかと言うとアルカよね』


「それは普通に嫌です!」


「なんでよ!?」

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