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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
40.白猫少女と帝国動乱・前編

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40-34.難しい選択

 案の定、伯爵が手を組もうとしていたのはギヨルド王国の手の者だった。そしてもちろん最初から全て素直に吐いたわけじゃない。伯爵は最後まで悪足掻きを続けた。


 まあそれも当然か。全て理解した上で事実上の敵国に身売りしようとしていたのだ。事が成る前にバレた以上、我が身の破滅は免れなかったのだから。




 マティの嫁ぎ先はとある大商家の御曹司だった。表向きはそういう事になっているが、実際にはギヨルド王国の貴族の一人だった。


 その彼は身分を隠して伯爵に近づき、とある取引を持ちかけた。帝国から任されているこの地の作物の一部を定期的に横流ししてほしいと。ざっくり言えばそういう話だ。


 報酬に目がくらんだ伯爵は、悩んだ末にその悪魔の囁きに乗ってしまった。既に何年もそのような関係を続けていたようだ。


 今回マティの嫁ぎ話が出たのは伯爵が商人の正体を知ったことがキッカケだった。商人がギヨルド王国の関係者だと知った伯爵は、流石に関係の継続はマズいと判断し、取引の停止を持ちかけた。


 当然向こうがそれを許すはずもない。これまでの横流しをバラすぞと脅し、一度は裏切ろうとしたのだから今後信頼し続けるには人質が必要だと告げてきた。


 マティを要求してきたのはそんな理由だったようだ。

少なくとも伯爵はそう白状した。



 当然この話ですら真実とは限らない。度重なるその場しのぎの言葉の末に、ようやく絞り出してきた内容だ。少しでも罪を軽くしようとしているのは間違いない。もっと下劣な理由も隠されているのかもしれない。


 けれどそれを今ここで暴く必要はない。どの道伯爵は引っ捕らえるしか無い。今彼が語った理由だけでも首が飛ぶには十分過ぎる内容だ。この先彼に待ち受ける尋問が多少手荒なものになったとしても無理からぬ事なのだから。



「父さん……なしてこったら事を……」


「マティ。少し下がっていてください」


「コレット……その……」


「すみません。恐らくマティの希望には添えないでしょう」


「……うん」


 残念ながら穏便には済ませられない。


 マティもそれはわかっているのだろう。

辛そうにしながらも、言われた通り退室していった。



「さて伯爵。

 此度の件、いくら恩があろうと見逃す事はできません。

 あなたには城に同行して頂きます」


「子供達は何卒……」


「約束は出来かねます」


 コレットちゃんは冷静だ。今後この伯爵家がどうなるかは保証できない。お家取り潰しは確実だろう。どころか全員処刑されたっておかしくはない。


 今は特にタイミングが悪い。私達も慎重に選ばねばならない。残念ながら諸侯の裏切りを見逃すのと、配下の裏切りを見逃すのでは意味合いが全く異なる。


 前者では余裕と寛大な心を見せつける事が出来るとしても、後者ではただの甘さだ。少なくとも周囲の者達はそう捉えるだろう。罰すべきを罰さねば、純粋に皇帝を支持する数少ない味方達をも敵に回すかもしれない。だから伯爵の厳罰は免れない。極刑の可能性は高いだろう。


 それが家族にどこまで累を及ぼすかは難しいところだ。やりすぎれば悪逆非道の皇帝として、敵にも今回の件を利用されるかもしれない。


 かと言って、あからさまな温情をかければ、今度は皇帝が依怙贔屓をしていると吹聴されかねない。ここでコレットちゃんがお世話になっていた事は既に知られている可能性もある。その件と合わせて特定の貴族だけ優遇していると誇張され、他の味方の切り取り工作に利用されるかもしれない。




 少なくとも入れ替えは必要だ。信頼できる者を置き直さねばならない。けれど人手は全く足りていない。しかもここはドがつく田舎村だ。新たにこの地に送られた者は左遷と認識するかもしれない。次の反意を育てては意味がない。


 その辺りの事はフロルやカノンに任せよう。皆が忙しいのは重々承知しているが、私達が考えたって意味はない。




『好都合だ。首輪を付けて捨て置こう。

 これからそこらは忙しくなるからな。

 存分にこき使ってやろう』


 フロルからは予想もしていなかった答えが返ってきた。



『本当に良いの?』


『幸い我々以外に気付いた者などおらんだろう。当然ギヨルドの回し者の捕縛にも協力させるぞ。細かな差配はコレットに任せる。アルカも手を貸してやってくれ』


『ありがとうございます。姉様。

 その任、謹んで拝命致します』


『うむ。期待しておるぞ』


『はい』


 どうやら想像以上にこの伯爵は買われていたらしい。都合が良い人材ではあるのだろうけど、まさか無罪放免になるとは思わなかった。いや、何かしらの形で罪は償わせるのだろうけど。命が助かるだけでも驚きだ。



『小物だからこそでしょ。立地的にも他者を扇動するわけでもなし。次また裏切ったとしても、その頃には皇帝の地位も今よりずっと盤石なものになっているわ。その時は容赦なく切り捨てられるもの』


 わからなくも無いけどさ。


 でもきっとまた裏切るよ?

また許される筈だと勘違いするよ?



『そこはコレットの腕の見せどころよ』


 丸投げされたわけか。

まあ向こうは忙しいからね。

コレットちゃんも忙しいけど。



「……伯爵。一つ仕事を命じます」


 コレットちゃんは暫く沈黙を続けた後、ゆっくりと、重々しい感じを出すように言葉を紡ぎ始めた。



「なんなりとお申し付け下さいませ」


 コレットちゃんの慈悲の気配を感じ取った伯爵は今更の殊勝な態度で応えた。



「ギヨルドの貴族とやらをこの地に誘い出しなさい。

 首尾良く事が済めば隠居を認めましょう。

 長男に家督を譲り、あなたはこの家を離れるのです。

 それを沙汰としましょう。最後に忠義を示しなさい」


「……それは」


「異論は認めません。

 不服ならば今この場で首を差し出しなさい。

 当然その時はあなたの首だけでは済まぬと知りなさい」


「……承知致しました。皇女殿下の御慈悲に感謝致します」


 ダメよ。こいつ。

やっぱりまだコレットちゃんの事を舐めてる。



『落ち着きなさい。コレットを信じて任せなさい。

 この娘はきっと上手くやってみせるわ』


 イロハ、やけにコレットちゃんの肩を持つのね。


『イロハお母様はお優しいですもの♪』


 違うのよ。マキナ。イロハは優しくて厳しいの。

こんな風に真正面から誰かを認めるのは珍しい事なの。


『失礼ね。別に珍しくなんかないわよ』


『よくわからないわ』


『おかしいのはアルカの方よ。例え相手がアルカの嫌いなタイプだからって見方が偏るのはよくないわ。暫く様子を見続けなければならないんですもの。疑いすぎてコレットの邪魔をすれば本末転倒よ。フラットな視点を保ちなさい』


 難しい事を言う。イロハはやっぱり厳しい。


『はいはい。私達も協力してあげるから』


 じゃあヤチヨは見張りね。


『なんでですか!?』


 約束したじゃない。事態が落ち着くまでって。


『ダンジョンの話でしょう!?

 それはもう済んだじゃないですか!?

 私だって嫌ですよ! こんな奴見てるの!』


『落ち着きなさい。二人とも。

 別に付きっきりの見張りなんて必要ないわよ。

 なんなら長男にでもやらせておけばいいでしょ。

 ついでに皇家への忠誠心を確認しておきましょう』


 ナイスアイディアね♪

コレットちゃんに提案してみましょう♪


『後になさい。コレットが思いつかなければ提案するの。

 先ずは見守りなさい。まだこの子に助言は必要ないわ』


 それもそうね。今もテキパキと今後の事を詰めてるし。伯爵もなんだかんだと切り替えたようだ。まるで自分は世界一の忠義者ですとでも言わんばかりだ。調子の良いこって。


『フラットよ。忘れないで』


 は~い。

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